昨年の NHK紅白歌合戦 は、3組のK-POP ガールズグループが含まれることでなにかと注目を集めました。
その3組とは、TWICE、IVE、LE SSERAFIM です。
なかでも IVE や LE SSERAFIM は第四世代と呼ばれる 2019年以降にデビューしています。新陳代謝の激しいK-POP界を象徴していると思いました。
ただ、彼女たちは優れた美貌を持ち、優れたダンスパフォーマンスを披露していますが、わたしのなかで強く惹きつけられる要素を(いまのところは)感じてません(ファンの方がいたら、申し訳ありません・・・)。
わたしは彼女たちのパフォーマンスを見ながら、10年くらい前に活躍していたK-POPアイドルと比較します。頭のなかには、Apink、Red Velvet、Girl's Day、MAMAMOO、EXID・・・などを浮かべます。
あの頃のアイドルは確かに 元Apinkのソン・ナウン など美貌を誇るメンバーもいます。ただ、グループ全員が必ずしも美貌を売りにはしていませんでした。MAMAMOOのファサなど典型ですが、美貌よりも独自のライフスタイルを魅力的に見せるアーティストが多くいました。
ひとつのグループのなかにいろいろな個性がありました。そのゴチャマゼ感がグループの存在を魅力的に際立たせていた気がします。
それを思うと、わたしだけの感覚かもしれませんが、第四世代のグループは、皆が美しく、皆がかっこよくダンスを決めるのですが、あまり個性を感じないのです。人間らしさに乏しいのかもしれません。その感覚がぬぐえず、パフォーマンスが心に突き刺さってこないのです。
また、どうも第四世代のグループにあまり歌唱力を感じません。実際は歌が上手いのかもしれませんが、「もしかしたら、このパフォーマンスは口パク??」と、思う映像もよく見ます・・・。
K-POPアイドルに必要な3要素を 「美貌、ダンスパフォーマンス、歌唱力」と、するなら、いまの優先度は「美貌&ダンスパフォーマンス ≫ 歌唱力」に思えます。
アイドル界が歌唱力を重視しなくなっているのは、なんとなく理解できます。美貌や歌唱力は天分の要素があります。両者を兼ね備えた人が少ないのは当然です。芸能界では、アイドルの選抜は歌唱力より美貌が重視され、ライブは「口パク」によって、低い歌唱力を補えば観客を呼べると考えているのかもしれません。
K-POPでも第三世代までは、長い練習生生活が話題になったりしましたが、事務所が投資コストを抑えるため、第四世代の練習生期間はかなり短縮化されているようです。これも、歌唱力が重視されていない一端と見えます。
近い将来、人間が歌ってるように見せながら、実はコンピュータが歌っている光景が日常になるかもしれません。初音ミクで注目されたボーカロイドと人間の歌手の境界線がなくなる時代です。
テキストデータをコンピュータが発声する技術は音声合成と呼びますが、人間の話し言葉をテキストデータに書き起こす音声認識と合わせることで、コンピュータの人間歌手化は実現可能に思えます。もちろん、いまいまは、テキストから関数によって音声化する速度などが影響し、歌手の口の動きと加工された歌声が同期を取ることは難しいのですが・・・。
テキストデータから音声合成を使って歌手の歌を再生するには、楽譜に書かれた音の高低や長短を実現できるような付加情報をアドオンしていきます。
- テキスト+楽譜⇒コンテキスト(文脈)+歌詞の付加情報+楽譜の付加情報⇒音声波形
付加情報のなかに歌手の個性、息継ぎ、ヴィブラート、言葉の強弱、歌の喜怒哀楽といった要素を加味することで、コンピュータはより生身の人間の歌手らしく個性的かつ優れた歌唱力を発揮するでしょう。ディープラーニングによって開発されたAIにより、人間のような自然な音声合成を行えるようになっていきます。
アイドルがデジタル化していくのは不可逆的な時代の流れかもしれないと思いつつ、どこか味気無さを感じます。
また、本当に歌手の生身の音声が加工によって、聴衆が気づかない形で変えてしまうのは、いわゆる改ざんです。改ざんは、情報セキュリティの「完全性」を損ねます。
※完全性の意味はこちらをご参照ください。
www.three-wise-monkeys.com
わたし達は、文字や画像データについての改ざんがあることはある程度、認知していますが、音声の改ざんについてはあまり意識をしてません。現実に生身の歌手の歌声を歌唱力を高く見せるために加工するのであれば、その情報はタレントをマネジメントしている事務所が公表するべきでしょう。また、わたし達の情報セキュリティのリテラシーもより高める必要もあると思います。
ただ、今年に入って、世界から注目を集めている、K-POPグループの FIFTY FIFTY の曲を聴いたとき、わたしのなかで 大いに惹きつけるものを感じました。
彼女たちもアイドルなので確かに美貌を持ち合わせています。でも、4人のメンバーは、それぞれが異なる個性を持っているように見えます。事務所によって作られたアイドルというより、実態は知りませんが、気の合う4人が「何かの縁」があって、歌っているように感じます。
そして、何よりも感動したのは、彼女たちの生身の歌声の良さです。4人のハーモニーが見事に調和して、癒されます。
わたしのなかに醸成された、第四世代に対する認識(固定概念)を FIFTY FIFTY は、見事に裏切ってくれました。
FIFTY FIFTY が同世代の有名なアイドルグループと大きく異なるのは、所属事務所がマイナー(FIFTY FIFTY以外に所属タレントがいるのか知りません)であることと、韓国国内での知名度が低いままで TikTok を通じてグローバルな人気を得たことです。YGエンターテインメント所属の BLACKPINK がそうであったように、まずは国内での知名度をあげて、世界進出するというK-POPアイドルマーケティングのセオリーに反しています。
FIFTY FIFTY を聴きながら、世の中のすべてがデジタル化へと進む中で、アナログの良さを久しぶりに実感してます。
グローバル市場では、大手企業でなければ、競争に勝てないと言われます。でも、それは大手と同じ土俵で戦うからです。あえて、大手とは真逆の戦略をとることで、中小企業でも世界で戦える可能性を感じます。