叡智の三猿

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より良いオペレーションの追求と全体最適

わたしは1999年にSAPコンサルタントの資格を取得しました。それ以降、会社業務の全体最適をIT化で推進することが、仕事の命題でした。いくつものIT化プロジェクトに参画して、業務改善による全体最適化を目指しました。しかし、100%の全体最適が実現できたというプロジェクトは、残念ながらわたしのなかにはありません。SAPの導入は成功しても、レガシーシステム(古いシステム)を新しいシステムに置き換えた以上の変革は感じませんでした。

日本の会社は、SAPに代表されるERPの標準機能に「アドオン」と呼ばれる会社独自の機能をたくさん追加開発しようとします。業務をシンプルに変えることを避けます。カオスな業務を維持したまま、ERPパッケージを導入するケースが多いのです。

※業務のIT化の大変さについては、以下の記事にも書いているので、よろしければ見てください。
www.three-wise-monkeys.com
いまも業務の全体最適化は、IT化の重要な目的であることに変わりありません。

ただ、ここ数年で全体最適の進め方が変わっていることを感じます。

かっての全体最適の進め方は、経営に近い立場にいる、各組織のマネジメント層が集まり、無理・無駄な業務を断捨離する業務フローを計画しました。これをBPR(Business Process Re-engineering)と呼びます。Re-engineeringは、会社の業務・組織・戦略を根本的に再構築することです。BPRの結果、無駄な業務が減り、業務がシンプルになるのですが、多くの社員はこれを「リストラ」と呼び、恐れました。そして、いつの間にか、BPRは死語と化しました。

もちろん、いまでも無理な業務、無駄な業務を無くしていこうとする考えはあります。しかし、かってのように各組織のマネジメント層が、深夜まで喧々諤々と議論しながら業務分析を行い、業務プロセスのあるべき姿を構築していく風潮は失われています。「働き方改革」により、残業は悪とされ、目の前にある業務をこなしたら、さっさと帰宅する社員が増えたことが背景にあるのかもしれません。

一方で、現場の日常業務(オペレーション)は、より早く、より正確にこなさなければならない動きが加速しています。日常業務が遅延したり、トラブルが続くと、残業が常態化します。その分、会社は社員に残業代を払うことになります。日常業務が早く、正確に出来るようになれば、会社は無駄な残業代を払う必要がなくなります。経営は効率化され、その結果、市場での競争に優位に立つことが出来ます。マネジメント層が頭で考えたBPRではなく、現場が主体となって、常により良いオペレーションを追求しようという考え方をオペレーショナル・エクセレンスと呼びます。

※オペレーショナル・エクセレンスについてより詳しく知りたい方はこちらの書籍を読んでみてください。

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オペレーショナル・エクセレンスを実現するうえで、活躍が期待されるのがロボットです。社員の手作業によるオペレーションをロボットで担う動きが進んでいます。これをRPA(Robotic Process Automation)といいます。RPAを人間に例えると「体」に相当します。RPAはAIのような「頭脳」は持ちません。そのため、高度な判断が入る仕事には向きません。しかし、単純作業が多い、オペレーションには絶大な効果を発揮します。

もしも、社員にサブロク協定違反するような残業を課したら、労務管理上、問題です。しかし、ロボットは24時間働き続けても、ぜんぜん問題ありません。残業、長時間労働、休日労働・・・ロボットは一切の不平も漏らすことなく、仕事をし続けます。RPAを進めることで、日常業務はどんどん早く、どんどん正確になります。

また、BPRを前提としたERPパッケージの導入に比べると、RPAはスモールスタートがしやすい特徴があります。RPAはサーバー型とデスクトップ型に大別出来ますが、デスクトップ型であればかなり安価です。会社の情報システム部門で、複数のRPAツールを比較検討目的で購入し、小さな業務で試してツールを評価する動きも多々あります。

かってといまの全体最適

会社の業務をロボットが担っていくようになれば、自ずと必要な社員の数は減ります。いままで社員が手作業でやっていたことは、ロボットに置き換えられます。社員の役割はロボットの仕事のチェックであったり、ロボットが障害を起こした際に動く、代替の作業要員ということになります。

結局のところ、会社業務の全体最適化とは、むかしもいまも、社員の数を減らすことです。

もし、会社業務の全体最適が実現されたとき、わたし達はどのような「働き方」をしているのでしょうか!?その「働き方」をわたし達は、本心から望んでいるかが気になります。