叡智の三猿

〜森羅万象を情報セキュリティで捉える

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「安全」の捉え方について

前回は安全在庫に関する投稿をしました。それを参考にして「安全」と「安心」の違いを書きました。
www.three-wise-monkeys.com

ところで「〇〇は安全」と言われると「〇〇は危険がない」と、同じ印象を持ちます。そのまま、受け止めるのでなく、以下に書いた「安全の捉え方」を意識した行動をした方がいいと思います。

100%の「安全」は存在しない。

前回のブログで、安全在庫は出荷量のばらつきや調達リードタイムに「安全係数」を乗算します。安全係数とは欠品をどこまで許容するかによって決まる定数と書きました。安全係数はエクセル関数のNORMSINVを使って求られますが、欠品率をゼロとした安全係数は、存在しません。これは、100%欠品しない在庫量を数学的に求めることは出来ないことを意味しています。

安全係数

「100%の安全は存在しない」が、安全の捉え方その1です。

たとえば、最近あったニュースで、東京電力・福島第一原子力発電所で増え続けるトリチウムなどを含む、処理水を海洋放出する方針を決めたということがありました。復興庁は海洋放出の安全性を示すため、ゆるキャラ(※現在は削除)を使ったPRチラシや動画を配布し、風評被害を避けようとしました。しかし、100%の「安全」が存在しない以上、トリチウムを含んだ処理水の海洋放出も100%の安全では言えません。処理水はアルプスという除去設備を使って、セシウムを含む放射性物質を除去していますが、アルプスでトリチウム以外の放射性物質が完全に取り除ける保証はありません。
www.tokyo-np.co.jp

「安全」は「危険」を許容するのと同じ。

安全と危険は対義語です。しかし、100%の安全はないので、安全は危険と常に隣り合わせです。在庫管理で100%欠品(危険)を無くすことは出来ません。欠品を無くす唯一の方法は、在庫管理をやめることです。これは、見込生産方式(Make To Stock)から、個別受注生産方式(Engineering To Order)にすることを指します。受注してから個別に生産をすれば、欠品に頭を抱える必要がありません。

生産方式

いろいろと危険をはらんだ、東京オリンピックもまもなく閉幕です。菅総理は「安心安全なオリンピック」というスローガンを繰り返しました。東京オリンピックは「バブル方式」という、大会関係者を選手村内に留め、一般人と隔離する対策を講じました。ただし、安全は危険と隣り合わせですので、東京オリンピックは感染拡大を許容して開催したことになります。

そしていま、テレビをつけると、あるチャンネルでは東京オリンピックの興奮と感動を伝えます。そしてチャンネルを変えると、東京の感染爆発による医療崩壊の不安を伝えます。同じ東京での出来事なのに、パラレルワールドであるかの如くです。

感染拡大を許容してまで、オリンピックを開催した目的は何だったのかと考えます。

  • コロナで分断された人々の間に絆を取り戻せる。
  • 五輪が開催されると、ワクチンが優先的に供給される。
  • ニューノーマル時代のスポーツイベントのカタチを世界に発信できる。
  • 五輪が成功したら、政権浮揚し、衆院解散・総選挙で有利になる。

果たして目的は達成されたのでしょうか。感染爆発を許容しても、開催するべきでしたでしょうか。

「安全」は、前提条件が守られることが必須。

安全は前提条件がしっかり守られることで、実現が可能となります。前回の記事で安全在庫の計算式を書きましたが、それは次の式です。

  • 安全在庫=安全係数 ✕ 出荷量の標準偏差 ✕ √調達リードタイム

この式では出荷量ばらつきや、調達リードタイムが在庫計算に必要なパラメータとなります。パラメータは、適正な安全在庫を確保する前提条件です。しかし、実務では前提条件が破られることが多々あります。たとえば、通常は調達リードタイムが5日としても、仕入先で部品在庫がなかったり、調達担当者が発注する日に病気になったりと・・・突発的な事情で調達リードタイムが長くなる可能性があります。そうすると、安全在庫は安全ではなくなります。

前提条件でわたしが思い出すのは、2011年の東日本大震災です。このとき、福島第一原発の安全対策で想定していた津波の高さが5.7メートルだったのに対し、実際は15メートルでした。そのため、原発の非常用設備が浸水し、大きな事故につながりました。
youtu.be
自然は人間が考えた前提条件を守ってくれる保証はありません。技術的に制御できない前提条件は、破られると考えるべきでしょう。