叡智の三猿

〜森羅万象を情報セキュリティで捉える

当サイトは、アフィリエイト広告を使用しています。

セカンドライフとリンデンドルの頃

2007年、わたしが在籍してた会社は、SESビジネスが収益の中心でしたが、新たなビジネスモデルを検討してました。

注目したのは、Second Life(セカンドライフ)という仮想空間です。知らない人も多いと思いますが、Second Lifeは、いま注目されているメタバースの原型です。当時、メタバースという言葉は、知っていましたがあまり世間では流行りませんでした。むしろ、Web2.0 という言葉(いまは死語です)が有名で、Second Lifeもその枠組みに入っていた印象です。

Second Lifeは注目を集め、有名企業も仮想空間に多数参画していました。特に日産が提供する自動車の自動販売機は話題になりました。

自動車の自動販売機(Second Life)

Second Lifeは、もう15年以上前にメタバースの持つ基本的概念の多くを兼ね備えていました。ここでメタバースの基本的概念は、メタ(旧フェイスブック)CEOのマーク・ザッカーバーグ氏が2021年の10月(Connect 2021)に語った8つとします。

  • Presence(没入感)
  • Avatars(アバター)
  • Home space(ホームスペース)
  • Teleporting(テレポート)
  • Interoperability(相互運用性)
  • Privacy and safety(プライバシーと安全性)
  • Virtual goods(バーチャルグッズ)
  • Neural Interfaces(ニューラルインターフェース)

わたし達が検討したのは、Second Lifeの空間で土地を購入して映画館をつくり、そこで無名監督によるショートムービーを上映します。映画館に来たアバターはチケットを購入することで、自由に映像作品を鑑賞するとともに、評価をつけます。そこで評価が高かった作品を表彰します。

収益は、①アバターへのチケット販売、②アバター向けのオリジナルグッズの販売、③協賛者の広告、④土地販売orレンタル、⑤建物の建設、を検討しました。

Second Lifeで土地を購入したり、グッズを販売する際に使われる通貨は、リンデンドルという仮想通貨です。リンデンドルは現実のドルで購入することができます。そして、Second Life上で提供したサービスによるリンデンドルの収益は、現実のドルに換金ができます。

この商取引の仕組みが新たなビジネスモデルを実現する可能性に向いていると思いました。現実にリンデンドルで土地を購入して億万長者になったという事例が話題になったりしました。

仮想通貨はトークン(Token)と呼ばれます。トークンは商取引に使いますが、メタバースでは、仮想通貨に加え、非代替性トークン(Non-Fungible Token:NFT)が密接に関連します。非代替性という言葉から推測できますが、これは「ほかの何ものにも代えられない唯一無二の価値」です。

トークンとNFT

たとえば、オンラインチケットとしてNFTを採用すると、チケットの真正性を確かめることができます。NFTの基盤技術は仮想通貨と同じく、ブロックチェーンです。ブロックチェーンによる変更不可能性のおかげで、偽造ができないことに加え、チケットの発行から販売、利用に至るまですべてが履歴として記録されます。

残念ながら、Second Lifeを活用したビジネスモデルは企画倒れでした。というか、Second Life自体が、月光仮面のごとく、疾風(はやて)のように現れて疾風のように去ってゆきました。実際にはいまでもSecond Lifeは存続されているようですが、マイナーな仮想空間だと思います。

結局、素人監督によるショートムービーを集めた動画サイトは作りましたが(現在は閉鎖)、普通のインターネット環境で提供される二次元空間です。

2007年のネット環境は、いまよりずっと速度がおそく、ハードウェアは高価でした。当時、聴講していたデジタルハリウッド大学のPC環境はスペックが高く、Second Lifeを学び、実験をするのに適していましたが、自宅のPCだと全く機能しませんでした。膨大な三次元空間をやり取りするには、あまりにインフラが脆弱でした。

あの頃の日本はガラケー天国でした。各携帯電話事業者が提供する、iモード、EZweb、Yahoo!ケータイは、文字情報による公式サイトを提供し、キャリアから認定されていない勝手サイトで溢れていました。

日本でiPhoneが発売されたのは、2008年になってからです。

Second Lifeは、時代を先取りしすぎたんだろうと思います。