叡智の三猿

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失敗したラーメンテーマパークの跡地から(麺屋 空海)

むかしむかし、センター北駅(横浜市)に隣接する「ショッピングタウンあいたい」の 3階 には「ラーメン甲子園」と呼ばれる、ラーメンのテーマパークがありました。

このテーマパークでは、全国からラーメン店を7店誘致し、半年単位でもっとも売上のいいお店を優勝店として表彰するイベントをしてました。

一回目はたいそう盛り上がりました。

わたしが若い頃、よく通った「とんこつラーメン屋」で、環七通りを賑わせていた「なんでんかんでん」が出店してました。初日は「マネーの虎」に出演していた、川原ひろしさんが顔をだしてました。多くの観客が、有名人を取り囲んでいた記憶があります。

しかし、はじめの盛り上がりは、あっという間になくなりました。回を重ねる毎に、なんだかよく分らない状態で、だらだらとイベントらしきものが続きました。そして、5年 あまりで終止符となりました。

逆に 5年 もよく続けていたなぁ~と、わたしは思います。

わたしは、誰もいない「ラーメン甲子園」に入るのが、空恐ろしく感じてました。遠くから会場を見るたびに、ショッピングタウンのネーミングに相応しく「誰かに、あいたい!」と、心のなかで叫んでました。

誘致したお店の売上に応じて、優勝店を決めるアイデアは悪くないかもしれません。

しかし、店側にとっても客側にとっても、このイベントは構造的な問題を抱えてたと思うのです。

店側にとって、ここは所詮、半年で終わるイベント店です。

人気ラーメン店として、そこに根付こうとするモチベーションはありません。お店の目新しさに釣られてやってきた客に、ラーメンを振舞って、出店コストを回収できればそれで OK! という感覚だったはずです。

従業員も半年しか働かないので、店舗オペレーションを効率的に回しながら、接客サービスの向上をはかろうとする意識もないはずです。

出店の初期段階で起きやすい、オペレーションのゴタゴタ感が落ち着くと、あとはダラダラと仕事をしながら、シーズン終了を待つだけです。

要はイベントとして、半年間は中途半端に長いのです。目新しさを求める客商売であれば、長くても 3ヵ月 くらいで終わるべきだと思います。

客側にとって、ラーメンは、自分の好みの味を探す旅のような感覚があります。

インパクトのある味も魅力的ですが、基本は自分にとって飽きのこないラーメン屋を客は求めると思います。

心のよりどころとなるラーメン店 ・・・ 一、二店舗 は、誰もが持っているのではないでしょうか!?

たとえば、ふるさとに帰省した時、必ず食べに行こうと思うようなラーメン屋さん。

そこには、どこかで見た記憶のある人たちが、カウンターに座っています。

日々の生活にストレスや嫌気を感じていても、好きなラーメンをすすった後は、なぜか穏やかな顔になります。

「ラーメン甲子園」に出店しているラーメン屋は、それが美味しいラーメンだとしても、半年で去ります。

そんなラーメン屋では、客の心のよりどころになりえません。

横浜といえば、1994年にオープンした新横浜の「ラーメン博物館」が全国的に知られているので、同じ横浜つながりで、あやかりたい気持ちもあったんだろうと思います。

ただラー博は、単に人気のラーメン屋が集結しているだけではありません。施設内に作られた昭和の街があまりにもリアリティがあり、その空間を味合うためにリピートしたくなる魅力があります。

「ラーメン甲子園」はすべてが中途半端で粗雑なマーケティングの産物でした。

ただ、いまになって考えると、「ラーメン甲子園」は、時代が現代であれば、うまくいったかもしれないとも思うのです。

「半年単位で7店のラーメン屋が集結して優勝を争う」企画は、SNSとの相性がいいと思うからです。

客がSNSと連動した投票を行うことで、評価の高いお店は、より多くの集客が見込めます。

そもそも、ラーメンは「通(つう)」が多い、食べ物です。ラーメン通がインフルエンサーとなり、フォロワーの共感を呼ぶかもしれません。

インフルエンサーは、あくまでひとりの消費者です。影響力のある消費者です。インフルエンサーは、自らプロモーションしたい商品となるラーメンの写真や動画を SNS にアップします。

インフルエンサーの趣向に共感する消費者が、インフルエンサーのフォロワーです。フォロワーは、をつけ、 を書き込み、# をつけて拡散します。

インフルエンサーを活用した顧客獲得のマーケティングは、SIPSモデル として紹介されます(下図)。

SIPSモデル

一方、インフルエンサーを使ったSNSによる販売促進は、効果的ですが、炎上リスクも裏腹です。

たとえば、出店している特定のお店が独自にインフルエンサーと接触をはかり、「お金を出すから自分のお店が出すラーメンが美味しいと、投稿してくれ。」という密約です。

この密約をフォロワーが知ってしまうと、インフルエンサーの投稿に対する「信頼性」はゼロです。

ISO27001による情報セキュリティの定義では、「情報の機密性、完全性及び可用性を維持すること。さらに、真正性、責任追跡性、否認防止及び信頼性のような特性を維持することを含める場合もある。」としています。

信頼できない情報は、情報セキュリティの事故に直結します。

インフルエンサーのSNSは、誹謗・中傷の嵐になるかもしれません。

そしていま「ショッピングタウンあいたい」の 3階 にある唯一のラーメン屋さんが「麺屋 空海」です。


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わたしには、「麺屋 空海」が「ラーメン甲子園」の遺産なのか、「ラーメン甲子園」の閉鎖後、新たに入店したかの記憶がありません(途中からラーメン甲子園に行くのを避けてたので・・・)。

ここのラーメンは、1,000円以下で食べられる商品もありますが、基本は 1,000円 以上します。

庶民の食べ物のイメージが強いラーメンが一杯、1,000円という価格設定は、感覚的には「高い」と思います。

しかし、昨今の原材料費の高騰を考えると、その価格を受け入れざるを得ないのかもしれません。

「麺屋 空海」の大きな窓からの見晴らしがよく、晴れた日は、遠く富士山を見ることもできます。

そして、このお店はコミックが充実しています。コミックのなかには、小学生の頃、夢中になって読んだ ちばあきおの「キャプテン」と「プレイボール」があります。コミックを読みながら、あの頃は毎日のように近所の友だちと公園で草野球をしていたなぁ~と、懐かしい気持ちになります。

そんなちょっと和んだ、気分になったころに、頂く マイルドな豚骨スープ味のラーメン・・・。

今日なら、1,000円しても許せちゃいます。