叡智の三猿

〜森羅万象を「情報セキュリティ」で語る

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当たらないヒット予測

日経トレンディは毎年、年末号に来年のヒット予測をします。

普段、この雑誌を購入することはあまり無いのですが、ヒット予測は興味深いので買うようにしてます。

今年(2025年)のベスト10はこのようになってます。

  1. 肩掛けプライベートAI
  2. サブスクスーパーバンドリング
  3. ライトアニメ
  4. おべんとPON
  5. ファスティングバー
  6. クレカでタッチ乗車
  7. ポーカー
  8. ドラゴンクエストIII
  9. 電動モベッド&格安バイク
  10. Jiffcy

名前を見ただけでイメージがつくものもあれば、そうでないものもあると思います。

ここに書かれている商品が本当にヒットしたら、今年の終わりには、誰もがイメージできる名前として定着しているのでしょう。

わたし達、消費者にとって、気になるのは、この予測があたるか!?ということかと思います。

それについては、殆ど「あたらない」と、考えてます。

中国発の格安生成AI「DeepSeek」は、話題沸騰してますが、ランキング10にも、30にも登場してません。

時をさらに1年前にさかのぼり、2024年のヒット予測を列挙します。

  1. ドローンショー&空中QR
  2. 未来のレモンサワー
  3. 新Vポイント
  4. 「駅ナカ」コストコ
  5. ARグラスワーカー
  6. Privacy Talk
  7. 痛いコスメ
  8. パワードシニア
  9. 機能性ランドセル
  10. A2ミルク

いま、この予測を見て「あ~確かに去年ヒットしたよな~」と、合点がいくものは、ほぼ無い気がします。

1位のドローンショーは、当然、いまも注目はされていると思います。

でも、ドローンショーが従来の「花火大会」にとって代わりうる存在になるかというと、そうではないと思います。花火大会は、見た目だけではなく、ズド~ン!と、空間全体に広がる音と相まって、楽しめるイベントです。ドローンショーは、いちどは見る価値はありますが、いちど見れば十分で、各地を訪れてみるほどの魅力は感じません。

Vポイントに関しては、Tポイントと統合することで、ポイント市場への刺激になることは、誰もが予測できる範囲だと思います。

妻は一時期、韓国発の「痛いコスメ」に関心を持ち、リードルショット(いちばん刺激がすくないタイプ)を購入し、実際に使いました。でも、リピートには至りませんでした。

A2ミルクは、ヒットと離れた状況だと思います。そもそも普通の牛乳の価格が高騰して、消費者は悲鳴をあげてます。そこに2倍くらい高いA2を購入するモチベーションがありません。スーパーもそこは承知しているのでしょう。そもそもA2は店頭にありません。ベータカゼイン(牛乳に含まれるタンパク質)に、こだわりがある人がネットで購入する程度だと思います。

結局、ヒットするしないは、商品やサービスのインパクトもあるのですが、いちばんのポイントは、消費者が継続的にその商品を購入したり、サービスを利用するかにかかってます。

その観点で見ると、日経のヒット予測は、インパクトに視点を置きすぎているのです。それは、会社が生み出した最新の技術や、商品開発の斬新なアイデアをベースにした、商品やサービスです。そういった商品は、独自性が高く、新たな需要を創出できる可能性があります。

たとえば、今年の7位にランクインしている「ポーカー」は、昔からあるトランプカードゲームです。

わたしは、ポーカーと聞くと、1973年のアメリカ映画「スティング」を連想します。ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが共演したヒット作です。ふたりの共演作では、わたしは「明日に向かって撃て」の方が好きですが、「スティング」もコメディのセンスがいい良質の映画です。映画音楽も素敵です。

この映画のハイライトは、詐欺師(ポール・ニューマン)が、ポーカーゲームで、ギャング(ロバート・ショウ、「007ロシアより愛をこめて」の悪役で知られる)を打ち負かす場面です。

ギャングの手元には9のフォーカード。ポール・ニューマンの手には3のフォーカード。フォーカード自体が極めて高い役です。当然、どちらもコールする状況です。ただ、これはギャング側が仕掛けた罠です。自信に満ちたギャングの前に、ポールニューマンが差し出したカードはーー

「ジャックのフォーカード」

だったのです。

憮然とするギャング。

ギャングのイカサマに対するポールニューマンのイカサマ返しが痛快な名シーンです。

では、今年のヒット予測に挙げられている、ポーカーは、むかしながらのポーカーのリバイバルブームを指しているのかというとそうではありません。

トレンド入りしたポーカーは、オンラインゲームの「ポーカーチェイス」から派生してます。デジタル空間で行われるゲームから、ポーカースポットをオープンさせ、オフラインでのコミニュケーションへとつなぐ企業側の戦略です。

デジタルをトリガーとして、アナログへと導く、新たなパラダイムを提唱したサービスです。当然、昭和世代に根付く、イカサマとかギャンブルとは無縁の健全なポーカーです。

すなわち、一見、リバイバルに見える商品やサービスも、あの頃と同じではありません。

何らかの進化、革新性があるので、ヒット予測に選ばれるんだと思います。

ただ、最終的には消費者がその商品やサービスをリピートして求めるかに関わります。

そんな消費者のマインドを企業もマスメディアも読み解くことは出来ないのです。

だからトレンド予測は外れるのが普通です。

できれば、日経トレンディも、予測を総括する記事があったらいいのにと思います。

毎年、予測は予測、実績は実績と別軸で、特集しています。プロの目から見た予測に対する実績を振り返る方が記事に深みが出ると思うのです。