叡智の三猿

〜森羅万象を情報セキュリティで捉える

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エンジニアのプレッシャーと情報漏洩の関係性

IT業界でエンジニアの雇用を支えているのは、SES(システムエンジニアリングサービス)企業です。

日本企業の雇用がメンバーシップ型からジョブ型に推移するなか、どの会社も「もっと、人を採用したい」と言うにも関わらず、専門性が無かったり、優秀でない人材はお断りの傾向が強くなりました。

大企業でもそうです。

でもそれは、変だと思います。

大企業は事業を運営するために、多くの人力を必要とします。そのためには、仕事はマニュアル化されているべきだと思います。

仕事がマニュアル化されていれば、採用する人材にあえて専門性や、それほどの優秀さは要求しなくていいはずです。

しかし、実際は大企業ほど、専門性のある人材に拘り、新卒の採用にあたっても学歴を気にしたりしてます。

ビジネス情報誌も、「大企業への就職に強い大学」と称し、そこには名だたる大学がランキングの上位に書かれてます。雑誌はあたかも難関大学に行かなければ、大企業に入社ができないような風潮を煽っているようです。

しかし、スペシャリストや高学歴でなければ、その会社で仕事ができないとすれば、会社の仕事はマニュアル化できていないこととなります。

それは、会社の内部統制が機能していないことであり、ダメな会社の典型です。

IT業界に絞っても、ITを利用するユーザの大企業も、システムの請負をメインにした Sier も正社員となるエンジニアの採用を抑えてます。

そこに労力を補填するのが、SES企業です。

SES企業に入社したエンジニアは、その会社で働くのではなく、客先と呼ばれるユーザー企業や請負系のIT企業に常駐します。

ITエンジニアの働き方

IT業界の仕事はとても幅広く、未経験でもチャレンジしやすい仕事もあれば、高度な知見が必要な仕事もあります。

情報セキュリティ分野の仕事は IT業界との関連が深く、作家の村上龍は「13歳のハローワーク」という本のなかで、「暗号作成者」という仕事を以下のように紹介しています。

今日の暗号作成者は、一般的に物理学や数学などの極めて高い知識を持ち、コンピュータ科学に関わっている。IT企業のエンジニアや研究者として働きながら、暗号システムやソフトを開発し、特許をとっている人も少なくはない。現在もっとも求められているのは、暗号解読者側が開発している量子コンピュータから情報を守る、量子暗号の完成だ。量子物理学の理論を使用したこのコンピュータと暗号は、暗号の進歩に終止符を打つものといわれている。
~「13歳のハローワーク(村上龍/幻冬舎)」

IT系の資格は数えきれないほどあります。ただ、IT業界で働くためにどうしても取らなければならない資格はありません。むしろ、エンジニアのキャリアアップに必要なのは、資格の取得よりも、実務経験によるノウハウといってもいいと思います。とにかく変化が激しい業界なので、日々の仕事を淡々とこなすだけではなく、自分で自分を高める努力が必要です。

ただ、切磋琢磨することの重要性はわかるのですが、このことが 客先に常駐する SESエンジニアにとって、過度な精神的な負担にならないかをわたしは心配します。

SES企業は、エンジニアに仕事を与えますが、残念ながら SES企業は、システムエンジニアリングサービスに必要な技術的な知見を伝授はしません。やるとしても、IT資格の取得支援が関の山でしょう。それさえやらないSES企業も多くあります。とにかく営業力を使って、ITプロジェクトにエンジニアを無理無理押し込み、客からクレームが来たら、別案件に押し込むことを繰り返すだけです。

SESエンジニアの立場で考えたら、自分たちはまともな会社員として扱われてなく、レンタル商品としてしか見られていなと思わないでしょうか!?

SESエンジニアが引き起こす、情報セキュリティインシデントとして、客先が管理する秘密情報を外部に持ち出す事例がむかしから結構あります。

たとえば、ITプロジェクトで策定された成果物を個人のUSBに保管して持ち帰るなどです。

SESエンジニアが、情報セキュリティインシデントを起こす背景には、単純ではない、IT業界の抱える構造的な闇がある気がします。

最近、多く発生しているのが エンジニアが保有する GitHub の個人アカウントに、お客様が管理するコードを保管するインシデントです。

もちろん、これは絶対にやってはいけないことです。

情報セキュリティインシデントが起きたら、会社の信用はがた落ちです。会社はあらゆる仕事よりも優先して、インシデント対応に努めなければなりません。

当然、当事者であるエンジニアも会社からの信用を失うでしょう。

ただ、わたしは、エンジニアが外部に秘密情報を持ち出すのは、入手した情報を売ることで私腹を肥やしたいのではなく、エンジニアとしてのスキルを高めたいからだと思ってます。

やってはいけないことをしてしまうのは、プレッシャーが要因になっていると思うのです。

それは、「お客様の期待に常に応え、成果を出し続けなければ、自分の居場所がなくなってしまう」と感じるプレッシャーです。