商売が最も成功するのは、シーズとニーズをバランスよく取り入れることと言われます。シーズ志向で生み出したアイデアや技術を顧客ニーズ志向にあてはめるための調査を行い、商品やサービスをカスタマイズさせることです。
そのバランスが顧客に価値ある商品を提供することにつながるという考え方です。
- シーズ志向:自社が持つ技術や資源、アイデアを基に、新しい商品やサービスを開発するアプローチ。
- ニーズ志向:顧客の要求や市場の需要を基に、新しい商品やサービスを開発するアプローチ。
わたしのなかで、両者のバランスをうまく取り入れたサービスとして思いつくのは、日ごろ、利用しているchocoZAPです。
chocoZAPは月額2980円の圧倒的な安さで会員を伸ばしてます。RIZAPグループの決算資料(2024年11月)では、1年で29.1万人の会員数が増加したことを説明してます。

わたしが注目したのは、会員数が増加していることよりも、退会率が比較的低いことです。月額制というのはサブスクですので、会員を増加させても、退会者が増えると、収益への影響が深刻です。chocoZAPの公表した2024年9月のデータで見ると、0.96%とフィットネス業界としては、かなり優秀な成績だと思います。既存顧客が継続利用している証です。

chocoZAPのアイデアが画期的なのは、価格の安さを実現するために、次の施策をとっていることです。
- 店舗に専属のスタッフがいない
- 利用者の鍵付き個人ロッカーがない
- 靴も服装もそのままでOK
フィットネスクラブとして、通常では考えられないアイデアを取り入れてます。非常に斬新なシーズを手軽さ、安さといった、ニーズに反映させた成功例だと思います。
ヒットを生むには、商品やサービスが優秀というだけでなく、宣伝も重要です。
利用者の多い、SNSを宣伝に使うことはB2Cを展開する企業であれば、どこでもやってます。
宣伝に大きな役割を果たすのが、インフルエンサーです。インフルエンサーはいち消費者ですので、消費者目線での情報発信を行っています。そこが、企業やマスメディアの宣伝よりもリアリティがあり、フォロワーとなる消費者のこころに響く訴求が期待できます。
何人フォロワーがいれば、インフルエンサーなのか?という明確な定義は無いと思います。
一昨年みた、韓国ドラマ「セレブリティ」は、インフルエンサーの華やかさと闇の世界を描いたドロドロ系ドラマです。このドラマでは、フォロワー35万人を持つインフルエンサーがトップインフルエンサーとして、紹介されているので、おそらくそれだけのフォロワー数がいれば、インフルエンサーとして評価されるんだと思います。
SNSといっても、X(Twitter)、Instagram、TikTok・・・といっぱいあります。メディアによってもインフルエンサーと呼ばれる条件は異なるでしょう。Xは拡散しやすい性質です。その分、他人の目に留まりやすく、フォロワーの獲得がしやすいメディアです。ですので、Xでインフルエンサーになる基準は、かなり高いと想定できます。一方、Instagramは拡散の概念がありません。自分の投稿を他人が見てもらうための障壁があります。その分、フォロワーの獲得数が低くても、インフルエンサーと呼ばれるかもしれません。
ヒットを生むため、インフルエンサーをマーケティングに活用したい企業は多くあります。しかし、そこで注意するべきは「ステルスマーケティング」です。企業がインフルエンサーを使って商品を宣伝すること自体は必ずしもステルスマーケティングではありません。でも、インフルエンサーが企業から報酬を受け取っているにもかかわらず、その事実を明示しなかったり、投稿や動画に「広告」や「PR」といった明確な表記をしていないと、ステルスマーケティングとみなされる可能性があります。
事実、昨年の8月に消費者庁は、chocoZAPの広告に対して、ステルスマーケティングと認定してます。運営するライザップ社に「景品表示法違反」で再発防止を求める措置命令を出してます。
個人の感想を装って商品を宣伝するステルスマーケティング(ステマ)をしたなどとして、消費者庁は9日、スポーツジム運営会社「RIZAP(ライザップ)」(東京都新宿区)に対し、景品表示法違反で再発防止を求める措置命令を出したと発表した。命令は8日付。
発表によると、同社は今年1~3月、同社が運営する低価格ジム「チョコザップ」について、インスタグラムによる宣伝を依頼していたインフルエンサー15人の投稿を自社サイトに転載。その際、「広告」や「PR」などの記載をせず、閲覧者に第三者の体験談と誤認させる表示をした。
今年2~6月には、チョコザップが提供する「セルフ脱毛」「セルフエステ」など8種類のサービスについて、「24時間使い放題」など、いつでも自由に利用できると誤認させる表示を自社サイトに載せたり、インフルエンサーにインスタへ投稿させたりした。実際は1日に5~16時間しか利用できない状態だった。
~「読売オンライン 2024/08/09」
インフルエンサーの投稿がステマと認定されると、SNSが荒れやすくなります。信頼を失った投稿に対する「誹謗中傷」が拡散し、そこからフィッシング詐欺につながるような投稿が発生する可能性もあります。