叡智の三猿

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全体最適というオーケストラ

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昭和の終わりから平成のはじめころ

昭和の終わり頃、まだAIもITもありませんでした。「携帯電話」もありません。「電子メール」も「インターネット」も使いません。時はバブルの真っ只中。遊び浮かれているイメージがありますが、実際の若者は「ポケベル」という貧弱なコミュニケーションツールを用いて、液晶ディスプレイに表示される数字で相手の気持ちを確かめていたのです。

f:id:slowtrain2013:20200421150822p:plain:w30 11014(アイタイヨ)
f:id:slowtrain2013:20200421150913p:plain:w30 500731(ゴメンナサイ)
f:id:slowtrain2013:20200421150822p:plain:w30 33414(サミシイヨ)
f:id:slowtrain2013:20200421150913p:plain:w30 0833(オヤスミ)

1993年(平成5年)は、国武万里が歌う「ポケベルが鳴らなくて」が大ヒットしました。その後、携帯電話の普及と共に衰退の一途を辿ります。
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「IT革命」は2000年(平成12年)まで来ません。1990年代の終わりは、Y2K問題への対応案件が多く、現状システムの維持にエンジニアは工数をかけました。

Y2K問題(西暦2000年問題)、いまどのくらいの方が記憶しているのでしょうか・・・!?。

当時のコンピュータは、例えば1985年というデータであれば、85と下二桁で保管していました。2000年ならば00です。これを年代で小さい順に並べ替えすると2000年が一番、若い年となります。時系列が狂います。これにより、飛行機の自動操縦や、信号機の制御等を含む世界中のシステムが崩壊するかもしれないという一種の「終末思想」が生まれました。これがY2K問題です。
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Y2K問題はエンジニアの弛まない努力により、大きな混乱を生じることもなく、世界の崩壊はくい止められました。

全体最適を実現すること

Y2Kの問題が終息して「IT革命」が始動します。2000年のわたしは35歳です。わたしはSAP認定コンサル(MM4.0)を取得し、ERP(統合基幹業務システム)の導入をクライアント先で推進していました。その現場にテレビの取材が来ました。IT化に取り組む企業のドキュメンタリーを収録しました。NHKで「IT革命」のシリーズが組まれました。

ERP(SAP)以前の会社の情報システムは、会計、販売、生産、購買、人事等・・・個別業務を対象とした仕組みでした。それに対してERPは「統合基幹業務システム」と呼ばれます。個別業務がシームレスに連携し、会社全体を最適化する仕組みです。

例えば、商品を仕入先から調達する業務を考えます。従来のシステムは「購買システム」にて「発注登録→入庫登録→請求書照合」を行ないます。そして「会計システム」で「買掛金」を発生させる為、仕訳データを登録します。

ERP(SAP)システムでは、購買と会計は自動仕訳で連携されます。その為「入庫登録」を行なった時点で「入庫請求仮勘定」という仕訳データを発行します。これにより「購買部門」と「会計部門」のダブルインプットを無くし、より早い段階で「債務」の発生をマネジメント層に認識させる仕組みとなります。

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SAPの発注・入庫ソリューション
同じ2000年に、ISMS情報セキュリティマネジメントシステム)の基盤となるISO/IEC 17799の規格(現在のISMSは「ISO/IEC 27001」が主役です)が制定されました。

この中で情報セキュリティとは、情報システムの機密性、完全性、可用性を維持することと定義しています。具体的な意味合いは次の通りです。

  • 機密性:情報にアクセスすることが許可されたものだけがアクセスできることの保障。
  • 完全性:情報および処理方法の正確さおよび完全である状態を安全に防護すること。
  • 可用性:許可されたユーザが、必要な時に情報および関連財産にアクセスできることを保証すること。

情報セキュリティ対策マネジメント標準(JIS X 5080:ISO/IEC17799)の解説より(JIPDEC)」

この定義をERPシステムに照らすと、個別システムに比べERP「完全性」に優れた仕組みです。なぜなら、個別システムを寄せ集め、ダブルインプットが発生するとデータの乖離が生じる可能性があります。ERPは「自動仕訳」により、発生源のデータと会計データの整合性が担保されています。

ERPは画期的な仕組みです。しかし、面倒なこともあります。図の例では「購買発注」段階で、会計との連携を意識したデータ入力を行います。このため、入力項目が多くなります。そのため、事前に「購買部門」と「会計部門」での業務の整合やマスタデータの整備をする必要があります。

ERPを実現するには、部門間の業務連携を行い「個別最適」ではなく「全体最適」を実現する視点でシステム化を検討する必要があります。

全体最適」の実現をアートにたとえるならオーケストラです。それは優れた指揮者(プロジェクトマネジャー)の元で奏でる、弦楽器、木管楽器金管楽器、打楽器(各個別業務システム)が全体として調和をはたす芸術です。