プロ野球界のレジェンド、故野村克也監督は「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」という名言を残しています。
ハマスタで行われた昨日の対ベイスターズ戦でのカープの勝利は、正に「不思議の勝ち」でした。
この試合、カープは7安打なのに対して、ベイスターズは11安打。攻撃はベイスターズがカープを圧倒してました。先発の野村は初回だけで、25球投げました。それで無失点で抑えられたのはラッキーでした。対する東はコントロールがビシッと定まってました。2回にデビッドソンにホームランを打たれた一球のみ(ベイスターズファンにとっては)悔やまれる場面でした。
6回以降、野村の後を継いだ、栗林、ターリー、島内、矢崎は、島内を除くと皆、不安定なピッチングでした。逆転されなくて、ラッキーという感じです。9回裏の牧の大ファールは、あわやサヨナラ逆転ホームランかと思いました。
極めつけは、カープが勝利するきっかけとなったのが、8回のツーアウトランナーなしで、上本の平凡なライトフライを関根が落球したことです。これでランナーが2塁に進み、野間が勝利打点をたたき出します。
「不思議の勝ち」ですが、結果カープはベイスターズに2連勝。首位の阪神と1ゲーム差の2位です。今日の結果次第で、オールスター前に首位なんていう・・・夢を持ちます。
今日は試合後、スタジアムで湘南乃風がライブをやることが決まっていました。そのため、試合開始は5時とナイターとしては1時間早めです。まだ強烈な日差しが照り付けるなか、汗をだらだらかきながらの観戦でした。ビールが飛ぶように売れそう。
せっかくの機会なので、個人的には湘南乃風のライブも見たかったのですが、一緒に観戦したベイスターズファンが「早く出て、飲みに行きましょう!!」と言ったので、さっさと球場を後にして、ライブはYouTubeで観戦しました。ライブイベントは観客を盛り上げるのに、とてもいいと思うのですが、地元のチームが負けてしまうと、ちょっと水を差してしまいますね。
※湘南乃風のライブは2週間限定で「横浜DeNAベイスターズ公式チャンネル」で公開されてます。
横浜DeNAベイスターズ公式チャンネル - YouTube
今日はバックネット裏で観戦しました。
バックネット裏で観戦するメリットは、ピッチャーの球筋がよく見えるというのもありますが、スコアボードが見やすいこともあります。
野球を観戦しながら、改めて感じました。試合のなかで、ゲームそのものではなく、スコアボードを見る時間がとても多いのです。
スコアボードには両チームの各イニングの点数、ヒット数、エラー数、残塁数が横に並びます。縦には両チームの選手の名前、打順、ポジションが並びます。打席毎にストライク、ボール、アウトカウントが表示され、ピッチャーの球数も確認できます。
バックネット裏に座ると、このゲームを理解する為の客観的な情報が意識せずに目に飛び込んできます。
わたしは投手、野手の動きを見ると共にスコアボードに目を向けます。
野村、球数多いな・・できれば6回まで投げて欲しいが、5回で勝利投手の権利を獲得したら、継投かな・・
スコアボードに表示される情報から、現状を冷静に読み取り、そこから課題を把握し、客観的に将来を予測し、勝つための対策を考えるのが野球観戦の醍醐味です。スポーツ観戦はどれも面白いのですが、野球ほど、科学的な思考をしながら見る競技はあまりないと思います。
野球のスコアボードは、ビジネスシーンでよく取り上げられる「見える化」の仕組みそのものです。
優れた「見える化」は、街で信号機を見るかの如く、コンパクトにまとまったビジネスの情報がパッと目に飛び込み、そこから現状を把握し、解決策を提示する・・・一連のプロセスを効率よく導く為の仕掛けが施されています。
あと、ハマスタのスコアボードには、独特な「見える化」が仕掛けられています。
それは、試合のなかの個々の対戦のなかで、恣意的にベイスターズに優位な科学的な情報が表示されることです。
下図は7回裏ツーアウト3塁での桑原の打席でのスコアボードです。
このとき、桑原選手の現実の打率は 284 です。しかし、スコアボードには、もうひとつの現実である 対カープ戦の打率 362 を表示します。
このふたつの現実は、共に科学的な数値ですが、ふたつの数値を見たベイスターズファンは、「桑原はカープ戦に強い!」と、直感的に感じます。
いわば、数学的な確率と確率を組み合わせることで、心理学な影響を与えてます。
この仕掛けで、ベイスターズファンの交感神経が興奮し、血液にアドレナリンが放出されます。心拍数や血圧が上昇し、より大きな声援になります。
ハマスタの収容人数は、33,912人 のようですが、昨日の試合を見ると、少なくとも7割はベイスターズファンに見えます。もし、ベイスターズファンのアドレナリンが放出され、声援量が10%増したら、スタジアムには、33,912人 × 7割 × 10% = 2,373人 もの新たなベイスターズファンが加わるのと同じです。
この大歓声は間違いなく選手に届くでしょう。よい結果を生む確率が高くなります。
野球に限らないのですが、スポーツはどちらかが勝ち、どちらかが負けます。お金を出してチケットを購入したファンから見ると、自分が応援したチームが勝つのと負けるのとでは、「行ってよかった」と「行かなきゃよかった」という雲泥の差です。
結果はどうなるかは、分からないのですが、観戦している間は、期待値を最大限に高め、勝利の美酒に酔いしれたいと思うファン心理をこの「見える化」は、うまくくみ取っています。