前回の記事では韓国ドラマによく出てくる「監視カメラ:CCTV(closed-circuit television)」の設置について取り上げました。
CCTVは街中の犯罪を抑止するために活用されますが、企業の情報セキュリティ対策としても有効なツールです。
特にデータセンターのような機密情報が集積しているエリアへの入退室管理は厳密さを極める必要があります。
機密エリアの一般的な入退室管理は入退室する人が正当な権限があるかを認証方式によって判別します。代表的なのは、ICカードによる認証方式で、これはカードを所持していることで正当な権限を認証します。その他の認証する要素としては、記憶と属性があります。この3つを「認証の3要素」と呼びます。
要 素 | 認証方式の例 |
---|---|
記 憶 | パスワード認証/暗証番号等 |
所 持 | 端末(スマホなど)認証/ICカード認証 等 |
属 性 | 生体認証(指紋認証/顔認証 等) |
「認証の3要素」のうち、複数(2つ以上)を使うことで、セキュリティレベルがグン!とあがります。これを多要素認証と呼びます。多要素認証をしている身近な例としてはスマホのアプリ利用があります。スマホにログインする際、指紋認証をしている人は多いと思います。そしてスマホのLineアプリを使う場合、パスコードを入れる人が多いと思います。そうすると、スマホを使ってLineをする行為は、生体認証のひとつである指紋認証を行った上で、記憶しているパスコードを入力していることになります。
しかし多要素認証をしていれば、正当な権限を持った人以外が、機密エリアに入室することを防げるとは限りません。
情報セキュリティ違反でよくあるのは正当な権限を持った人のすぐ後ろにたって、権限を持った人が入室するのと同時に、その背後から入室してしまうパターンです。この行為をピギーバックといいます。皆さんも何回か経験があると思います。事務所に入室する際、IDカードをかざして扉をあけたら、すぐ後ろにいる人が扉があいたままの状態で、IDカードをかざさずに入室してしまうことです。後ろにいる人が知っている人だったりすると、特にその人がIDカードをかざさずに入室することを気にしないことも多いと思いますが、これは情報セキュリティ違反です。
※ピギーバックによる脅威はこちらも見てみてください。
www.three-wise-monkeys.com
ピギーバックを監視するには、入り口に監視カメラ (CCTV) を設置して録画することが有効です。
ところで韓国は日本よりもCCTVの設置が普及している原因について考えてみます。
CCTVの設置で問題となるのがやはりプライバシーの侵害についてです。もちろん記録された画像データは法律やコンプライアンスに関する要件に従って管理はされるでしょう。しかし街中や駅に設置しているCCTVは、相手の許可を得ることなく、人物を撮影しています。そうすると、自分の画像が公表されたりしないよう主張できる権利(プライバシー権)との矛盾が出てしまいます。
toyokeizai.net
国が個人のプライバシーを重く考えると、CCTVの普及はなかなか進まないと思います。逆にいえば、個人のプライバシーを主張する風土の低い国は、CCTVの普及が進むとも考えられます。
韓国の場合、徴兵制がCCTVの普及に貢献しているのかなと思います。韓国では、満18歳以上が兵役検査対象者となり、19歳になる年に兵役判定の検査を受けます。ほとんどの大学生は大学1年生が終わって2年生になる前に、約2年休学して兵役に行くようです。
いわば韓国の人は日本人と異なり、軍隊に所属する期間があるので、そこで軍隊式の愛国教育を受けます。そこでは上官の指示は絶対的なものであり「なぜ、それをやるのか?」を考えること自体が許されません。もちろん、その環境に反発して軍隊を脱走する人も少なからずいるようです。
昨年ネットフリックスで配信された「D.P. -脱走兵追跡官-」は、脱走兵を無事に連れ戻す脱走兵追跡官の任務を描いた作品です。骨太な作品ですので、一度ご鑑賞あれ。
youtu.be
ちなみにわたしも妻も韓国ドラマ好きですが、好みの傾向はやや異なります。わたしの場合、ストーリーに社会性があり、サスペンスの要素があるドラマに興味があります。一方、妻はラブコメ要素が強く、イケメンが出るドラマを見たがります。
「D.P. -脱走兵追跡官-」は、どちらかというとわたしが好むドラマですが、国民的年下彼氏と呼ばれるチョン・ヘインが主人公ですので、妻も堪能してドラマを見ることができました。
それにしても、人々を監視する役目の兵士の脱走を監視する役回りの兵士がいるとは知りませんでした。
これだけ監視されることが人々の生活に根付いていることを考えると、韓国でCCTVの設置数が多いのは納得感があります。