叡智の三猿

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良いものを作れば売れるのではなく、売れるものが良いものである

バブルの崩壊を実感したのは、1992年の夏です。勤務していた会社は、それまで大量採用を行い、わたしもバブル入社組のひとりですが、一気にリストラの嵐がきました。

わたしは子会社への転籍辞令を受けました。

バブル時代、都内グルメの中心だった「イタ飯」は下火になりました。代わって、もつ鍋やしゃぶしゃぶ食べ放題のようなコスパのよい鍋料理が流行りました。

それでも、崩壊当初は、エスティマに乗ってオートキャンプに行くような、ポストバブルという新たな価値観を楽しむ雰囲気がありました。

1995年になると、勤務先の賞与が現物支給(自社商品を支給することで、賞与の代わりとする)になりました。

「これって、ヤバくない!?」と、生活の不安が増しました。

1997年に拓銀や山一證券が経営破綻すると、日本中が不況を実感しました。

消費者は、バブル崩壊を通じて、高付加価値を求めることから、コスパを求める方向に変わりました。

バブル期、メーカーは「良いものを作れば売れる。」と考えていました。しかし、バブル崩壊後は「売れるものが良いものである。」と、発想が逆転しました。

アパレルを例に、ものづくりの変化を書きます。

アパレルのサプライチェーンは下記のような流れです。ここで「どんな商品をいくつ作るか」を決めていたのは、主に川中に位置するアパレル商品メーカーです。

アパレルのサプライチェーン

アパレルメーカーは、シーズンが開始される半年くらい前から企画を行います。見込み販売(在庫を作り置きする生産)を前提としたロット生産方式を組みます。春シーズンを3月からの12週とすると、10週から12週分の在庫をためる生産をします。

アパレル商品は流行に左右されます。古い服の販売は難しく、シーズン終盤は在庫をさばくバーゲン販売をします。正規の販売をプロパー販売と呼んで、バーゲンと区別するのですが、バーゲンを前提として多めに生産してます。

見込みによる大量生産、バーゲンによる値引きは、洋服にブランド価値があり、高い価格で売れるのなら、悪い戦略ではありません。しかし、バブル崩壊後のデフレは、不良在庫の増加を招きました。

下図はメーカーの生産形態の違いにより、どこに在庫を持つかを示してます。アパレルのような、完成品をつくり卸や店舗などの得意先に出荷する見込生産(MTS)は、計画ありきの在庫管理が求められます。見込生産は計画を見誤ると、過剰在庫を生むリスクが大きくなります。

生産形態と在庫ポイント

在庫が増えると、倉庫の賃貸料や商品を管理するための人件費が無駄にかかります。

金銭的な負担に加えて、温室効果ガスの影響も無視できません(下記)。

  • 国内のファッション産業において排出されているCO2排出量(原材料調達から廃棄まで)は9.7百万トン(日本の総排出量の0.8%)と推計
  • うち輸送までの上流段階で全体の47.0%を占めるほか、利用段階で32.9%、廃棄段階で12.1%を占める

(環境省 令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務より)

商品を作っても売れないなか、アパレル業界は、無駄な生産を抑えるべく、如何にして売れるものを作るかと思案しました。

そこであみ出されたのが、「店頭起点」とか「実需主導」と呼ばれるビジネスモデルです。

どんな服を作れば売れるかをよく知っているのは、川中にあるアパレル商品メーカーではありません。消費者と実際に商品の受け渡しをする小売りです。小売りは店内を探し回るお客様を常に見ているし、お客様の声も多く聞く立場です。お客様から遠い、アパレルメーカーのMD(マーチャンダイザー)が、予測する需要よりも、小売りが予測する需要こそ信頼できる「実需」だと考えました。

そこで小売を起点としたサプライチェーンの見直しを図る動きが加速しました。

この見直しによる新たなビジネスモデルは、SPA(製造小売業)と呼ばれます。

SPAは、アメリカの衣料大手のGAP社の提唱に由来しますが、日本ではユニクロでその完成をみたと捉えられています。

いまでこそ、ユニクロというと「値ごろ感があり、おしゃれ」というイメージがありますが、かってのユニクロは、違います。

わたしが、はじめてユニクロの服を見たのは1995年です。都内近郊のロードサイドにある大型店でした。そこで品揃えを見た印象は、古きアメリカのカジュアル用品店といった感じです。値ごろ感はあるものの、正直、あまり買いたいと思う服はありませんでした。実際、ユニクロの商品を買っても、表向きは、ユニクロを着ていることを隠したいと思ってました。

1990年代当時は、ユニクロより、ワールドが展開する「オゾック(OZOC)」の方が、SPAのイメージにあっていたと思います。ワールドといえば「タケオキクチ」に代表される、質はいいが、価格も高いイメージですが、OZOC は、もっと若者向けです。価格は安く、流行を取り入れた、まさに SPA を走ってた感じがします。

バブル崩壊後の消費者は、高付加価値よりコスパを求めていると書きましたが、バブルが崩壊して30年が経過したいまも、意識は変わっていないと思います。

バブルの頃、無駄なお金をバンバン使ったことをもったいないと思いつつ、頭の片隅は、バブルの再来を願ってます。