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毎日でもステーキを食べたい

牛と地球温暖化

2019年に環境大臣となった小泉進次郎は、9月にニューヨークで開かれた気候変動サミットでー

「毎日でもステーキを食べたい」

と発言をして物議をよんだのは有名な話です。

当時、環境大臣がこのような発言をしたのがなぜ問題なのか!?と、さまざまなメディアが取り上げました。

農林水産省の資料によると、牛肉を1kg⽣産するには、11kgの穀物(主にトウモロコシ)量が必要とされます(豚肉は7kg、鶏肉は4kg)。そしてトウモロコシの84%はアメリカからの輸入です。

ですので、国産牛を生産するには、アメリカで生産された肥料(トウモロコシ)を貨物船で輸入する必要があります。この穀物の栽培に使う化学肥料や重機、輸送で使う燃料などで、温室効果ガスを排出します。

牧畜の過程で生じる、ふん尿処理は、尿の窒素を取り除く浄化です。ここでも、温室効果ガスが発生します。

そして、牛の反芻(はんすう)行為による、温室効果ガスの排出はバカにできないほど、多いとされます。

反芻とは胃に入った餌を再度、口に戻して噛んでまた胃に戻す作業を繰り返すことをいいます。反芻をする動物は牛のほかに、ヤギや羊などです。

牛に代表される反芻動物は餌を食べたあと、それを口に戻すことで、餌をよりやわらくします。これにより消化がよくなります。また、餌を噛んでいる際に分泌される唾液が胃の中の微生物を活発にする効果があります。

牛の消化器官は優れた化学工場のような働きをしますが、反芻によって温室効果ガスの一種であるメタンを発生させます。

温室効果ガスには、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロン(CFC、HCFC、HFC)ガスがあります。温室効果ガスは一定濃度であれば、地表の気温維持に役立ちます。しかし、濃度が急激に増加すると、温度調節のバランスが崩れ、地球温暖化の原因となります。

牛と地球温暖化

2015年の国連サミットで採択された、SDGs(Sustainable Development Goals)は17の目標を定めています。牛の生産量を抑制することは、飢餓や気候変動に対する具体的な対策となります。

こうした経緯から小泉環境大臣の「毎日でもステーキを食べたい」発言は、地球を取り巻く状況を理解していないと受け止められたのです。

環境問題と功利主義

イギリスの哲学者・経済学者、ジェレミー・ベンサムは「功利主義」の創始者として知られています。ベンサムは「個人の幸福の総計が社会全体の幸福であり、社会全体の幸福を最大化すべきである」と、唱えました。

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功利主義と似た言葉の響きで、利己主義があります。しかし、両者はまったく違います。利己主義は私利私欲を満たそうとするのに対して、功利主義は「社会全体の幸福」を実現する考え方です。地球温暖化のような人類全体に共通する問題の解決は「功利主義」を適用する価値があります。

功利主義に基づき、牛の地球温暖化問題に当てはめて考えると、「毎日でもステーキを食べたい」というような消費者の欲求も満たしつつ、牛による温室効果ガスの発生を最小化することが課題となります。

ステーキは食べたい。地球温暖化問題は解決したい。

そう考えると大臣の「毎日でもステーキを食べたい」発言は、環境問題に対する無知を示していますが、問題解決のゴールを示す言葉としてのセンスはいいのかもしれません。

IoTによる牛の健康状態の見える化

課題を解決するには、牛肉の生産性を向上させることが必要です。

それをIoTによって実現する取り組みがあります。個体の牛にセンサーを取り付け、そこからデータ(姿勢、採食、反芻、歩行、飲水)を計測して、数値化する技術(センシング技術)を使います。数値から、ビッグデータとAIを活用して、牛の健康状態を推定してアラートを出します。

牛のIoT活用による行動の見える化

畜産経営にあたり、牛の群れから人手で健康状態に問題のある牛を見いだすのは多くの経験を必要とする手間のかかる仕事です。

IoTを活用すれば、個々の牛を細かく観察して、問題のある牛を特定する工数を削減することが出来ます。牛の健康状態を迅速かつ的確に見える化することで、効率よく牛肉が生産することが可能になります。