横浜の港北ニュータウンは、広大な住宅地です。住宅地の真ん中にセンター北とセンター南という物流倉庫を連想する名前の商業地区があります。両地区には大型のショッピングセンターが集結しているので、飲食店の数はとても多い場所です。
横浜のイメージから洗練された場所に見られますが、実態は子育てに追われるパパママが多く、ほとんどのレストランは子ども連れを前提にした造りになっています。
特に赤ちゃん連れですと、お店のソファに寝かしても、泣きじゃくったりするので、そんなときは直ぐにパパやママが抱っこしてあやします。
どのお店もガチャガチャした雰囲気があります。
そんななかで、センター北にある「アジョワン」は、数少ない例外です。ここは、大人が通う「スープカレー」を売りにしたレストランです。
レストランはセンター北駅からとても近いのですが、なぜかこの通りにはほかのお店が皆無で、非常に静かな場所にあります。
食べログの評価は、3.58 と、非常に高く、カレーEASTの百名店のひとつです。このため、開店と同時に食べる目的を持った客が来るので、お店の前は直ぐに行列ができます。
カレー屋さんというと、料理が来たらさっさと食べて、食べ終わったら直ぐに出るイメージがあります。しかし、アジョワンは、席と席の間隔も広くとられています。客の回転をくるくる回すタイプのお店ではありません。
子育てのあわただしい雰囲気のある街のなかで、このお店のなかは、時間がゆったりと流れている気がします。
ここのスープカレーの味はもちろん、美味しいのですが、ゆったりした雰囲気が、食べログの高評価につながっていると思います。
レストランを評価するポイントで味は重要だとは思うのですが、万人向けのグルメサイトである食べログに投稿する人は、必ずしも優れた味覚を持っているわけではありません。
アジョワンはしたたかな戦略により、ブランド化が成功しているお店だと思います。
そもそも、カレーで差別化するのは、難しいと思います。
なぜなら、カレーはルゥを使えば、自宅でも簡単に美味しく作ることができます。外で食べるカレー店で成功するのは、ココイチやゴーゴーカレーのようなチェーン店か、神保町や秋葉原のような味にこだわったお店が集結した街に存在してます。
アジョワンは単なるカレーではなく、スープカレーにこだわってます。スープカレーにすることで、商品としてのカレーの差別化が出来てます。
カレーとスープカレーの違いですが、日本の「カレー」は小麦粉でとろみをつけているのが特徴です。対して「スープカレー」とは、小麦粉を使わずベースとなるスープにスパイスで味付けしたものです。汁気が多く、サラサラしてます。スープカレーは、札幌が発祥といわれますが、わたしは南インドのカレーに近いイメージを持ってます。
普通のカレーライスは、激戦区ーーレッドオーシャンの戦いを強いられますが、スープカレーにすることで、ライバルは激減します。
店名のアジョワンは、スパイスの一種です。もともとカレーはスパイスやハーブを多く使うため、「食べる漢方薬」とも呼ばれます。実際、アジョワンは化学調味料を一切使用せず作られているカレーであることを売りにしてます。
スパイスを効果的に使用するインド発祥のアーユルヴェーダは、根強い人気がある伝統医療のひとつです。港北ニュータウンは、健康に対する感度が高い人が多く、そういう人にとってアジョワンは通いたくなるお店だと思います。
アジョワンのランチ価格の設定は、商品にもよりますが、概ね、1,500円前後です。この価格には、サラダと飲み物(コーヒーor紅茶)が含まれます。
おそらく、ココイチでカレーにサラダとコーヒーをつけても似たような価格になるでしょう。
アジョワンが優れているのは、サラダと飲み物をオプションでなく、セットとしてはじめから組み込んでいることです。セットにすることで、客単価は高くなりますが、コップ一杯あたりのコーヒーや紅茶の原材料費は非常に低いので、セットにした価格の多くは利益です。
かつ、来店客は、食後にコーヒーを飲むことで、ゆったりした時間を満喫できます。
そして、トータルの価格もココイチと変わらないので、なんだか得した気分になります。