韓国ドラマの沼にハマるまで「韓国の人々はいつも焼き肉(サムギョプサルとかカルビとか)を食べているんだ」と、思っていました。
しかし、ドラマを観ると、そこにいちばん登場する飲食店は、焼き肉屋ではありません。
サンドイッチのファストフードである「サブウェイ」でした。
日本でもサブウェイはよく知られているファストフード店です。ただ、注文の仕方がちょっと煩雑なためか、マクドナルドとかモスバーガーに比べると、マイナーな印象があります。
しかし、韓国では人気が高いようです。日本より圧倒的に店舗数が多く、若者を中心にたくさんの人がサブウェイを利用しているようです。
ちなみにいま日本のサブウェイでは、アンバサダーをつとめているチャウヌさんのオリジナルカードをプレゼントするキャンペーンをしています。
サンドイッチ+ポテト・ドリンクセットを購入したお客さまが対象になっているようです。明日(2023年9月4日) から第四弾となるキャンペーンが展開されます(上の画像は第三弾のキャンペーンで頂いたものです)。サンドイッチの正体は「ケバブ風チキン&マヨ」です。美味しかった~
カードの在庫がなくなったら終わりのようですので、チャウヌさんのファンは一刻も早く、サブウェイに行きたいところですね!!
韓国ドラマに頻繁に登場するサブウェイは、PPL(Product Placement)と呼ばれる間接広告の一種です。韓国のドラマはドラマが始まったら、基本はCMがなくて物語が進みます。そのため、スポンサーの広告はドラマのなかに、登場させてます。消費者はドラマを通じて、間接的に商品やサービスを認知する手法をとっています。
日本ではドラマの制作会社と、広告の制作会社は分かれています。ドラマはドラマ単体として制作され、広告は広告として制作され、それぞれの映像コンテンツをドラマの間に挟むのが一般的です。
おそらく制作側の事情を考えると、韓国より日本の方がやりやすいと思います。
そもそもドラマのオリジナルとなる脚本には広告を意識したやり取りは無いと思いますし、監督も自らの作品を演出するにあたって、スポンサーの意向を踏まえた広告のことを考慮しなくてはならないのは、なにかと厄介そうです。
わたしがかって所属していた会社は、テレビ番組の制作を手掛けていたこともあり、その方面の方々と話す機会も多かったのですが、彼ら彼女らと話をすると「自らが理想とするコンテンツを追求すると、スポンサーの意向にそぐわないことが多々あり、そこにジレンマを感じる。」という言葉をたびたび聞きました。
特に若手のディレクターは、かなりその意識が強いようです。結局、別業界に転職してしまう人もいました。
おそらく、芸術家としてあるべき自分と、ビジネスマンとしての自分とにある「認知的不協和」だと思います。
日本のように PPL をあまり意識しなくともいい制作現場でもストレスを抱えるわけですから、韓国の番組制作は、より大きな精神的な負荷がかかるものと推察します。
それでも韓国ドラマに PPL が使われる背景は、視聴者の関心を考慮しているからだと考えます。
いち視聴者として、日本のドラマを観ると、物語のいい場面でCMが入り、ブツリと中断すると、ストレスを感じます。また、日本のドラマはCM枠があることで、韓国ドラマの比べると実質的なドラマの尺が短いです。そうすると、ストーリー展開が大雑把になります。物語には起承転結がありますが、起から承へ、承から転へ、転から結へと流れる中での登場人物の心理的な変化や、行動の変化が細かく描かれなくなります。
視聴者の関心は、ドラマだけではなく、CMを含めた自分のための時間です。ドラマがCMによって中断されると、時間的な顧客満足度は下がるはずです。ドラマよりCMを観るのが楽しみという視聴者もなかにはいるかもしれませんが、それは稀でしょう。
時間的な顧客満足度が下がるというのは、たとえば飲食店で、いくら提供される料理が美味しくても、料理が提供されるまで、あまりにも待たされるとイライラして、お店に対する満足度が低下するというロジックです。時間は顧客満足に大きな影響を与える概念です。
ドラマや広告の制作による影響を視聴者の関心にまで広げようと試行錯誤しているのが、韓国ドラマの現場だと思います。
「7つの習慣(スティーブン・R・コヴィー)」という大ベストセラーになったビジネス書では、ビジネスパーソンを主体的な人と、反応的な人に区別しています。
その本で「主体的な人は、努力と時間を影響に集中させ、自らが影響できる事柄に働きかけます。彼らの使うエネルギーは積極的なものであり、その結果として、影響の輪が大きく広がることになる。」と書いてます。
韓国ドラマが視聴者の関心を惹きつけて、面白いのは、制作に携わる人たちが、より主体的な行動を行っているからだと思います。PPL はそこに必要な手段だと思います。
一方でドラマ本編のなかに広告を混ぜる手法は、情報セキュリティのリスクを感じます。
というのは、そもそもドラマと広告では、情報に求められる要素が違うからです。
サブウェイのアンバサダーをつとめているチャウヌさんが主演したドラマに「女神降臨」というのがあります。
このドラマは外見が醜い、女子高校生(ムン・ガヨン)が youtube で紹介されたメイクアップ法や化粧品を使うことで、女神に変身するストーリーです。
ラブコメドラマとしては、何の問題もありません。しかし、これが広告だったら、誇大広告とみなされるはずです。そんな魔法のようなメイクアップや化粧品は無いと思います。
誇大広告とは、商品やサービスの内容や価格が、実際よりも良いように、または、有利であると消費者が誤解してしまうような広告を指します。「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」という、誇大広告を規制する法律もあります。
広告はドラマと異なり、情報の「完全性」が求められます。広告はあくまでも客観的なデータに基づく信頼ある情報でなければいけません。
ドラマのなかにPPL として広告が入ると、ドラマと広告の境界線がなくなります。
広告がドラマ的な演出で実態よりも優良に表現されるかもしれません。そうすると、広告としての完全性を損なうリスクがあります。
ドラマの視聴者もドラマを通じて商品やサービスを買い求める消費者も顧客です。
顧客満足の追求は、そうそう簡単でないことを感じます。