叡智の三猿

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成功体験の呪縛

成功体験の呪縛

経営コンサルタントの大前研一は、著書「日本の論点2020〜21」の中で「日本の再生を妨げているのは、過去の成功体験だ」と指摘します。

 21世紀に入って20年が経過しても日本の停滞が続いている最大の理由は、かっての成功体験の呪縛から抜け出せないことにある。21世紀に対応しようとしても、20世紀後半にあまりに成功しすぎたために、古びたシステムを変えられないのだ。
 21世紀が20世紀の延長であるならば、20世紀の成功システムはそのまま役立つかもしれない。しかし、残念ながら21世紀は20世紀の延長線上にない。まったく新しいプレイヤーが登場して世界を変えていく。
「日本の論点2020〜21・大前研一/プレジデント社」

日本の論点2020~21【電子書籍】[ 大前研一 ]

価格:1760円
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テレビCMの時代

大学卒業後、わたしは消費財メーカーに入社しました。その会社はヒット商品も多く、ブランド認知度は抜群でした。

消費財のマーケティング戦略は「ブランドの価値を維持し、育成すること」がポイントです。そのためには、消費者に商品の価値を知ってもらう必要があります。

そんな消費者への購買行動を促すプロセスが「AIDMA(アイドマ)モデル」です。

「AIDMA」はネーミングがキャッチーであることから、多くの方が知っているかもしれません。これは消費者の反応の順番を示した英単語の頭文字です。

  1. Attention:注意
  2. Interest:関心
  3. Desire:欲求
  4. Memory:記憶
  5. Action:購入

テレビCMで消費者の注目を集め、製品への関心を高めます。消費者は購買欲求を持ち、商品が記憶に残ります。そして、商品を買いにデパートに行きます。

わたしが在籍したメーカーは消費者の注意を惹きつけるため、有名タレントを使ったテレビCMを次から次へとうちました。

AIDMAモデル
AIDMAモデルこそ、20世紀後半に日本で大成功をもたらしたマーケティング戦略です。

YouTubeを見ると当時のいろいろな会社のCMを見れます。つい夜な夜な見入ってしまうことがあります。
youtu.be
これはカネボウのテスティモのCMです。口紅は「色」のイメージが強いのですが、そこに「落ちにくい」機能をプラスした製品として90年代に大ヒットしました。このCMは、藤原紀香、瀬戸朝香、加藤あいが揃って登場する豪華バージョンですが、男性タレントである木村拓哉が出たバージョンも話題になりましたね。

インターネット・マーケティングの時代

21世紀になるとAIDMAから「AISAS(アイサス)」への提唱がうたわれました。これはIT革命により普及したインターネット・マーケティングによる消費者の購買行動です。

  1. Attention:注意
  2. Interest:関心
  3. Search:検索・情報収集
  4. Action:購入
  5. Share:共有

AIDMAと比較すると赤文字の部分・・・「検索・情報収集」と「共有」が新しい要素です。

AISASモデルの考え方は、商品に興味を持った消費者がインターネットで商品を検索し、商品の詳細情報を入手します。そしてネットで購入します。購入したら口コミをSNSに投稿して共有します。そこから共有と検索のループが生まれます。

AISASモデル
日本企業のマーケティングの失敗は、このAISASモデルにうまく順応が出来なかったからだと思います。かってのAIDMAで成功をしすぎたのです。

AIDMAとAISASを比較すると、一目瞭然の違いがあります。AIDMAはテレビを中心としたCMにより、店舗への来店を想定しているのに対して、AISASはネットの活用が主体です。

しかし、20世紀後半に大成功をおさめた大型店(百貨店、大型スーパー)は、少子高齢化が深刻になる21世紀に入っても、来店するお客様を増やすことにこだわりましました。ECを導入しても、それはサブでしかありません。

結果論ですが、百貨店や大型スーパーがもっとECに力を入れていれば、いまのコロナ禍の難局は軽かったかもしれません・・・。

21世紀は米国GAFAに代表されるプラットフォーマーが輝かしい躍進を遂げました。

GAFA
いまは商品に興味を持った消費者は、手持ちのiPhoneから、Google で検索します。そこで商品の詳細情報を入手します。そしてAmazonで購入します。購入したら口コミをSNS(Facebook・Instagram)に投稿して共有します。

GAFAでわたし達の購買行動は完結します。そして、GAFAでわたしたちの購買行動はデータとして記録され、学習されます。

わたしのAmazonアカウントでログインすると、Amazonはわたしが欲しいと思っているモノを都合よく提案してくれます。