最近はどの会社も「ジョブ型雇用」なる用語を好んで使います。
社員を雇用するにあたり、ジョブを特定することで、社員は専門職の仕事に集中しやすくなります。社員が自分のキャリアパスを描くにあたり「スキルを磨きやすい」「得意分野に集中しやすい」と思えるのが社員にとっての魅力とされます。
一方、企業側にとっての最大のメリットは「解雇しやすい」ことでしょう。いまは正社員として雇用された人を会社は簡単には解雇できません。たとえば、営業職で成果を発揮出来ない社員がいても、事務部門で仕事があれば、その社員を事務部門に配属替えを検討する必要があります。
ジョブ型雇用を説明する際、必ず引き合いに出るのが、メンバーシップ型雇用です。メンバーシップ型雇用は、いわゆる日本型雇用のイメージです。新卒採用が典型ですが、まず人を採用し、採用した人に与える仕事は、後から割り当てていくスタイルです。
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用を比較すると下記のようになります。
ジョブ型雇用の推進は企業と政府が一体となって行っているように見えます。
経団連は2022年の春季労使交渉に臨む経営側の方針として、年功型の賃金制度の課題では働き手の職務内容をあらかじめ明確に規定する「ジョブ型」について「導入・活用の検討が必要」と明記しました。
また、経済産業省は2019年の「変革の時代における人材競争力強化のための9つの提言~日本企業の経営競争力強化に向けて~」という資料にて、これから求められる雇用コミュニティのあり方を下記のような分かりやすいイメージでまとめています。
ジョブ型雇用が定着すると、社員はより自律的であることが求められるでしょう。
わたしはバブル真っただ中の入社だったので、就活のときはー
とりあえず、業界大手の会社に入っておけば、何とかなるだろう。
くらいの頭のなかでした。
そんな甘い考えは通用しない世の中になりました。
でも、そんな自立性をはぐくむような教育が日本でおこなわれているのか、はなはだ疑問です。
息子が大学受験真っ只中ということもあり、受験環境に関心があります。
どうみても、受験生の大学選びは偏差値を基準としていて、自分が将来やりたいことに目を向けているとは思えません。
たとえば、私立理系でブランド力のある早稲田大学を目指す人は、偏差値がいちばん高い、理工学部(基幹理工、創造理工、先進理工)を第一志望にするでしょうが、第二志望、第三志望として、教育学部や人間科学部を選択します。ただこれらの学部は学ぶことも異なり、社会人になってからの専門性も異なるのですが、受験生がそこに目を向けることはほぼありません。
わたしが受験生だった1984年と、今も受験生の思考回路が同じです。いや、大学全入時代に突入してこともあり、受験生は大学をブランドで選ぶ思考がより強くなっています。「Fラン大学」なんて言葉は、わたしの受験生時代にはありませんでした。
そもそも、学校も塾の先生も生徒が進む学部によって、将来何になるか、どのような専門性が身に就くのかを真剣に教えていません。彼らは生徒の将来より、ブランド大学に何人の合格実績を出すかに関心を持ってます。そのため、特に出来のいい生徒には、狂ったような日程感で、有名大学を併願させるような指導をします。そして、合格者を多数出すようにみせようとしています。
学校教育の現場で生徒の自立性を無視する指導が行われているにも関わらず、社会人になると自立性を求めるのは無理があるんじゃなかと思います。
ですので、よく言われる「欧米では主流なので、日本でも導入を進めるべき」とする「ジョブ型雇用」は、失敗に終わる予感です。
そういえば「ホワイトカラーエグゼンプション」という「ジョブ型雇用」と似たような「働き方改革」がありました。
もうこれは、死語なのでしょうか・・・。