叡智の三猿

〜森羅万象を情報セキュリティで捉える

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「スタートアップ:夢の扉」を観て思うこと

お仕事系のドラマ「スタートアップ:夢の扉(主演:ナム・ジュヒョク、ぺ・スジ)」は、いままで観た韓国ドラマのなかでも印象に残っています。

※Red VelvetのOST(future)が心地よくて特に好きです。
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韓国のお仕事系ドラマというと、連想するのが「財閥」です。かって日本にも「財閥」は存在していましたが、戦後にGHQによって解体させられました。一方、韓国の「財閥」は、経済面はもちろんですが、政治をも支配しているとされています。

そんな「財閥」に対して、多くの韓国ドラマでは、憧れ若しくは憎悪の対象として描いてます。日本では「六本木クラス」としてリメイクされている「梨泰院クラス」は、典型的ですね。

しかし「スタートアップ」は、財閥の影が見えません。

ナム・ジュヒョク演じるドサンは数学オリンピックで優勝した経歴を持つ優秀な学生です。仲間とともに会社を設立します。しかし、資金難でやりたい事業を見出すことができません。そこにぺ・スジ演じるダルミと出会います。ダルミはバイタリティ溢れる有能な女性ですが、高卒のため正社員になることができません。自分で起業することを決意します。

そんなダル三とドサンがタッグを組んだ新会社は、視覚障害者向けアプリの開発に着手します。この新会社は若き投資家を支援する「サンドボックス」で、支援を受けることが出来るのかが見どころです。

このドラマはITを取り上げているので、サンドボックス、ランサムウェア、バックアップなど情報セキュリティで馴染みの深い言葉も出てきます。

サンドボックス

サンドボックスは、隔離された領域でプログラムを実行することで、問題が発生してもほかのプログラムに悪影響を及ぼさないようにする仕組みです。公園の砂場で子どもがどんなに遊んでも安全な環境にあることからつけられています。

ドラマでは、才能はあるが資金や後ろ盾がない若き起業家たちを支援する施設の名前として登場します。

ランサムウェア

ランサムウェアは、コンピュータウイルスの一種です。ランサムウェアに感染するとパソコンに保存されているデータが暗号化され、使用できない状態になります。データを復号する対価として金銭を要求する不正プログラムです。

ドラマではダルミの会社のコンピュータがSSHに接続しようとして、ランサムウェアに感染し、3億ウォンの金銭を要求されます。

バックアップ

バックアップは、コンピューターが保管するデータやプログラムの破損や盗難などの事態に備えて、その複製を別のハードディスクなどに保存することです。

ドラマでは「ランサムウェア対策の基本は、バックアップを取得すること」というセリフが複数でてきます。ドサンはバックアップをしなかった開発者に注意します。

数学オリンピックで優勝するほど優秀なドサンであれば、大学を卒業したら「財閥」に入れたかもしれません。しかし、彼は仲間とスタートアップの会社で働く道を選びます。

もし、優秀な学生が大企業を選ぶのではなく、スタートアップを目指したら、イノベーションは加速すると思います。

しかし、日本では難関大学を卒業した優秀な学生が入社を希望するのは、日経225(東証上場銘柄の代表的な銘柄)のような大企業ばかりです。もちろん、わたしもそうでした(30年前ですが)。

確かに大企業は安定していて、小さな会社より報酬も高いでしょう。

しかし、一生懸命勉強して難関大学を勝ち取ったあとの夢としては小さいと思います。

有名なマズローの欲求5段階説では、人間は自己実現により幸福を最大化することが、一番上位の欲求と定義しています。この欲求は大企業に入ることで実現が可能になるものではありません。幸福の本質は自分がやりたいことが、シンプルにできることだと思います。

難関大学を卒業して大企業に入ることで満たされるのは、2段階目の安全欲求といったところでしょうか・・・。

マズローの欲求5段階説

確かに社会人としてのマナーを身に付けるために大企業に入社するのはありだと思います。でも、2~3年したらスタートアップを目指すような若い人がどれだけいるかが、この国の将来にかかっているように思います。

スタートアップで問題になるのが、報酬です。大企業がベンチャーを育てるために作ったスタートアップ企業でない限り、スタートアップの社員は厳しい報酬にあいます。安全・安心が確保できない生活に躊躇して、スタートアップに踏み切れないのは、理解できます。でも、国の将来を考えたらもったいないと思います。

国の問題は政治のチカラで解決できればいいのにと思います。