昨日は調布にある居酒屋で中学時代の同窓会をしました。みんな還暦なので、それを祝うことも兼ねました。ひとり1000円くらいで赤いモノがあるプレゼント交換をしたのも印象的なパーティでした。

旧友らとの再会のきっかけになったのが、mixiです。いまはSNSとして使っている人が殆どいないですね。
mixiの会員になったのは2006年です。
それよりもさかのぼること10年前はパソコン通信(ニフティサーブ)をしていました。そこのフォーラムを通じて、見知らぬ人とのコミュニケーションがありました。パソコン通信は電話回線を使い、モデムで特定のホストコンピュータに直接ダイヤルアップ接続する中央集権型システムです。ニフティサーブなど各サービスは独立しており、相互接続はありませんでした。そこがインターネットと根本的に違います。
インターネットはTCP/IPプロトコルを用いた分散型ネットワークです。「TCP」というデータを届ける担当と、「IP」という住所を使って道案内する担当をするカードのようなものがあり、世界中の無数のネットワークが相互接続され、どのコンピュータとも通信可能です。

わたしが mixiをはじめたとき、90年代にやっていたパソコン通信のコミニュケーションを思い出しました。
いまとは違い、当時は、すでに会員である誰かから招待を受けなければ、mixiアカウントを作ることができませんでした。この仕組みは、インターネット上のサービスとしては珍しく、どこか選ばれた者だけが入れる秘密のクラブのような雰囲気を醸し出していました。
会員になると、他のユーザーのプロフィールを自由に閲覧することができます。しかし、ここにも工夫がありました。誰かのページを訪れると、その訪問は「足跡」として相手に通知される仕組みになっているのです。緊張感がありながらも、新しいコミュニケーションの可能性を生み出しました。
足跡をきっかけに、リアルで面識がまったくない人とも「マイミク」という友だち関係を結んでいきます。卒業以来、縁がなかった同級生、同じコミュニティに参加している人、日記に共感した人。足跡という接点から、ネット上での人間関係が静かに広がっていきました。それは、従来の「知り合いの知り合い」という現実世界の人脈の延長でありながら、まったく新しい出会いの形でもありました。
招待制という運営方式は、mixiのコミュニティ全体に信頼感を醸成しました。誰かが責任を持って招待した人しかいない。その連鎖が、安心してプロフィールや日記を公開できる環境を作り出していました。
社会的にもmixiは大きな話題となりました。2006年の日経トレンディが発表したヒット商品ランキングでは、第四位にランクインしました。SNSという概念がなかった時代に、mixiは新しいコミュニケーションの形を提示し、時代を先導しました。
招待により信頼の輪を作る発想は、PGP(Pretty Good Privacy)の公開鍵認証方式を連想します。PGPでは、信頼できる人が他者の公開鍵に電子署名をすることで、信頼の連鎖が形成されます。AさんがBさんの鍵を信頼し、BさんがCさんの鍵を信頼すれば、AさんはCさんを信頼できる。これが「信頼の輪(Web of Trust)」です。中央の権威が一方的に認証するのではなく、ユーザー同士の横のつながりが信頼を保証します。

また、mixiの足跡機能は、いまの情報セキュリティのトレンドである「ゼロトラスト」に通じる側面もあります。ゼロトラストは、ネットワーク内の誰も最初から信頼せず、常に検証を求めるという考え方です。足跡機能は、匿名での閲覧を許さず、すべての訪問者を可視化することで、「誰が見ているのか」を明らかにしました。招待制という信頼の連鎖とは対照的に「見る」という行為そのものに透明性と説明責任を求める仕組みです。信頼を前提としながらも、行動は足跡というlogが残る。mixiは信頼とゼロトラストの二つの原理を巧みに組み合わせ、独特のコミュニティ空間を作り出していました。
やがてmixiは、FacebookやTwitter(X)など、グローバルなSNSの台頭により、栄光は失いました。しかし、mixiが体現した世界観は、現代こそ必要とされている気もします。
なぜなら、XやInstagramは、誰もが自由に参加でき、誰もが匿名で他者を観察できます。この「オープン」な設計は、自由と拡散力をもたらしました。しかし、誹謗中傷や炎上の温床になりました。匿名性と無制限のアクセスが組み合わさることで、責任を伴わない攻撃的な言動が横行する。誰が見ているかわからない、誰に届くかわからない。それが、言葉を乱暴にしていくのではないでしょうか!?
技術は、私たちに開かれた世界を与えてくれます。しかし、開かれすぎた空間の脆さも露呈してます。インターネット空間に、どんな設計思想を持ち込むべきかの明確な答えはなさそうです。