叡智の三猿

〜森羅万象を情報セキュリティで捉える

ワーケーションという死語

コロナ禍で旅行が困難になったとき「ワーケーション」がブームになると思われました。ワーケーションとは仕事と休暇を両立する新しい働き方ということで、Work と Vacation を組み合わせた造語です。テレワークを活用し、リゾート地や観光地等で余暇を楽しみつつ仕事を行います。

政府もワーケーションをこのようにPRしています。

  • 新型コロナウイルスの流行以降、感染リスクの低いキャンプ場等の自然志向の高まりとテレワークの定着が進み、ワーケーションの機運が高まっている。
  • ワーケーションを受け入れるための環境整備を行い、自然の中でクリエイティブに仕事を行うとともに、家族も安心して自然を満喫できる、国立公園等で「遊び、働く」という新たなライフスタイルを示す。
  • ワーケーション推進に伴うロングステイとエコツアーの利用促進により、withコロナ時代の地域経済の下支えや平日の観光地の活性化を目指す。

~引用:国立公園における最近の取組状況(ワーケーション及び上質なサービスを求める旅行者の誘客に向けた取り組み)環境省

毎年のヒットを予測する「日経トレンディ」では、2021年のヒットとして「ワーケーションの”聖地”・長野でテレワーク」を掲げていました。

「毎月この週は、長野にいますので」と、いって、絶景を堪能しながら都内のオフィスの会議にリモートで参加・・・そんな働き方が、すぐ現実になりそうだ。

しかし、わたしの知人でワーケーションを活用してバケーションしながら働いてる人を知りません。わたしの職場は100%テレワークなので、ワーケーションがしやすい環境です。そのため、実家に戻ってテレワークをしている人は大勢います。しかし、ワーケーションを活用しているという話はほぼ聞きません。オンライン飲み会もちょくちょくありますが、ワーケーションの話題になることはありません。密かにワーケーションしている人はいるかもしれません・・・。ただ、ワーケーションしていることを誰も積極的に発信しないので、おそらくワーケーションは日本では定着しないと思います。

ワーケーションするには、会社から貸与されたパソコンをリゾートに持ち出す必要があります。そこで気になるのが、ワーケーションによる情報セキュリティリスクです。

パソコンの盗難や置き忘れによる情報漏洩

遠くのリゾート地にパソコンを移動させ、宿や共有スペースに置いたら、その過程でパソコンを紛失し、情報漏洩につながるかもしれません。宿泊を目的とした移動は荷物がかさばります。そのため、パソコンに意識を集中させるのが難しく、その分、盗難や置き忘れの危険性は高いと思います。

ショルダーハックによる盗聴

ショルダーハックとは、攻撃者がターゲットの背中越しからパソコンを覗き見して、秘密情報をつかもうとする行為です。自分のIDとパスワードを入力する場面を背後からのぞき見されたら、あとから攻撃者は、不正ログインするかもしれません。不特定多数の人が訪れる観光地には、どんな人物がいるか分からず、ショルダーハックの危険性が増すと思います。

公衆Wi-Fi利用による情報漏洩

Wi-FiSSIDは文字列を設定できます。その機能を攻撃者は利用し公衆Wi-Fiの近くに本来のアクセスポイントとは別のアクセスポイント(Wi-Fiルーター)を設置し、本物と同じ名前のSSIDを付けて公開する可能性あります。そのアクセスポイントに間違って接続してしまうと、接続しているWebサイトや機器のアプリが攻撃者に丸見えになる可能性があります。

無線LANのアクセスポイントについては、こちらも見てください。
www.three-wise-monkeys.com

ワーケーションの問題はセキュリティリスクだけではありません。

そもそも、ワーケーションをする際、それは有給休暇なのか、通常勤務なのかがはっきりしません。通常勤務とした場合、ワーケーションはテレワークの一環です。しかし、テレワークが想定している勤務形態は、①在宅勤務 ②サテライトオフィス ③モバイルワーク です。実家に帰省してテレワークするのであれば、①在宅勤務 の扱いです。自宅近所のワークスペースやカフェを利用するなら ②サテライトオフィスです。また、出張に伴う電車内で仕事をするのであれば、③モバイルワークの扱いです。

しかし、遠い観光地で、遊びながら働く場合、それもテレワークとして括ってしまうのは無理があります。会社にワーケーションの申請を出して、許可を得れば堂々とにワーケーションして問題ないと思います。しかし、コロナ禍で不要不急の移動を自粛するよう言われている中では、ワーケーションの申請を出すのは躊躇します。

かといって、有給休暇の申請を出して、ワーケーションとして働くのはより問題です。多忙でなかなか取得できない有給休暇をワーケーションを理由として、取得したことにして、実は働くというのは、サービス残業の実態を隠蔽すると思います。

6月から政府は各国・地域での新型コロナウイルスの流行状況や、日本への流入状況などのリスク評価やワクチンの有効性を踏まえて水際措置を大きく緩和しました。1日あたりの入国者数上限は1万人から2万人に引き上げられ、上限廃止の案も出ています。

観光が活気を取り戻せば、観光地の宿はワーケーションに期待せずとも観光客は押し寄せるでしょう。

ワーケーションが死語になる日は間近です。