黒人の命は大事
2020年5月25日、黒人男性であるジョージ・フロイドさんは、偽ドル札使用容疑で白人の警察官に拘束され、膝で首を押さえつけられ、窒息死させられました。この事件を契機として、黒人差別に抗議するデモが全米に広がりました。
デモは黒人だけでなく白人を含むあらゆる人種に広がりました。デモでは「Black Lives Matter(黒人の命は大事)」と書かれたプラカードを掲げ行進しました。「Black Lives Matter」デモは、東京でもSNSなどにより呼びかけが行われ実施されました。
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更に、8月23日、黒人男性のジェイコブ・ブレイクさんが警官に背後から銃で撃たれる事件がありました。
この事件への抗議から女子テニスの大坂なおみ選手は、以下のツイッターを投稿し、テニスの試合を棄権しました。
黒人差別への抗議は世界のうねりです。
公民権運動
黒人差別への抗議といえば1960年代に起きた「公民権運動」が知られています。1963年8月28日に全国の黒人差別に反対する白人も含めた20万以上の人々がワシントン大行進を行いました。
この日、キング牧師は「私には夢がある」(I Have a Dream)という演説を行いました。これは、あらゆる民族のすべての人々に自由と民主主義を求めるメッセージです。「公民権運動」を象徴する永遠に輝きを放つ名演説です(抑揚のある言葉は、英語耳を鍛えるのにも最適ですね)。
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そして1964年7月、ジョンソン大統領によって「公民権法」が成立しました。
「公民権法」の内容は次の通りです。
- 黒人選挙権の保障。選挙の際の「読み書き能力テスト」の禁止など投票権行使における人種差別を排除。
- 人種、肌の色、宗教、あるいは出身国を理由に、公共施設及びホテル、レストラン、映画館などの施設で差別もしくは隔離されてはならず、すべての人が財、サーヴィス、設備、特典、利益、便宜を「完全かつ平等」に享受する権利を有すること。
- 公教育における人種差別を排除するため、合衆国教育局がその実情について調査し、人種共学の実施について専門的援助を行なうこと、また司法長官は適切な救済措置をとること。
- 広く雇用における人種差別廃止をおし進めるために、平等雇用機会委員会を設置し、また裁判所にたいし適当な「差別是正措置」(アファーマティヴ・アクション Affirmative Action)を講じるよう命じている。〜世界史の窓「公民権法」より引用
しかし「公民権法」の成立から、60年近くがたったいまも、黒人差別はなくなっていないことが分かりました。
時代は変わる
1960年代、人種差別や抑圧、偏見に立ち向かい、不正の告発や反戦のために多くのプロテストソングが生まれました。その中で不朽の名作が、ボブ・ディランの「The Times They Are A-Changin’(時代は変わる)」です。
ボブ・ディランはこう歌います。
The line it is drawn, the curse it is cast
(描かれた線には呪いがかかっている)
The slow one now will later be fast
(遅いものは後から早い)
As the present now will later be past
(今現在は後に過去になるように)
The order is rapidly fading
(秩序は急速に衰退している)
And the first one now will later be last
(そして、今、最初のものは、後で最後になります。)
For the times they are a-changin’
(時代は変わっている)
※英訳はAI翻訳であるDeepL Translate: The world's most accurate translatorを使用。
1960年代といまでは、確かに時代は変わりました。オバマ大統領が誕生することは、むかしでは絶対にありえないでしょう。
しかし、時代は変わりつつも、再び、世界は黒人差別の問題に直面しています。
いまの黒人差別への抗議はかっての「公民権運動」のような制度を改正する問題ではありません。人々の意識の奥深いところに根付く、差別する心を変える運動だと思います。
意識に根ざした問題の解決はより難しいように思えます。人間の叡智が試されるときだと思います。