劇場公開から2ヵ月半がたって「君たちはどう生きるか(宮崎駿監督)」を鑑賞しました。
本当は公開後、直ぐに鑑賞したかったのですが、バタバタしているうちに日数が経過しました。
この映画は、久々の宮崎アニメであることはもちろんですが、タイトルとポスターが発表された以外、プロモーションが行われないまま劇場公開を迎えたことが話題になりました。
この映画が公開後、視聴者からの賛同と批判の声が起き、評価が真っ二つに割れたことも話題になりました。
そんなに評価が割れる映画って、どうなんだろう!?興味深いから逆に観て見たいな。
という思いにかられ、わたしはひとりで鑑賞しました。
観た感想はーー
めちゃくちゃ面白い!
とにかく、次から次へと、場面が変わり、間延びすることが一切ない作品でした。
岡田斗司夫が Youtube チャネルで「君たちはどう生きるか」について、「ディズニーランドのエレクトリカルパレードのような作品」と、評価していました。
その感覚がわたしにぴったりきました。
ジブリはなぜ、この映画を宣伝しないで公開したのかは、よく分からないのですが、普通に宣伝すれば、いまの段階でもっともっと大ヒットしてるでしょう。
とはいえ、公開から2ヵ月以上経過した今日の劇場も8割方客席は埋まっています。興行成績は充分いいのですが、宮崎駿の監督作品として考えると、100億の収入は軽く超えるものだと思います。
宮崎駿のアニメというブランド力をはかるうえで、あえて、宣伝しないことで、どれだけの収益が出るのかを実験したかったのでしょうか!?
企業による広告・宣伝について書きます。
以前の記事で書きましたが、マスメディアによる広告・宣伝のピークは、1980年代に勃発した、資生堂とカネボウの化粧品のCM合戦だと思います。
知名度の高い、モデルやアイドルが出演し、CMが起点となって数々のヒット曲を生み出す仕組みは、ニュースやドラマ以上に映像コンテンツとして視聴者に影響を与えていました。
あの頃をピークとして、テレビCMの影響力は低下し、専属の広告モデルが登場するファッション雑誌もむかしのようには売れなくなっています。
広告の影響力が下降するなかで、消費者の購買行動を促すのが口コミです。
消費者の口コミというと、一般的にはネット掲示板やSNSやブログなど、インターネットサービスをイメージしますが、オールドメディアである書籍でも可能です。
爆発的に売れているMEGUMIさんの「キレイはこれでつくれます」は、このような前書きで紹介されてます。
この本では、私がさまざまな美容法を試した中で
本当に良かったアイテム、Howtoをご紹介していきます。
女性は、多様な立場を引き受けながら生きている感情的な生き物。
私同様、日々がんばっている読者のみなさんが、
この本で出逢った美容法をきっかけに
美容が習慣化され、人生が明るく輝くことを心から願っています。
この本を読んでみると、多数の化粧品が写真や価格を交えて紹介されているのが分かります。ただ、MEGUMIさんはあくまで消費者として化粧品を使い、本人の口コミとしてよい化粧品を薦めているスタンスです。
口コミは、消費者の内発的な動機に基づく、自然発生的な情報です。CMやPOP広告のように企業が売りたい商品やサービスを宣伝する行為ではありません。
しかし、実際には企業は、口コミを上手く誘導する販売戦略をとっています。
企業の販売戦略に貢献するのが、インフルエンサーと呼ばれる人たちです。インフルエンサーとは、自身のライフスタイルが世間(フォロワー)に与える影響力が大きい行動をビジネスとして行う人物です。多数のフォロワーを獲得しているインフルエンサーが投稿する口コミは、消費者目線であるものの、そこでプラスの評価を受けた商品やサービスは、売上拡大に貢献します。企業は自社商品やサービスと相性のよい、インフルエンサーを選別し、インフルエンサーを通じて、レビューを投稿してもらい、フォロワーへの認知を高めています。
ただ、インフルエンサーマーケティングは、情報セキュリティ上のリスクがあります。
インフルエンサーは消費者の立場で情報を発信しますが、企業とタイアップしていることで、消費者として発信するべき客観性を失い、企業の意向を忖度した情報を投稿する可能性があります。
そうすると、インフルエンサーが発信する情報の実態は「広告・宣伝」になります。
実態が広告であるにもかかわらず、広告であることを隠すことーーいわゆる「ステルスマーケティング」と、表裏一体の関係にあります。
インフルエンサーが投稿する情報に対して、フォロワーが「広告を隠した、ステルスマーケティングだ」と、感じたら、それまでのインフルエンサーへの賞賛は、一気に誹謗・中傷へと変わるでしょう。
話を映画に戻します。
宮崎駿の「君たちはどう生きるか」は、インフルエンサーを使った、口コミさえも排除しています。一般の視聴者による忖度のない、口コミが興行成績を左右します。
究極のブランドは、果たしてマーケティングの必要性をゼロにするのでしょうか!?
数年後、この作品がどう評価されているかが興味深いです。