叡智の三猿

〜森羅万象を情報セキュリティで捉える

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私をみんなのなかのひとりではなく、私は私として対応して欲しい

経営革新の手段として、CRM(Customer Relationship Management)が注目され、それを多くの企業が取り入れたのは2000年以降です。

CRMの本質はとてもシンプルでそれは、、

私をみんなのなかのひとりではなく、私は私として対応して欲しい。

という、顧客の心の声を実現する手段ということです。

お客様は売る人とのコミュニケーションを求めています。売る人にもっと私のことを知って欲しいと考えています。その欲求にビジネスで応えるのがCRMです。Customer Relationship Managementを直訳すると、顧客関係性管理です。CRMは企業と顧客の関係をマネジメントして高めていこうとする活動です。

わたしは幼いころ(1970年代)、相模原にある団地に住んでいました。団地近くに1kmに及ぶ商店街がありました。1970年代の商店街は肉屋、魚屋が軒を連ね、喫茶店、衣料品店、理髪店も活気がありました。商店街のお店で働く人は、お客様のことをよく知っていました。ラーメンを食べたければ、近所の中華屋に電話して名前をいえば、住所も電話番号も確認されることなく、スーパーカブでお兄ちゃんが配達してくれました。母が洋服を新調する際は、商店街にある洋服店に行きました。体型に合わせた型紙を起こして、そこにフィットする洋服を縫ってもらっていました。かって、洋服は買うものというより、洋服店で誂えるものでした。

やがて、変化が来ます。駅近くに大型スーパーがオープンしました。あらゆる日用品はスーパーにいけば買えます。スーパーはセルフサービスで、すべてのお客様に均一のサービスを提供しました。スーパーで買い物をすることが主流になるに従い、商店街は活気を失ってきました。

これをマーケティング用語で書くと、個々の顧客に個別に対応するワントゥワン・マーケティングから、商品の均質化とブランド化を前提にしたマス・マーケティングへの変化となります。さらに日本経済が成熟すると、大量生産・大量流通のマス・マーケティングに限界がきます。1990年代以降は、不特定多数の顧客を個人の属性(年収など)や、行動特性(ライフスタイルなど)により、細分化するターゲット・マーケティングが主流となりました。

CRMはワントゥワン・マーケティングに分類されます。時代は、ワントゥワン・マーケティング⇒マス・マーケティング⇒ターゲット・マーケティングへと流れ、2000年代に入り、原点に回帰したともいえます。

ただ、情報セキュリティの脅威から見ると、昭和のワントゥワン・マーケティングと、21世紀のワントゥワン・マーケティングは全く違います。かってはお店で働いている人の頭のなかに顧客情報がありました。仮に店の人がお客様の個人情報を周囲に言いふらしても、情報の拡散は限定的です。いま顧客情報は、CRMシステムにデジタル化されて格納しています。デジタル化された顧客情報は、情報を管理する組織内部の不正行為による流出もあるし、外部からのサイバー攻撃による流出もあります。そして一度、流出した個人情報は、SNS等を通じてどこまでも拡散される可能性があります。

ですので、CRMの実現に於いては、デジタル化された顧客情報、個人情報の安全管理を抜きにして語ることは出来ません。

有名な「マズローの欲求5段階説」は「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」と仮定し、人間の欲求を5段階に理論化したものです。これは1つ下の欲求が満たされると次の欲求を満たそうとする基本的な心理的行動を表しています。

マズローの欲求5段階説

CRMを「マズローの欲求5段階説」に当てはめると「私をみんなのなかのひとりではなく、私は私として対応して欲しい。」という、お客様の欲求は「愛情欲求」や「承認欲求」更には「自己実現欲求」を満たそうとしているように思います。いわば、3段階以上の高次元の欲求を満たすのがCRMです。

しかし、マズローによれば高次元の欲求は、低次元の欲求が満たされることが前提となります。たとえば、どんなに極上のおもてなしを売りにしているレストランでも、そこが賞味期限切れの肉を使用したら、お客様の安全を満たすことが出来ません。そんなレストランに行きたいとは思いません。

情報セキュリティは、人間の安全欲求を満たす活動です。企業は顧客情報、個人情報を外部に流出させないよう、適切な対策をする必要があります。情報セキュリティ対策により、お客様の安全欲求を満たす前提があって、CRMの実現が可能になりうると思います。