叡智の三猿

〜森羅万象を情報セキュリティで捉える

当サイトは、アフィリエイト広告を使用しています。

ミクロが織りなすITの進化

ミクロアドベンチャー

かって、東京ディズニーランドに「ミクロアドベンチャー」というアトラクションがありました。

これは、3Dメガネをかけて楽しむアトラクションでした。3D映像では、ザリンスキー博士が、物体の質量を変化させることが出来る装置を発明し、その功績を称えた発明家大賞を受賞します。その授賞式で、観客であるわたし達がミクロサイズにされてしまいます。わたし達がミクロ化されたことで、巨大な犬が観客に向かってくしゃみ​をしたら、霧状の水が顔に噴射されます。本当に犬にくしゃみ​をかけられたような感覚を覚えました。

わたしがこのアトラクションをはじめて体験したのは、本場、オーランドにある、ディズニーワールドでした。このツアーは結構、大変でした。経由地であるニューヨークが吹雪の影響で、飛行機が飛ばず、足止めをくらいました。そのおかけでニューヨークを観光出来たメリットがあるのですが、広大なディズニーワールドを1泊2日でめぐる強行軍でした。

いまとなってはいい思い出です。ちなみに、アメリカでは「ミクロアドベンチャー」ではなく「ミクロオーディエンス」という名称でした。内容からするとこの呼び方の方がしっくりきますね。

f:id:slowtrain2013:20210703202708j:plain
ディズニーワールド(エプコット)のパンフレット

ミクロアドベンチャー、、好きなアトラクションだったのですが、その前後が人気の「キャプテンEO」だったことで、影が薄いまま終わったような気がします。

是非、復活して欲しいです。

ミクロの世界

ところで、ミクロ(微視的)という言葉は、マクロ(巨視的)の対義語なのですが、どこまで小さければ、ミクロなのかという点については、ミクロはマクロとの相対的な意味合いで使われる関係で、明確ではありません。

ただ、物理学の世界では、 原子より小さい大きさを扱う世界を「ミクロの世界」と表現します。そもそも、原子とはそれ以上は分解できない、ごく小さなものを指す言葉ですので、原子より小さい大きさの世界というのは、言葉の使い方として変な感じがします。しかし、高校化学の勉強でならったように、原子よりも はるかに軽いマイナスの電荷をもった電子という物質が存在することがトムソンにより発見されました。そして、原子よりも小さな物質ーー電子、陽子、中性子、光子、ニュートリノなどをひっくるめて、量子と呼ぶようになりました。

f:id:slowtrain2013:20210705170533j:plain
ミクロの世界(ヘリウム原子のなかの場合)

「ミクロの世界」はわたし達が目にする物理的な法則とは大きく異なり、その物理現象は、量子コンピュータや量子暗号の技術に活かされるべく研究がされています。

量子コンピュータ

コンピュータは、0と1からなる二進数の世界であるというのは、多くの方がもはや常識としてとらえていると思います。0と1はスイッチのON/OFFに該当します。この0と1はビットという単位で呼ばれています。2ビットであれば、以下、4通りの組合せがあります。

  1. 00
  2. 01
  3. 10
  4. 11

そして、スイッチはトランジスタと呼びます。RCサクセションの名曲に「トランジスタ・ラジオ」というのがありますが、まさにそのトランジスタです。
youtu.be
トランジスタは電気信号を入れるとON、入れないとOFFになります。そしてトランジスタを集積すると、集積回路という電子部品になります。コンピュータの性能進化は、集積回路上のトランジスタ数を伸ばすことーーーすなわち、1個のトランジスタをできるだけ小さくすることです。トランジスタは小さくすればするほど性能が上がり、消費電力は低くなる、という特長を持ちます。

いま、研究が進んでいる量子コンピュータは、いまのコンピュータの進化の延長ではありません。いまのコンピュータは「0」「1」の二進数で処理をしていますが、量子コンピュータは「重ね合わせ」と呼ばれる、0と1が混ざった状態の原理を用いることで、「0」と「1」が重ね合わせた状態のそれぞれに情報を持たせることが出来ます。

※「重ね合わせ」については、こちらの記事にも書いているので、ご参照ください。
www.three-wise-monkeys.com

いまのコンピュータと異なり、量子コンピュータでは量子ビットという単位が使われます。いまのコンピュータで2ビットの演算を行う場合、4通りの組合せが存在することは書きました。その組合せひとつひとつを逐次計算する必要があります。しかし、量子コンピュータであれば、1量子ビットは0と1の状態を同時に示します。そのため4量子ビットは、0と1の4通りの組合せを同時に示すこととなります。いまのコンピュータで、4回繰り返す必要のある演算を1回でできてしまうのです。

この「重ね合わせ」の原理を使うことで、量子コンピュータは、一度に大量の並行処理を可能にします。

量子コンピュータにより、いま使われている暗号化技術は危殆化するというマイナスの側面がありますが、ミクロの世界が織りなすITの進化は、留まるところをしないアドベンチャーワールドを感じます。