叡智の三猿

〜森羅万象を情報セキュリティで捉える

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映像授業とあの頃の日日是決戦

受験生の息子は自宅で東進の映像授業を受けています。映像授業は自宅パソコンで人気講師の授業を受講できるシステムで、自分のペースにあわせて学習できるのが特徴です。

勉強部屋から漏れる講師の声を聞くと、再生速度が速いことに気づき、息子に聞くと「1.5倍速で聞いてる」といいます。わたしの耳には講師の声が速すぎて、何をしゃべっているのか分かりませんでした。

そんな速い速度で聞いて、理解できるのか?

全然、問題ないよ。何も知らないで聞いてるんじゃないから。

映像授業は繰り返し再生できるので、知識がゼロベースで聞くときは通常速度で再生し、繰り返し聞くときは速度をアップして聞くことができます。もちろん、授業の初めから最後まで聞く必要はなく、もう分かっている内容は飛ばして聞いてます。

自宅で映像授業を聞くのは集中力が途切れそうな心配がありますが、そこは講師の授業力でカバーしていると思います。

認証は生徒のIDとパスワードで行われます。初期パスワードは塾側から伝えられ、初回ログイン時にパスワードを強制変更するシステムではありません。パスワードを変更する機能はありますが、生徒の意思に任されています。

おそらく、このレベルのセキュリティ機能だと、不正ログインはされやすいでしょう。ただ、強制パスワード変更や、多要素認証などを採用して、認証の壁を高くすると、生徒自身が自分の都合のいいときに授業を聞くことが出来なくなるリスクがあります。

生徒から見た映像授業のメリットはー

  1. 自分のペースで進められる。
  2. 何回も授業を見ることができる。
  3. 自分の好きな時間、場所で受講することができる。

ことです。

情報セキュリティは、ログイン認証の壁を高くして、情報流出を防ぐようにする「機密性」だけを重視するものではありません。「可用性」も重要な情報セキュリティの要素です。可用性とは許可された者が、必要な時に必要な情報にアクセスできることを確実にすることです。機密性と可用性はトレードオフの関係にあります。映像授業は、機密性より可用性を尊重したシステムを採用しています。

情報セキュリティで特に重要とされるのが3要素です。これは、機密性、完全性、可用性を指します。この3要素の頭文字をとって、情報セキュリティのCIAといいます。

情報セキュリティのCIA(3要素)

なお、映像授業で「自分の好きな時間」に受講できるといっても、24時間受講ができる訳ではなさそうです。午前1時から7時までは動画を見ることが出来ないよう制御されてます。深夜に視聴できないようにした理由は分かりませんが、保護者目線から深夜に子どもがパソコンで動画を見ているのは良くないと思います。そのあたりも配慮しているのかもしれません。

いずれにせよ、東進の映像授業はうまくできたシステムだと思います。

わたしが受験生だった40年前とは隔世の感があります。

わたしは代々木ゼミナールに通ってました。その当時、人気講師は代ゼミに集結していました。かってテレビに度々、登場した金ピカ先生(佐藤忠志さん・英語)の授業も受けてました。原先生の英語、田島先生の数学、有坂先生の国語、前田先生の物理、大西先生の化学・・・らの授業を聞きました。おそらく同世代で代ゼミに行っていた人は知っている名前もあると思います。

代ゼミは人気講師を使って、1000人近く入りそうな教室に受験生を密に集める手法がとられてました。それでも生徒が収まらないこともあり、講師の授業をCCTV(Closed-circuit Television)で捉え、別な教室でモニターを見ることもありました。

講師は生徒を飽きさせないため、90分の授業をつかって、そのなかに度々、漫談を取り入れてました。漫談⇒授業⇒漫談⇒授業・・・にすることで、生徒は楽しさを感じながら、勉強した気分になるような工夫がされていました。カリスマと呼ばれる講師は、漫談と授業のバランス・連動が絶妙でした。

あの頃は、あの頃として最大限に効率的で効果のある授業スタイルがとられていたと思います。

しかし、コスパ面からみると、あの頃の受験教育はアナログ過ぎて、いまの映像授業には到底かないません。

受験業界はこれからもあくなきコスパの追求を続けていくでしょう。そこにはDX(デジタルトランスフォーメーション)というビジネス思想の元、授業にAI技術がふんだんに取り込まれるでしょう。受験生を効率よく難関大学に合格させるためのシステムを作り続けるでしょう。

カリスマ講師の先駆的存在である「なべつぐ先生(渡辺次男さん・数学、物理)」は、受験生に向けてこう書いてます。

物理学というのは、本来、こんなものではないハズである。しかし、是非はともあれ、現実の受験物理はこんなものなのである。だから、キミは、大学で本物の物理をやるにもせよ、今は、この方式に徹してもらいたい。

そして、大学でやるときには、もっとオーソドックスな勉強をする必要があるのです。だから、このような勉強は、合格のためのプロセスと観念してがんばってください。そして、合格したら、その日のうちに全部忘れてしまうのだ。

そこから、キミは新しい道を再出発することになるだろう。
~「なべつぐのひける物理1(旺文社)」より