叡智の三猿

森羅万象を情報セキュリティマネジメントで捉える

派遣労働者の個人情報を管理

人材派遣会社にネガティブなイメージを持っている人は多いと思います。

結局、人材派遣はヤクザの商売なんだよ。

人材派遣ビジネスは合法的な人身売買で、人材派遣会社は雇った人材を客先預けていれば、極端に言うと黙っていてもお金が入ってくる仕組みです。人件費を抑えたい会社と、派遣ビジネスでお金を儲けたい会社があり、双方の要求を人材派遣法が潤滑油としてつないでいます。

わたしは人材派遣ビジネスの運営経験があり、派遣契約で客先に常駐するITエンジニアを長くやっていますが「人材派遣=人身売買」というのは、間違っていないでしょう。

要は持ちつ持たれつです。

人材派遣会社は多数ありますが、その派遣形態は以下の2つに分かれます。

登録型派遣

派遣期間が設定された派遣です。派遣元企業が雇う派遣人材は、派遣期間に限定されます。もし、派遣先企業が派遣期間満了による更新を打ち切れば、派遣元会社は派遣人材の新たな仕事を探しますが、その間は給与が支給されません。また、登録型派遣では3年までしか同じ会社では働けないというルールがあります。

常用型派遣

登録型派遣と異なり、派遣人材は派遣先企業の仕事があるときも、仕事がないときも派遣元から給与がもらえます。常用型派遣は派遣会社に採用された時点で期間を定めずに雇用契約を結ぶ正社員としての働き方が主です。登録型派遣と異なり、常用型派遣は同じ派遣先で3年を超えて働くことが可能です。

常用型派遣は一般の会社が正社員として雇用するのを派遣会社が行っています。人材派遣ビジネスは結局のところ人身売買なのですが、常用型派遣であれば、ネガティブに捉える必要は無いと思います。

わたしは人材派遣を行っている会社で8年ほど「派遣元責任者」という仕事をしていました。この役割は労働者派遣法の36条により派遣元会社が配置を義務付けています。3年毎に派遣元責任者講習を受講する必要があります。

派遣元責任者は派遣元管理台帳の作成や、派遣先に対する派遣労働者の就業条件の明示など多岐にわたります。そのなかには、派遣労働者の個人情報を最新の状態に更新するなど、情報セキュリティとの関連が深い仕事もあります。

派遣元責任者の仕事

  1. 派遣労働者であることの明示
  2. 就業条件などの明示
  3. 派遣先への通知
  4. 派遣先および派遣労働者に対する派遣停止の通知
  5. 派遣元管理台帳の作成、記録、保存
  6. 派遣労働者に対する必要な助言や指導実施
  7. 派遣労働者からの苦情の処理
  8. 派遣先との連絡・調整
  9. 派遣労働者の個人情報の管理
  10. 安全衛生に関すること
  11. 派遣労働者についての教育訓練の実施及び職業生活設計に関する相談の機会の確保に関すること(2015年の派遣法改正により追加)

わたしが派遣を行っていたのは、ITエンジニアです。ITエンジニアは専門性が高い領域です。2015年の派遣法改正までは「専門26業務」と呼ばれる業務のひとつでした。「専門26業務」は、3年ルールの適用対象外でした。しかし、法改正によりITエンジニアも、3年ルールが適用されるようになりました。

ITエンジニアは、派遣先で自らの専門性を発揮しつつ、さらに現場で新たな知見を得て、次の現場に移動します。

ここで情報セキュリティ面から懸念されるのが、派遣先で得た秘密情報をエンジニアが外部に持ち出すことです。

わたしは派遣元責任者として、エンジニアに対しては、情報セキュリティインシデントの当事者にならないようにすることを強く言ってきました。

特に注意するべきは、派遣契約が終わる1ヵ月前からです。派遣エンジニアは現場の終了を把握した時点で、次の案件に向けて準備をします。そのとき、エンジニアが社外に向けたメールを多く出したり、USBなどの外部記録媒体をパソコンに挿入していたら要注意です。派遣先企業は現場を離れるエンジニアを注意深く監視するべきでしょう。

不当競争防止法という、企業間の競争が「公正」に行われるための法律があります。そして、不正競争防止法の営業秘密は「秘密として管理されている生産方法、販売方法、その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」と定義されています。

  1. 秘密管理性:秘密として管理している。
  2. 有用性:事業活動に有用な技術又は営業上の情報である。
  3. 非公知性:公然と知られていない。

営業秘密性の条件をクリアし、秘密情報を持ち出した証拠を見つけられれば、持ち出した本人の刑事・民事上の責任を問うことができます。