叡智の三猿

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その答えは、友よ、風に吹かれている


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How many roads must a man walk down
Before you call him a man?
How many seas must a white dove sail
Before she sleeps in the sand?
Yes, an' how many times must the cannon balls fly
Before they're forever banned?
The answer, my friend, is blowin' in the wind
The answer is blowin' in the wind

人はいくつの道を歩かなければならないのか
あなたが彼を人と呼ぶ前に?
白い鳩はいくつの海を航海しなければならないのか
彼女が砂で寝る前に?
砲弾は何回飛ばなければならないのか
それらが永遠に禁止される前に?
その答えは、友よ、風に吹かれている
答えは風に吹かれてる
~Blowin' In the Wind(風に吹かれて)/Bob Dylan

「風に吹かれて」の原曲はボブ・ディランですが、この曲はPPM(ピーター・ポール&マリー)によって世界的な名曲になりました。そして、今日までたくさんのアーティストによってカバーされ歌い続けられています。

「風に吹かれて」が持つメロディや歌詞の持つ普遍的なテーマは、ポピュラーソングの枠を超え、反戦の象徴として社会的な価値を放ちます。この歌に思い入れを持つ著名人も多く、文芸作品にも度々登場します。わたし的には「アヒルと鴨のコインロッカー(伊坂幸太郎・著)」で、主人公が新居で段ボールを片付けながらボブ・ディランの「風に吹かれて」を口ずさむ描写に心を奪われました。

今後、この歌が聴かれなくなる時代がくるとすれば、世界中から戦争が風化し無くなるころでしょう。しかし、そんな時代が来るとは到底思えません。この歌を聞いて癒されるということは、それだけ人が愚かな戦いを繰り返していることの証です。

この歌詞を読んだとき、確かに詩の文学的な香りの良さを感じましたが、歌詞の最後を締めくくる「The answer is blowin' in the wind(答えは風に吹かれてる)」のフレーズに、反戦歌としての中途半端さを感じました。

「戦争が無くなる日はやってくるのか」という命題に対して、真か偽かの答えを出すことなく「風に吹かれてる」という曖昧な表現で終わらせています。詩から現実を憂いている状況は読み取れますが、反戦歌としての強いメッセージを読み取ることはできません。

ロシアによるウクライナ侵攻に対して、役割を果たすことができない国連安保理、日本を含む西側諸国によるロシアへの経済制裁、ウクライナへの武器供与の報道を見ると、戦争の足音を徐々に感じます。戦後民主主義の時代を生きていると思っているわたしたちは、後々、振り返ってみると、いまの時代は、実は戦後でなく、戦前だったと位置付けられるかもしれません。

「アノニマス」と名乗る国際的なハッカー集団は、ロシアの政府や組織を攻撃のターゲットとして、DDos攻撃などのサイバーテロによりロシアで管理している個人情報を流出させているとニュースは伝えます。サイバーテロは犯罪行為ですが、世間はアノニマスの行っていることを称賛しても、非難することはあまりありません。

わたしはサイバーテロというのは絶対的な悪だと思っていたのですが、その認識自体が誤っているのかもしれません。そもそも戦争(サイバーテロを含む)に絶対的な悪と善はないのでしょう。

ボブ・ディランの「One Too Many Mornings(いつもの朝に)」の歌詞にこんなフレーズがあります。

You’re right from your side,
(あなたの立場にたてば、あなたはいつも正しい)
I’m right from mine
(わたしの立場にたてば、わたしはいつも正しい)

結局のところ戦っているのは、善と悪でなく、ひとつの善ともうひとつの善ということです。

だから、「戦争が無くなる日はやってくるのか」という命題に対して、「風に吹かれてる」と答えるのがいちばん腹に落ちます。

久しぶりに俳句をひねってみました。

過ちもつれなしなぞや広島忌 (スロトレ)