叡智の三猿

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近所のアメリカ

わたしは幼少期に相模原(神奈川県)で育ちました。

元々、相模原は米軍関連の施設が多いのですが、わたしが住んでいた南部(現、南区)は、米軍ハウスと呼ばれる住宅地区がありました。ここはキャンプ座間などの米軍基地に勤務する軍人と家族のための住宅専用区域です。米軍ハウス内には住宅、学校、売店、教会、各種レジャー施設などの日常生活に必要な施設が完備された「まち」が形成されています。

わたしは学校との行き帰りに、度々、日本の相模原からアメリカの相模原を覗いていました。日本とアメリカの境界は鉄条網で仕切られ、アメリカに入ることは出来ませんが、外側からアメリカを覗くのは簡単でした。

下図はGoogleマップでみた、いまの相模原にある日本とアメリカです。

相模原の日本とアメリカ

小さな住宅が立ち並ぶ、ごみごみした日本から見るアメリカの住宅地は別世界です。大きな住宅が広大な芝生を挟んで立ち並び、夏場には芝生にレジャープールが置かれ、そこで遊ぶ子供と母親はとても優雅に思えました。

アメリカはリッチな国で、日本は夢のアメリカを追いかけることで、豊かな国になるんだろうと、子ども心に感じていました。

小学校5年(1976年)、わたしは町田にある学習塾に通いました。当時の町田駅から学習塾までの道のりには、マクドナルド、ロッテリア、サンテオレなどのファストフードが並んでいました。わたしは塾の勉強にはほとんど興味を持たなかったのですが、塾にいく途中のファストフードでの腹ごしらえは楽しい時間でした。マクドナルドのハンバーガーとマックフライポテト、ロッテリアのイタリアンホットサンドとロッテシェーキ、サンテオレのチキンバスケット・・・ファストフードの味は想像する夢のアメリカの味でした。ハンバーガーを頬張りながら、これがリッチな美味しさなんだと思っていました。

1970年代の日本にとってアメリカは夢の国でした。しかし、1980年代のなかで徐々に夢は現実感を帯びてきました。

きっかけは東京ディズニーランドの開業(1983年)だと思います。

わたしは東京ディズニーランドの開業当初から、毎年のようにディズニーにいくディズニーランド好きです。

ディズニーランドの入園料は高いのが嫌なのですが、金さえ出せば、夢と魔法の王国を思う存分体験出来ます。そして、夢と魔法の体験はほかのどの体験よりもアメリカを実感しました。小学生のころ、鉄条網の外側から見た遠いアメリカをディズニーでは五感で感じることが出来るのです。

そして、アメリカが夢から現実になるのと呼応するように、日本の経済はアメリカと肩を並べる成長を遂げました。ジャパン・アズ・ナンバーワンなんて、言葉も流行りましたね。

下記は1989年の世界時価総額ランキングです。「時価総額」とは、現在の株価に発行済株式数をかけて求められる数値で、企業の価値や規模を評価する重要な指標のひとつです。時価総額が高ければ、市場から見た企業の価値が高く信用性の高い企業と見なされます。ランキングを見れば、一目瞭然で日本企業の躍進を感じました。

順位 企業 国名
1 NTT
2 日本興業銀行
3 住友銀行
4 富士銀行
5 第一勧業銀行
6 IBM
7 三菱銀行
8 エクソン
9 東京電力
10 ロイヤルダッチシェル

しかし、1990年代から日本の成長は止まります。夢のアメリカを追いかけ、アメリカが現実の射程圏に入ると、日本は追いかけるべき対象を見失ったように思えます。1989年の世界時価総額ランキングに入ってる、日本興業銀行、富士銀行、第一勧業銀行が合併して、みずほ銀行となり、いまだに度重なるシステム障害を繰り返すのは、迷走する日本経済そのものです。
xtech.nikkei.com

平成は「失われた30年」といいます。それを象徴的に感じたのは、平成最後の紅白歌合戦の大トリでした。

この紅白では、紅組白組を超えたスペシャルステージをサザンオールスターズが繰り広げました。桑田さんが「勝手にシンドバッド」を歌いながら、ユーミンからキスの受ける様子は、平成の最後を飾るにふさわしいフィナーレだと大絶賛でした。もちろん、わたしも妻も大興奮でした。

しかし、ステージの主役となったサザンもユーミンも平成のアーティストではありません。彼らは1970年代のアーティストで、夢のアメリカを先頭に立って追っかけていた人たちです。

平成最後の感動のステージは、日本の大衆娯楽が閉塞感に包まれた30年であることを実感しました。

そしていまだに経済的にも文化的にも日本は成長を遂げていません(正直、昨年末の紅白は「年忘れにっぽんの歌」のような懐メロ路線なのか、マンネリ感を打破しようとしているのか・・・とても中途半端な印象をもちました)。経済的にはアメリカや中国に大きく後れをとっています。アニメ文化はグローバルな評価を得られていますが、ポピュラーソングやドラマなどは、隣の韓国に大きく負けています。

9月20日に国連で開催されたSDGsイベントでは、K-POPグループのBTSが登場しました。コロナ禍で影響を受けている若者は「ロストジェネレーション」ではなく、変化を前向きに捉えて進んでいく「ウェルカムジェネレーション」だと述べたことが話題となりました。K-POPのアーティストがグローバルに評価されていることの証だと思いました。
www.barks.jp

日本では変化も成長も感じません。「失われた30年」はこのままいくと「失われた40年」いや「失われた50年」になるのかもしれません。



真冬も熱いサザンです!