叡智の三猿

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泳ぎ始めた方がいい、時代は変わりつつある


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Come gather ‘round people wherever you roam
And admit that the waters around you have grown
And accept it that soon you’ll be drenched to the bone
If your time to you is worth saving
Then you better start swimmin’ or you’ll sink like a stone
For the times they are a-changin’

放浪する人たちよ、ここに集まろう
水かさが増しているのが分かるだろう
骨まで水に浸ること受け入れなければならない
君が自分の時間を救う価値があると思うなら
泳ぎ始めた方がいい、さもなければ石のように沈んでしまう
時代は変わりつつある
~The Times They Are A-Changin'(時代は変わる)/Bob Dylan

いまさら、ボブ・ディランがロック界のカリスマであり、世界的な知名度を持つミュージシャンであることの説明は不要だと思います。

しかし、ボブ・ディランの名前は知っていても、ディランの曲をそのまま受け入れている人は意外と少数派です。ディランの歌声はとても個性的で、初心者には耳障りがよく響かないからです。そのため、ディランのヒット曲は他のミュージシャンによるカバー曲であることが多々あります。「風に吹かれて」は、ピーター・ポール&マリー、「ミスター・タンブリマン」は、ザ・バーズ、「アイ・シャル・ビー・リリースト」は、ザ・バンド、
「見張塔からずっと」は、ジミ・ヘンドリックスという具合です。

ただ「時代は変わる」は例外です。この曲もサイモン&ガーファンクルなど、多数のミュージシャンがカバーしていますが、この曲に関しては、ディランの乾いた粗削りな声質がベストマッチしてます。ディランの歌声を社会が受け入れるようになったこと自体が「時代は変わる」です。

「時代は変わる」は、プロテスト・ソングという戦争や差別などの社会問題に対するメッセージの代表曲として知られます。この曲は若者だったディランが同世代の若者に変革を呼びかけ、「いま知られる古い方法は、急速に老朽化していき、新しいものにとって変わる」と訴えています。

もう60年前の曲ですが、この曲のメッセージ性はとても普遍的で、時代は変わってもこの曲の価値は永遠です。

考えてみればIT業界は常に「新しい考え方と、古い考え方」のギャップや対立にもがき、時代の経過によって解消していく方法で進化してきました。

わたしは仕事でインターネットや電子メールを使い始めたのは1993年と比較的古く、1995年からに当時勤めていた会社の「全社員にメールアドレスを付与して仕事で活用していきましょう」というプロジェクトの推進役になりました。全国に2万人の社員を抱える会社でしたので、30台のメールサーバーを各事業拠点に配置し、MTA(Mail Transfer Agent)によるメール転送を行いました。膨大な数にのぼるクライアントPCに、Microsoft Mail Client( Microsoft Mail 3.5の付属メーラー)を導入しました。1996年にMicrosoft Exchange Serverがリリースされたので、導入していく過程で環境の移行を行いました。

仕事の連絡は内線電話が常識だった時代にメールを推進するのは想像以上に大変でした。

若い社員はかなりメールの定着が早く、仕事以外の連絡(飲み会とか)を含めて、メールでやり取りすることに抵抗はありませんでした。しかし、40代以上の社員は、パソコン操作自体に慣れるのも難しく「マウスをクリックしてください」と言っても、「なぜ、これをネズミ(マウス)と呼ぶんだ?」と聞かれそれに回答し、クリックの意味を説明したりと大変でした。

それでも、メールを使おうとする意欲のある社員は救いでした。

問題は一部の老いた経営層で、彼らはパソコンやメールは会社が社員に与えたおもちゃであり、こんなものを仕事で使うこと自体に意味がないと思っていました。

メールを使うと、上司が管理できない内容が外に飛ぶから問題だ。

という、メールを利用するリスクに頭がしばられていました。「どうしてもメールを使うなら、内容を上司や責任を持った立場の人が、内容のチェックを行い、発信していいかを確認する仕組みを作るべきだ」と、要はメールを使うなというメッセージを発信してました。

何かをするときにリスクを考えることは重要ですが、リスクをゼロにしようとすると、機会を奪うことになります。仕事でメールを使わなければ、他の仕事をしているときに、突然、内線電話が鳴り、別なことを聞かれます。電話している間は、その人の仕事は中断します。一度、別な内容に意識が向けられた脳を元に戻すのは、意外と大変です。また、電話でやり取りしたメッセージは記録に残らないので、後からさかのぼってやり取りを確認するには、話をしているときに記録したメモを見返すしか術がありません。いわゆるホワイトカラー(オフィスで机に向かって頭脳労働をする仕事)にとって、仕事でメールを使うのと使わないのでは、生産性が変わります。

時代は変わります。いまの課題は時がたてば解決するかもしれません。ただ、課題を放置すると、いまやるべきことが出来ていなかった代償が必ずきます。課題を早期に解決しようとする組織と、そうでない組織は、変化の激しいビジネスの対応力が違います。