シャトレーゼは港北ニュータウンに2店舗あります。
どちらの店舗も活気に溢れてます。売れないお店が多いなか、シャトレーゼは消費の冷え込みを感じません。
妻はシャトレーゼの特にアイスクリームにハマってます。
はじめ、行きたいと思ったのは、テレビでシャトレーゼホテルの特集やってて、そこで食べ放題のアイスが紹介されていたのよね。
で、それを見て「美味しそう~」と、思って、商品を調べたら、めちゃくちゃ安かったんだよね。スーパーで売っているものより安いよね。
「これは行くしかない」と、思って買ったら、本当に美味しかった!
抹茶のアイスは濃厚だし、きなこのアイスも、きなこがふんだんで、本格的な感じがするよ。しかも、甘すぎないところもいいよね。
シャトレーゼの成功を語るうえで、欠かせないのが、「製造小売業(SPA)」というサプライチェーンの形態です。
シャトレーゼホールディングス創業者で2024年の8月に90歳でお亡くなりになった、齊藤寛さんは、雑誌のインタビューで次のようにコメントしてます。
当社では新鮮な素材を使用して、安全・安心なお菓子づくりに取り組んでいます。必要な素材を契約農家から直接仕入れ、自社工場で製造した商品を店舗に直送する。この製造・物流・販売を自社で一貫して行うファームファクトリーという独自の流通システムを武器に、400種類以上の商品を手掛けています。
~「致知(2023年5月号)」より
製造小売業(SPA)はアパレル業界でよく使うビジネスモデルです。ただ、アパレルに限らず、食料品、日用品のような「非耐久消費財(下記参照)」のサプライチェーンを考えるうえで非常に重要なモデルです。
- 消費財:個人や家庭で使うために購入するすべての製品やサービスの総称。
- 耐久消費財:長い間使用し続けることが可能な消費財(家電、自動車、家具など)。
- 非耐久消費財:購入しても一度のみ、もしくは短期間の使用しかできない消費財(衣料品、食品、トイレタリーなど)。
非耐久消費財の製造形態は見込生産(MTS)が殆どです。もちろん、シャトレーゼも見込生産です。
見込生産を実現するうえで、重要な業務が「生産計画」です。見込生産に於ける生産計画は、いまの受注実績から、先々の需要を予測し、そこに需要のブレを考慮した在庫を加味して計画立案します。
製造小売業でない、いわゆる一般的な消費財メーカーは、卸(問屋さん)からの注文情報をベースとして、先々の需要を予測します。
しかし、そこには難題があります。
卸からの「注文」は事実として、存在するものの、それが「何によって発生した事実なのか!?」をメーカーが把握できないことです。
製造業にとって、本当に重要な「注文」は、最終消費者が「欲しい」と思う商品です。
しかし、卸からの注文は必ずしもそうではありません。卸が自分の会社ために在庫を確保しておきたいと考えているかもしれません。あるいは、どこかの小売店が販促を展開するため、一時的に特定の商品を「注文」しているだけかもしれません。
要は一般的な製造業は、卸から消費者に至る「モノと情報の流れ」を見ることが出来ないのです。
消費者の「欲しい」に基づかない「注文」は、先々の需要を予測するうえでのリスクです。実際、見込みでモノを作り過ぎ、結局、売れなかった商品の在庫を抱えすぎる羽目になり、経営が悪化する会社は数えきれないほどあります。
一方、製造小売業は最終消費者が「欲しい」と思う商品の販売実績の情報が得られます。さらに、商品がサプライチェーンのどこにあるかをデータで把握できます(下図)。これが、生産計画の精度を高める役割を果たします。
モノが売れない時代が続く中、製造小売業は勝つために選択するビジネスモデルです。
ただ、落とし穴もあります。
マーケティング学から見ると「製造小売業」は、マス・マーケティングに属するビジネスモデルです。すなわち、対象とする顧客のセグメント化を行わず、すべての顧客を対象とした画一的なマーケティングです。
しかし、いまは顧客嗜好の細分化が進んでます。大量生産・大量消費を前提としたマス・マーケティングよりも、セグメントされた顧客を対象とする方向(ターゲット・マーケティング)に移ってます。
成功した「製造小売業」が転落に向かうのは、トレンドを見誤るリスクだと思います。
アパレルの例でいうなら、GAPです。
GAPはシンプルでベーシックなスタイルを主力商品として成功を収めました。1990年代に終わりには、成功した「製造小売業」の代名詞でした。
しかし、トレンドの移り変わりへの対応をGAPは見誤りました。消費者はGAPの無難で個性を感じない服よりも H&MやZARAやUNIQLOのデザイン を求めました。かってのGAPは「流行を捉えた」ベーシックな衣料品でしたが、その面影をいまのGAPに感じることはできません。
シャトレーゼのようなお菓子は、必ずしもアパレルほど、トレンドを追うものではありません。
ただ、マス・マーケティングの抱える問題点を共有している状況に変わりはありません。