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佐々岡監督、お疲れ様でした。新井さん、期待してます。

カープ、佐々岡監督が退任しました。

監督就任から3年、リーグ優勝が出来なかったことは仕方ないとしても、クライマックスシリーズへの出場も逃しました。ファンにとってもチームにとっても不本意な3年間だったはずです。

2022年の開幕前、プロ野球の解説者 103名の順位予想ではカープを最下位と予想する人が9割に及んでいました。不動の4番、鈴木誠也のメジャー移籍が順位予想に影響しました。

ただ、開幕ダッシュに成功したカープは、4月は上位をひた走ります。わたしは佐々岡監督のつなぐ野球の成果だとこのブログに書きました。
www.three-wise-monkeys.com

古くからのカープファンになじみ深い格言?があります。

「カープは鯉のぼりの季節まで」

開幕から5月のはじめまでは調子が良いが、その後は失速するという意味です。

今年のカープは鯉のぼりの季節が終わっても強く、ファンの期待は高まったのですが、5月24日からのセ・パ交流戦でロッテとの3連戦での負け越しを皮切りとして、どんどん貯金を崩していきました。交流戦の終盤で、借金生活に浸りました。

終わってみれば、安定の5位。

佐々岡監督の采配については、あれこれと言われていましたが、わたしはふたつのデータからひとつの傾向を感じてました。

セ・リーグのチーム別の犠打と盗塁の数を並べてみました(下図)。犠打はセ・リーグの上位層(上位3チームはほぼ同じです)にあるのですが、圧倒的に盗塁数が少ない結果です。

2022 セ・リーグのチーム別犠打数と盗塁数

ランナーが1塁にいる場面で、得点を狙うには2塁に進める必要がありますが、佐々岡監督は徹底して盗塁を避け、犠打に頼る采配をしました。

犠打は盗塁と比べ、着実にランナーを2塁に進める作戦です。1つアウトが増えますが、2塁に進めば、1つのヒットで1点入る可能性が高くなります。犠打に失敗しても、1塁にランナーが残るので、得点のチャンスはまだ残ります。

一方、盗塁は挑戦的な采配です。成功したら、一気に得点チャンスのムードになりますが、失敗したらランナーがいなくなり、アウトだけが増えます。その分、チームの雰囲気も悪くなります。

佐々岡監督は「着実にいくか、挑戦するか」の判断を迫られたとき、着実にいくことを選択するリーダーでした。別な言い方をすると「失敗したときにダメージが大きくなるような判断をせず、状況を見守る」ということです。

挑戦は耳障りがいい言葉ですが、挑戦して失敗するよりは、着実に行く方がいいというのは理解できます。

野球に限ったことでなく「着実か挑戦か」の判断は、日常生活にもあります。

はじめて降りた駅に、知らない中華料理店と馴染みある「餃子の王将」があったら、着実に美味しいことが分かる「餃子の王将」に入る人は多いと思います。知らない中華料理店に行く場合も、いきなり入るのではなく、食べログとかで評価を確認して入る人が多いと思います。

挑戦より着実を選ぶのは、人の本性だと思います。

着実思考はリスクをゼロ(若しくはゼロに近づける)にしたいから生まれます。さっきの駅前の見知らぬ中華料理店の例なら、「知らない店に入ることで、不味い飯を食べてしまう」ことがリスクです。このリスクを回避(ゼロにする)するには「餃子の王将」に入ることです。リスクを軽減(ゼロに近づける)するには、食べログで評価を確認してから入ることです。

リスクとは不確実性を示します。リスクをゼロにするというのは、不確実性をゼロにすることです。言い換えると「期待値に近づける」ようにリスクをコントロールことです(下図)。

佐々岡監督の采配に話を戻します。

今季、評論家の約9割がカープを最下位に予想しました。これはすごく顕著な統計です。それだけ、周りのカープへの期待値は低かったのです。

佐々岡監督が、期待値を「最下位にならない」と設定したら、「最下位になるリスク」をゼロに近づける采配が必要です。

リスクをゼロにしたいから、挑戦より着実な采配をしたと考えます。

結果的にカープは最下位にはなりませんでした。5位ですが、最後の2試合まではCS を狙える位置でした。ですので、着実な采配をしたことで、期待通りの結果になったと言えるのです。

9月に入ると、投手起用を中心に挑戦的な采配も見えてきました。

象徴的だったのは、9月13日の阪神戦です。この試合では5回1死、1点差でカープが勝っている場面で、勝利投手の権利がかかる先発の九里から森浦に継投したのです。いままでの佐々岡監督の思考ではありえない采配です。

この思考の転換は、リスクに対する考えが変わったからだと思います。

それまでの「最下位になるリスク」をゼロに近づける思考を捨てました。

この時期、1位と2位はほぼ確定したなかで、カープにとっては3位になることが命題でした。3位から5位までは混戦でした。監督の采配によってCSに行けるか、行けないかが決まる状況でした。

そして、佐々岡監督は「CSに行けないリスク」を許容したんだと思います。

リスクを許容したことで、采配は着実思考から挑戦思考に変わりました。シーズン終わりの佐々岡監督の采配は、挑戦的な采配だったと思います。

しかし、思考の転換が遅すぎました。

もっと早くから挑戦的な采配をすればよかったのにと思います。

何故なら、ファンが望むのは「カープが最下位にならない」ことでなく、「優勝!悪くてもCS に行くこと」だからです。監督の期待値とファンの期待値にかい離がありました。

そして何よりも、大きなことが、今季はコロナ禍のゲームだったことです。

野球評論家が順位予想をするうえでの前提条件は、選手が100%のチカラで活躍することです。

しかし、コロナ禍のゲームでは、選手はいつ、長期離脱するか誰にも分かりません。それも大量の選手が離脱と復帰を繰り返します。

すなわち、野球評論家が順位予想をするうえでの前提条件は、コロナ禍によりそもそも崩れていたのです。

ということは、開幕前の順位予想は意味をなさないデータなのです。

試合に勝つうえで、コロナという最大の脅威を逆手に取るなら、挑戦的な采配を早い段階からしておけばよかったと思います。

来季の監督は新井さんです。

若く、新鮮味があり、ファンとしてワクワク感いっぱいです。

監督の就任会見で「いろんな起用とか采配とかいろいろあると思うんですけど、第1番は勝つためにどうしていくのかというのを考えてもらいたいですし、自分もそういうふうに考えています」と、言ったのが嬉しかったです。

コーチ経験がないのを危ぶむ声も多くありますが、リーダーシップがありそうに見える新井さんの采配を信じたいと思います。

ドラフトも期待通りの成果でした!

佐々岡監督、お疲れ様でした。新井さん、期待してます。