叡智の三猿

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スマホのない青春 ②

スマホのない青春 ① - 叡智の三猿の続きです。

彼女との「食事」は、デートの成功を左右するメインイベントです。

代官山でデートをするのであれば、当然、代官山にある、気の利いたいいお店に彼女を連れていく必要があります。

いまなら、駅で「食べログ」を使えば、万人が評価したレストランの格付けが見れます。彼女と食べログを見ながら 3.5 以上のお店を探し、そこに行ってみることでメインイベントはつつがなく完了します。もし、そのお店が満席なら、別な高評価点を見つけて、そこにいけば問題ありません。

しかし、スマホのない青春を過ごした若者たちーー1990年は「食べログ」がありません。

お店の情報は、事前に「グルメ情報誌」を購入し、よくリサーチしておく必要がありました。

そのうえで、電話で到着する時間帯が混みそうなのかを確認し、混む可能性が高いと判断したら、予約しておくのが賢明です。

いまのお店選びは、「デートの実行段階で、彼女との対話を通じ、状況に応じて行われる」のに対して、1990年のお店選びは、「デートの計画段階で、お店との約束事として取り決める」という大きな違いがあります。

仕事の品質を高める手法で有名な言葉に「PDCAサイクル」があります。これは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取った造語です。

いまとむかしのデートをPDCAサイクル に照らし合わせると、情報技術が発展してないむかしのデートは、計画の精度に重きを置いているようです。デートそのものは、決めた計画通りに実行することです。ですので、デートが失敗する要因は、計画の精度が悪かったからと解釈します。

しかし、情報技術が発展するなかで、デートのカタチも変わったようです。計画に従うよりも、実際にデートをするなかで、彼と彼女が協調しながら、状況に応じた対応を求めるようになったのです。

ここで「グルメ情報誌」について補足します。

「グルメ情報誌」はむかしから多くありますが、1990年の若者は、「ぴあmapグルメ」をよく使ってました。これは首都圏の各沿線の駅にあるおすすめ料理店を地図と共に紹介する本です。

そこから、グルメ情報誌は、お店を利用するシーン別に徐々に細分化していきます。

そして東京でデートする若者に対するバイブル的な役割を果たしたのが、1994年に発売された ホイチョイ・プロダクションズの「東京いい店やれる店」です。

この本は独自の採点基準によって彼女とのデートに相応しいお店を厳選しています。お店を利用するべき時期や、適切なタイミング(何回目のデートで使うべきか)までを示唆してくれる唯一無二の本でした。

ところで、いいお店というのは、メイン通りから外れたところにひっそりと構えていることが多いと思いませんか!?

代官山であれば、メインである旧山手通り沿いには、向かいが西郷山公園という絶好のロケーションにあるマダム・トキのようなお店もありますが、そういうロケーションのいいお店は常に満席でなかなか利用できません。


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ロケーションは多少悪くとも、いいお店を見つけることがデート成功させる鍵です。

そこで、問題になるのは、一歩裏通りにあるようなお店に、何事もなく彼女をエスコートできるかです。

いまなら、Google マップ アプリのナビ機能を使えば、迷うことなくお店にたどり着けます。

しかし、1990年に Google マップはありません。

もちろん「ぴあマップ」をはじめとする紙の地図はむかしから多数あるので、お店の住所と地図をたよりにすれば、いずれ目的とするお店にはいけるでしょう。

しかし、多くの女性は地図を見るのが嫌いです。

男が地図を見ながら、お店をサクッと探しあてれば、彼女の彼への評価は上々ですが、あーだこーだとつぶやきながら、地図と格闘する男を見ると、女性はその男を冴えない人として、切り捨てするかもしれません。

ですので、ここでも重要なのは、事前の情報収集です。行くべきお店は、実際に下見をして道なりを確認しておくべきです。

地図に頼ることなく、代官山の細かな路地をスマートに歩けば、彼女は彼を信頼するでしょう。

雰囲気のいいレストランでの食事は写真におさめたいものです。

いまは男性も女性も、スマホに付属したカメラで撮った写真をSNSに投稿して、友だちに共有します。

しかし、1990年 当時は「銀塩カメラ」しかありません。ちなみにデジタルカメラは、カシオが1995年に「QV-10」という低価格(といっても、6 万円くらいはしたのですが)商品を販売したことで、普及への道を歩みます。

銀塩カメラは、銀や塩素の化合物を材料とする感光剤の働きにより、フィルム上に画像を焼きつけるという仕組みです。フィルム現像することで写真にします。

このため、銀塩カメラはデジカメと異なり、写真を撮ってから現像するまでに時間がかかります。24枚撮りフィルムを買ったなら、24枚の写真を撮る必要があります。写真マニアでもない限り、現像は写真屋さんに依頼します。ですので、デートで写真を撮る日と、プリントアウトした写真を交換する日は異なるのが普通です。

いわば、デートで撮影した写真を渡すことを目的とした新たなデートを企画する必要がありました。

これは、デートするための大義名分です。そして、ゾンバルトが提唱する「恋愛や贅沢が資本主義を発展させる」ことにもつながります。

なぜなら、彼女に写真を渡すついでに、近くのカフェでお茶をすれば、その分、お金が市場を循環するからです。

しかし、写真の手渡しは危険もあります。

もし、デートの後、彼女と破局したら、写真を現像するためにかかったコストは無駄になります。プリントされた写真そのものが、忘れたい過去として、記憶から封印したくなるかもしれません。

危険を回避する観点では、デートの記録はその日一回で、完結してしまう方が望ましいと思います。

デートを題材として、1990年といまを比較してみると、ずいぶん様子が異なっていることが分かりました。

情報技術の発展により、スマホに搭載されたアプリが、ネット空間を通じて、その時点で必要な情報を瞬時に届けてくれるので、デートを成功に導くための強力な援護をしてくれるようになりました。

「情報技術の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる。」という、DX化の理念は、デートに於いても実証されてます。

一方、便利だからといって、あまり物事を考えずにスマホを使うと、「主体的に考える」という、本来は脳が担うべき役割をスマホに委ねることとなります。

昨年(2022年)の7月に起きた、KDDIの大規模な通信障害は、スマホに依存する危険をわたし達に認識させました。

この障害の発端は、通信機器(ルーター)のメンテナンスで不具合があったことで、切り戻し(メンテナンス前の状態に戻すこと)をしたのですが、その際、通信ネットワークが輻輳(ふくそう)状態に陥ったことで、機器の負荷が増加。結果的に障害を長期化させる要因となりました。

スマホ全盛期のいまは、ガラケー時代に比べると常時ネットワークへの接続が当たり前です。その為、小さな不具合が一部の機器で起きると、別な機器にアクセスが集中し、利用者もネットワークへの接続を繰り返し繰り返し実施するので、輻輳が起きやすいのです。

通信障害のイメージ

情報技術が絶え間なく進化しますが、「障害は起こるもの」という前提を持たなければいけないと思います。

わたし達は、いつ障害が起きても影響を最小限にするための準備が必要です。

ボーイスカウトの世界的なモットーで、「そなえよつねに」という言葉があります。

「そなえよつねに」は、自分の義務を果たすための「備え」が、いつでもできていることです。発生が予見できる事故をあらかじめ手落ちなく考えて、事前の対策をほどこし、もしもの際はうつべき正しい方法を実行する心構えが必要だと言う意味です。

いま「情弱」という言葉は、情報機器の操作が上手くできない人に対して向けられてる蔑称ですが、1990年には存在しない言葉です。なぜなら、コンピュータを使うことが一般的では無かったからです。

しかし「備え」が出来ているか、そうでないかは、むかしもいまも、出来る人と出来ない人を決定的に分ける要素です。

情報技術がいかに発展しようとも、それが良い方向に向かうか、そうでないかは、技術そのものにはないかもしれません。結局は、人間の考える力と、想定される事故に対する「備え」によって決まるような気がします。