叡智の三猿

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多段階SESエンジニアの悲哀

エンジニアT君の顔合わせ

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わたしはむかし、Mという会社で、SESビジネスの営業をしていました。SESとは「システム・エンジニアリング・サービス」の略です。これはITエンジニアの労働力をお客様に提供する契約形態を指します。

  • SESと派遣との違いについてはこちらを見てみてください。

ある時、ちょうど稼働に空きが出たエンジニアT君向けの案件情報を懇意にしているA社の営業マンから頂きました。そして細かい仕事内容を聞くため、T君をA社の営業マンに紹介しました。駅の改札で待ち合わせをしたのですが、そこにはA社の営業マンのほか、わたしと面識のないB社の営業マンがいました。

わたしとA社の営業マンはそこで用済みです。

この先はT君からの報告となります。

B社の営業マンはT君を連れて駅近のカフェに行きました。カフェにはC社の営業マンがいて、その方が案件の概要を説明しました。そしてC社の営業マンがT君を引き連れ、案件の出どころであるP社のプロマネとの顔合わせに臨みました。

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エンジニアT君の顔合わせ
ひとりの顔合わせのために実に多くの会社が絡んでいます。SESビジネスではこうした多段階を介した商流が珍しくありません。

わたしは最悪でも商流は2段階までと考えているので、この案件は辞退させて頂きました。

もしT君がこの案件に参画したら、このような商流構造が想定されます。

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多段階商流での案件参画
この構造でT君に仕事へのモチベーションを与えるのは非常に難しいです。出来ないと言っていいです。

多段階でのマージン徴収

商流は上位会社からの月額の売上から一定の手数料を徴収して下位会社に発注をします。

仮にプライムベンダーが月額100万で発注して、各商流にて20%の手数料を徴収したと仮定します。すると、下記の図のようにM社の売上は月額51万しかありません。

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商流での手数料徴収
その為、M社は月額51万で利益が出るよう、T君の報酬を算定する必要があります。M社も20%のマージンを徴収したら、T君の月額報酬は約40万です。年収にすると480万ですね。

転職・求人情報のdodaデューダ)を見ると、技術系(IT/通信)の平均年収は457 万円とのことです。T君は割と平均年収に近いことになりますが、T君にとって不幸なのは、プライムベンダーが月額100万もの大金で発注をしていることです。ですので、T君にはそれだけの高いパフォーマンスを要求するでしょう。しかし、平均的な年収のT君にそこまでの能力を期待するのに無理があります。

お客様の要望する能力と派遣会社から供給する能力にギャップが生まれます。
doda.jp

商流下位エンジニアのモチベーション

会社は社員の成績や能力を考課する必要があります。それにより社員の給与や賞与を査定します。

現在、多くの日本企業が取り入れている人事考課制度はピーター・ドラッカーが提唱した「目標管理制度(MBO)」です。

これは社員自らが設定した「自分の目標」を、上司がその適正を確認しながら、組織目標と照らしあわせます。そして、目標の達成に向けて上司が部下をサポートするマネジメント方法です。

もともと、ピーター・ドラッカーが提唱した「目標管理制度」は給与・賞与の査定の為にあるものではないのですが、日本企業は「成果主義」の元、査定する為の手段として「目標管理制度」を取り入れています。

人事考課制度を適切に運用するには、上司が社員の能力や仕事ぶりを把握する必要があります。そのためには社員が参画している現場の評価は非常に大切な情報です。

しかし、多段階の商流を経ると、お客様の評価を直接入手が出来ません。各段階の商流で情報が削ら、歪められます。

多段階商流では正確な部下の評価を上司が把握することは出来ません。

エンジニアは目標も仕事も上司に評価されることなく仕事を続けていくしかないのです。

一般論ですが商流が下にいけばいくほど、エンジニアの仕事へのモチベーションは下がります。仕事が受け身、指示待ちになります。仕事を自分事化して考えることが困難です。仮に業務改善をすべく提案をしても、下流から上流へと承認を得ることになります。この時間だけがかかり、提案は軽視され、立ち消えになります。

やはり、こういう多段階の商流には関わるべきではないと思うのです。

持続化給付金事業の再委託問題

ところで最近は「国の持続化給付金事業」の「委託」が問題視されています。再委託、再々委託・・・。法的に問題があるなしというより、本当に給付金が必要な事業者に無駄なく迅速に必要なお金が配られると思いますか!?
www.tokyo-np.co.jp