叡智の三猿

~情報セキュリティで森羅万象を捉える~

支配と抵抗

日本の会社の多くは年度末で慌ただしい日々を送っています。

年度末の慌ただしい仕事のひとつに査定による定期昇給の実施があります。平社員であれば、査定される側ですので、仕事としての意識はないでしょう。しかし、管理職であれば部下の査定は必須業務です。その管理職もまた上位の管理職に査定されます。

サラリーマンは会社組織で、階層的な管理の構成に組み込まれています。

定期昇給は将来にわたって、一定の賃金の上昇があることを労働者に約束することで、より優れた労働者を長期にわたって確保する目的があります。また、昇給額の決定の仕方には、年齢給など一律に定めた自動昇給と、個人の査定による考課昇給があります。

ちなみに昇給に似たものにベースアップがあります。ベースアップは物価の上昇や、社会的な賃金水準の上昇など、経済環境の変化に応じて労働者の賃金を一斉に引き上げることを指します。いわば会社で管理している賃金テーブル(賃金表)を更新することです。

日本はデフレが長引き、賃金の上昇に占めるベースアップの比率は低下しています。その為、賃金の上昇は定期昇給が主体です。そして、勤続年数や年功序列で昇給する自動昇給を採用する会社は減っています。成果主義のもと、個人を査定することで昇給に差が出る仕組みが主流ですので、考課昇給が日本の会社の昇給制度を支えているといえます。

このように書くと、査定される側は自分の賃金をあげたいと思っても、上司からよい考課をもらうしか方法がありません。もし、上司が考課をちらつかせながら部下に対して、威圧的に接するなら、それは管理ではなく支配です。

経営者が一方的に提示する労働条件を変えることができるのは労働組合の力です。個々の社員はそれぞれが異なる要求を会社に抱いているのですが、一致団結した要求をまとめることで、団体交渉を会社としていくのが労働組合です。労働条件に関する団体交渉を経営者が拒否することは法的にできません。

わたしが社会人になった30年まえは、いまに比べて労働組合の勢いがもっとありました。ストライキやデモもしましたし、わたしは、組合青年部のメンバーとして、ボウリング大会やバーベーキュー会などのレクレーションを企画したりしました。いまは総じて労働組合への期待値は低いと思います。労働組合はシャンプーや医薬品の斡旋販売を行う機関くらいの認識しかないようにも思えます。

組合への期待値が下がった要因を考えるとき、わたしは物理の「抗力」で捉えると、思っていることを表現しやすいと思いました。

「抗力」とは反作用のことです。たとえば壁を押すと壁は同じ大きさの力で押し返します。このとき壁を押す力が作用といい、壁が押し返す力が反作用です。

下図のように会社という物体が地面に置いてあるとき、この物体には重力が働いています。これは物体の質量をmとした場合、mgという圧力が下向きに働いています。そしてこれを支えて同じ大きさで反対向きの垂直抗力Nが働いています。

f:id:slowtrain2013:20210214163656j:plain:w500
圧力と抗力

圧力は会社の支配力と言い換えます。支配に対する抵抗は、労働組合運動に象徴される団結して抵抗する文字通り「抗力」です。

こう捉えると、いまの労働組合の弱さは、会社の支配力の弱さに通じると思いました。

わたしが会社員になった頃「勇気のしるし ~リゲインのテーマ~」というCMソングが大ヒットしました。歌っている牛若丸三郎太時任三郎です。

黄色と黒は勇気のしるし
24時間戦えますか
リゲインリゲイン
ぼくらのリゲイン
アタッシュケースに勇気のしるし
はるか世界で戦えますか
ビジネスマン ビジネスマン
ジャパニーズ ビジネスマン
~「勇気のしるし ~リゲインのテーマ~(牛若丸三郎太)」

youtu.be
この歌では24時間働く日本人のビジネスマンをコミカルに歌っていますが、いま、この歌詞を見ると違和感しかありません。

残業について昔から上限はありました。しかし、法的な拘束力はありませんでした。半ば残業は当たり前で、2時間くらいの残業であれば「今日は暇だったな~」と思い、キオスクで日刊ゲンダイを買って、満員の通勤電車で読みながら帰宅をしていました。

働き方改革で残業の上限規制が設けられました。長時間労働によるさまざまな問題が改善され、会社は社員に過度な残業を課すことはできなくなりました。

  • 残業時間の上限は、原則として月45時間(一日2時間程度)かつ年360時間とする。
  • 臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合も、以下の時間を超えて労働することはできない。
  1. 1年720時間以内
  2. 複数月(2か月~6か月)の平均でいずれにおいても80時間以内を満たさなければならない(休日労働を含む)
  3. 単月(1か月)では100時間未満を満たさなければならない(休日労働を含む)
  4. 月45時間を超えることができるのは、年間6か月が上限となる

昔に比べたら、日本の労働環境は良くなっていると思いたいですね・・・。