小学校高学年(1970年代後半)のときの友だちに「秀ちゃん」と呼ばれた人がいました。
わたしが住んでた団地の棟の向かいにある棟だった記憶です。
その友だちとは、近所ということもあり、よく遊んだのですが、中学1年のときに引っ越しました。
それは急な引っ越しだったと思うのですが、後日「秀ちゃん」の名前を学習雑誌で見ることになります。
1970年代の小学生は、中学になると、旺文社の「中一時代」か、学研の「中一コース」のどちらかを選択するのが「ならわし?」でした。
どちらも契約すると、万年筆がついてきます。
子どもは万年筆が欲しくて契約したいと親に申し出します。
わたしは「中一時代」を選びました。「時代」も「コース」も、内容に大きな違いはないと思います。ただ、学年が上にいくにつれて、中二、中三、高一、高二と進むのですが、高三になると「時代」の方は「蛍雪時代」という名前になります。これは、中国の故事である「螢雪の功」(夏は螢の光で冬は雪明かりで勉強する、転じて苦労して勉学に励む)に由来する言葉です。
そのときは、意味は分からなかったのですが「蛍雪」という言葉が、なんとなく奥深く感じました。
「中一時代」には、文通を募集する欄がありました。
そこに「秀ちゃん」の名前と住所が掲載されていたのです。
すでに彼は転居しているので、ここに掲載された住所に手紙を送っても、届かないだろうと、他人事ながら心配になった記憶があります。
いまは卒業アルバムに卒業生の住所を掲載するのもご法度の時代です。
全国的に販売している雑誌に、個人の名前と住所が普通に掲載される、あの頃とは全く違う時代を生きていると改めて思います。
文通は言ってみれば手紙です。
手紙はIT化により「電子メール」に置き換わりました。
電子メールになったことで、個人情報が丸見えの手紙と違い、情報の暗号化が徹底されるように進化しました。
電子メールを暗号化する方式で代表的なのが、「PGP」と「S/MIME」です。
S/MIMEは、電子メールの暗号化とデジタル署名に関する国際規格です。公開鍵暗号方式を利用しており、暗号化とデジタル署名の機能をもちます。暗号化は公開鍵暗号化方式であるRSAを採用しています。
「PGP」及び「S/MIME」の利点は次の通りです。
- 送信者、受信者双方で電子証明書を用いた暗号化メールを利用することで、攻撃者による盗聴がされた場合も、それを解読することが出来ないこと。
- 証明書による署名されたメールを送信するので、受信者は送信者の真正性(正当な権限において作成された記録に対し、虚偽、書き換え等が防止され、第三者から見て責任の所在が明確であること)を確認することができること。
- 電子署名されたメールは、送信時の内容を証明しているので、改ざんを検知するとメールソフトで警告が表示されること。
「PGP」と「S/MIME」の違いは使用する公開鍵の真正性を保証する仕組みです。
方 法 | 証 明 書 | 検 証 方 法 |
---|---|---|
PGP | 本人が作成するPGP証明書。 | 自分が信頼する利用者の公開鍵で、信頼する利用者の署名を検証。 |
S/MIME | 認証局が発行する証明書。 | 認証局の公開鍵で、認証局の署名を検証。 |
手紙と違って、電子メールははるかに効率的で、情報伝達もスピーディです。
しかし、手紙のひとつである「文通」は、電子メールにとって代わることはありませんでした。
文通の楽しみは、情報を相手にスピーディかつ安全に伝えることではありません。
文通をやる人にとって、第一の楽しみは専用のレターセットを買うことです。
もちろん、手紙ですので普通の便せんや封筒でも相手に届きます。でも、文通はカラフルでバリエーションが豊富なレターセットから、お気に入りのものを探すことが面白いのです。
そして、書く内容は、基本どうでもいいのです。
なぜなら、情報を相手に速攻で伝えるなら、文通よりも圧倒的に電話が有利です。携帯はない時代ですが、どの家庭にも固定電話があります。駅前や近くには公衆電話がある時代です。
手紙が相手に届く時点で、その情報は既に鮮度を失ってます。
文通は相手に手紙を出し、相手から手紙を受け取ったら、時間をおいてまた相手に出す。いつ届くか分からないポストを確認することに意味がありました。
すなわち、電子メールは「文通」の持っている特有の価値を取っ払い、情報伝達の効率化と、暗号化を提供するツールでしかありません。
SNSは文通にはない「1対多」や、投稿によって「映える」を価値を提供してます。ただ、それは文通が持つ価値にとって代わるものではありません。
ペンフレンドは消えゆくものなんだと思います。