1982年のお泊まり会
1982年、わたしは高校生でした。ヒロくんと岩っちょという友人がいました。わたしを含めた3人に共通するのは、フォーク系のミュージックが好きということです。
その年の夏のある日、わたしと岩っちょは、学校帰りにヒロくんの家に泊まりに行きました。その経緯は覚えていませんが、お互いが好きなLPを持ち寄り、1枚づつ聴きながら、感想を語り合う企画でした。
わたしはリバイバルブームがおきていた「サイモン&ガーファンクル」の「パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム」を持参しました。
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岩っちょは、販売されて間もない「松山千春」の「大いなる愛よ夢よ」を持参しました。
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アルバムを聴きながら、お互いいろいろ語りあって、真夜中の3時くらいになり、眠たさも感じるころ、ヒロくんがかけたのが「中島みゆき」の「愛していると云ってくれ」でした。
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このアルバムのはじまりは、歌でなく、朗読からはじまります。わたしはその朗読にぶったまげて、眠気が吹っ飛びました。
「元気ですか」と
電話をかけました
あの女のところへ 電話をかけました
いやな私です
やめようと思ったけれど
いろんなこと わかってるけれど
わかりきってるけれど
電話をかけました
全く元気を感じない乾いた女の声で「元気ですか」という言葉を聞いた瞬間、ブラックホールの中に自分の気が吸い込まれていく感覚でした。
携帯もインターネットもない時代です。
固定電話は相手と会話をするだけではありません。「元気ですか」のように、会話の先にある相手の空気を読もうとします。
「わたしからの電話を喜んでいるのか。」
「本当はかかって来ることを望んでいないのではないか。」
こういう相手のプライバシーへの探りを入れられるのは、基本的に誰からの電話か分からず、リンリンリンリンと大きな音を鳴らす固定電話の特徴です。
2020年のリモートワーク
あれから40年近くが経過したいま・・・コロナ禍、リアルで人と人との濃厚接触は良くないとされるようになりました。
その反動として、オンラインでの接触は濃厚になりました。職場、友人同士による「オンライン飲み会」が盛んです。特に Zoomはビジネスツールとして使われていましたが、オンライン飲み会のツールとしても多く使われ「Zoom飲み」という言葉も定着しました。
一時、Zoomはセキュリティに問題があるということが話題になりましたが、いまは通信もデータも暗号化されているので、その懸念はかなり低減されたと思います。
- 通信の暗号化:Zoom Webサイトへの接続は、TLS 1.2による通信の暗号化を行なっています。
- データの暗号化:録画、チャット、ミーティングのデータは、AES-256で暗号化して保管されています。
Zoom は固定電話のような、相手に探りをいれる要素はありません。自分のプライバシーは自分が設定します。
- 積極的に発言したい人は解放して飲み会の場を支配します。
- ちょっと隠れたい人は、バーチャル背景設定を使って・・・たとえばベンジャミン・フランクリン橋の夕景をバックにします。
- 義理で参加する人は、飲み会のほとんどの時間をミュートにして、自分に話を振られたときだけ、ミュートを解除します。
- プライバシーを見せたくない人はカメラ機能をオフにして声だけ参加します。
固定電話の時代にあった、見えない相手の声や息遣いからプライバシーを探ることは無くなりました。
ただ、人の心には、プライバシーを守る気持ちと裏腹に、自分の弱い部分を誰かに知って欲しい感覚があると思います。
現在、放映しているTBSのドラマ「私の家政夫ナギサさん」の第6話で、1on1ミーティングが取り上げられました。
1on1ミーティングとは、リーダーとメンバーが定期的に行う1対1の面談です。これは人事評価のために行うものではありません。あくまで「メンバーのための時間」です。1on1を通じて、メンバーは職場環境や人間関係で不安に感じていること、プライベートで気になることを含め、好きなことを話します。リーダーはメンバーの精神的なサポートを行います。
任せるリーダーが実践している 1on1の技術 [ 小倉 広 ] 価格:1540円 |
コロナ禍によるリモートワーク、デジタル化が進み、ロボットAIが進化する過程のいま、人の心の機微がわかるアナログな感覚を社会は求めているかもしれません。
そして、あいみょん が歌う「裸の心」が、ドラマの雰囲気とマッチします。エンディングでこの曲が流れるたび、遠い昭和のぬくもりを感じます。
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