叡智の三猿

〜森羅万象を情報セキュリティで捉える

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わたしの為だけに書かれたサンキューレター

1995年、引っ越ししたての何もない部屋に家具を置くべく、渋谷にあった イン ザ ルーム に行きました(いまは、ニトリです)。

イン ザ ルーム はかって丸井が運営していた 家具のチェーン店です。

購入した家具は数点ありました。イン ザ ルームで担当してくれた方が付き添ってくれました。

家具を買って、一週間くらいしたあと、イン ザ ルーム の担当者から手紙がきました。

そこには、手書きで、家具を買ってくれたお礼と、家具の提案を行いながら、やり取りをさせていただいて、楽しかったことが長い文で綴られていました。

手紙を読んで、家具を購入したわたしは嬉しい気分になりました。

イン ザ ルーム の家具はセンス自体も好きだったのですが、買ったあとの手紙を頂いたことも印象がよく、それから事あるごとに、インテリアを探すときは、まず イン ザ ルーム に行くというのが、休日の過ごし方になりました。

イン ザ ルーム は残念ながら、2013年に全店舗が閉館しました。わが家も当時、イン ザ ルーム で買った商品も食器棚をメインとしてごく僅かです。部屋の家具を見ると、ショッピングの楽しい思い出がよみがえります。

IT を活用した会社の業務システムで「三種の神器」とされるのが、ERP(企業資源計画)、SCM(サプライチェーンマネジメント)そして、CRM(顧客関係性管理)です。三種の神器が注目され始めたのは、わが家がイン ザ ルーム からの手紙をはじめてもらった1995年頃です。

イン ザ ルーム からの手紙は、CRMの考え方のベースとなる One to Oneマーケティング を実践したサンキューレターです。One to Oneマーケティングは、顧客それぞれの興味や関心に合わせたマーケティングを行う手法です。サンキューレターに書かれている内容は、わたし達だけに向けたメッセージです。

One to Oneマーケティングの逆が、マス・マーケティングです。マス・マーケティングのメッセージは、大量プロモーションを前提としているので、すべての消費者を対象に同じ方法を行います。

マス・マーケティングとOne to Oneマーケティング

すべての顧客に同じ内容のメッセージが送られても、顧客の心は何も響きません。郵便ポストで企業から何かが書いているハガキを受け取ることがありますが、多くはパッとみて、即ゴミ箱行きですよね!?

サンキュレターは、「わたしの為だけに書かれたメッセージ」だから読む価値があります。CRMは顧客を全体として捉えるのではなく、個々として特別な対応をすることで、顧客と企業との関係性を深めることを目的にしています。

企業がCRMを実践するにあたって、顧客情報の収集は必須となります。一方で、収集した顧客情報が悪用されたり、外部に漏えいしたら、情報セキュリティインシデントです。顧客情報は厳密な管理が必要となる重要な情報資産です。

顧客情報の収集にあたっては、OECD(経済協力開発機構)から公表された「プライバシー保護と個人データの国際流通についてのガイドラインに関する OECD 理事会勧告(通称、OECD8 原則)」を知っておく必要があります。OECD8 原則は、個人情報保護の原則となったガイドラインです。

OECD8 原則

  1. 収集制限の原則:個人データは、適法・公正な手段により、かつ情報主体に通知または同意を得て収集されるべきである。
  2. データ内容の原則:収集するデータは、利用目的に沿ったもので、かつ、正確・完全・最新であるべきである。
  3. 目的明確化の原則:収集目的を明確にし、データ利用は収集目的に合致するべきである。
  4. 利用制限の原則:データ主体の同意がある場合や法律の規定による場合を除いて、収集したデータを目的以外に利用してはならない。
  5. 安全保護の原則:合理的安全保護措置により、紛失・破壊・使用・修正・開示等から保護するべきである。
  6. 公開の原則:データ収集の実施方針等を公開し、データの所在、利用目的、管理者等を明示するべきである。
  7. 個人参加の原則:データ主体に対して、自己に関するデータの所在及び内容を確認させ、または異議申立を保証するべきである。
  8. 責任の原則:データの管理者は諸原則実施の責任を有する。

CRMが注目されはじめた1995年 といまとでは、ITは各段に進歩しています。

企業の担当者が個別のお客様にサンキューレターを書くのは、大変な労力を伴うであろうことは容易に想像がつきます。

ITで人的な労力をカバーする役割として、Cookie(クッキー)の活用があります。これは、企業が提供するWebサイトをのぞく消費者が、利用者情報を登録し、Cookie を有効にする前提がありますが、消費者がネットを閲覧する際、使用するブラウザを介して、アクセス情報がWebサーバーに送られています。その情報を基にしてWebサイトを運営する企業側は、個別に興味ある商品のキャンペーンの案内をメールで知らせることもできます。

ITの活用で、企業と顧客のコミニュケーションが自動化され、顧客の継続的な購買が実現されれば、企業にとってハッピーかもしれません。

でも、手書きのサンキュレターは、それとは比較にならない価値があります。