叡智の三猿

〜森羅万象を情報セキュリティで捉える

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「知っているワイフ」の「ビハインド」を見て思ったこと

ネット上の誹謗・中傷・デマ

IPAは「情報セキュリティ10大脅威 」を毎年発信しています。この2021年版では、個人における脅威の第3位に「ネット上の誹謗・中傷・デマ」がランクインしました。昨年は7位でしたので、急浮上といえます。これは、昨年に起きたプロレスラー、木村花さんへの誹謗・中傷による自殺や、新型コロナで感染者やそのご家族の方々、医療従事者やそのご家族などへの誹謗・中傷、偏見や差別などの事案が発生しているからです。
www.ipa.go.jp

プロバイダ責任制限法

被害者がネットでの誹謗・中傷を行う発信者を特定しようとした場合「プロバイダ責任制限法」の定めにのっとる必要があります。

「プロバイダ責任制限法」はふたつを規定しています。

  1. 損害賠償責任の制限:誹謗・中傷の書き込みなど、他人の権利を侵害する情報流通に関して、被害者・発信者からの損害賠償請求に対して、プロバイダーが適切な対応が取れるような免責事項を規定しています。
  2. 発信者情報の開示:被害者が、プロバイダーに対して発信者情報の開示請求を行う要件を規定しています。

プロバイダ責任制限法による開示請求
被害者にとって重要なのは加害者の接続したIPアドレスと契約しているインターネットサービスプロバイダー(ISP)の情報を割り出すことです。

被害者は加害者が書き込んだ誹謗・中傷の記録から加害者のIPアドレス(インターネット上の住所)を入手する必要があります。その為には、誹謗・中傷された内容を保存しておく必要があります。IPアドレス情報から加害者が使ったインターネットサービスプロバイダーを割り出します。そして、インターネットサービスプロバイダーに対して加害者の個人情報の開示請求をすることで加害者を特定します。すなわち、裁判の手続きが2回必要となり煩雑で時間がかかります。

開示請求
以下の記事は、投稿者情報の開示手続きを定める「プロバイダー責任制限法」の改正案についてです。仮処分や訴訟によらない「非訟手続」を創設し、1回の手続きで裁判所が開示を判断できるという内容となっています。
www.sankei.com

ただ、発信者情報の開示は「表現の自由」やプライバシーとの関係で慎重であるべきという意見も強くあります。

知っているワイフ

ところで、フジテレビではドラマ「知っているワイフ」を放映しています。
www.fujitv.co.jp
このドラマは韓国がオリジナルです。日本版が放映される記事を読んだとき、気になったことがあります。

それは「ビハインド」というこのドラマに登場するインターネット掲示板にまつわる話です。

韓国版では、銀行員のソ・ウジン ( ハン・ジミン )が、「ビハインド」に、誹謗・中傷を書かれます。誹謗・中傷は多数のコメントによって炎上し、職場の同僚の写真まで掲載されます。これに激怒したウジンが、発信者の特定を求め、警察に行きます。そして、警察はその日のうちに、IPアドレスから発信者を特定し、ウジンに電話で伝えるシーンがあります。

果たしてこのシーンを日本版ではどのように描くのかに興味を持ちました。該当するシーンの日本版は2月18日に放映されました。

日本版では、銀行員の剣崎澪( 広瀬アリス )が、「ビハインド」に、誹謗・中傷を書かれます。誹謗・中傷は多数のコメントによって炎上し、職場の同僚の写真まで掲載されます。これに激怒した澪が、発信者の特定を求め、民間の調査会社に行きます。そして、調査会社は数日後、IPアドレスから発信者を特定し、澪に電話で伝えるシーンとなりました。

ストーリーの根幹は変わらないのですが、韓国では発信者の特定を警察に依頼しているのに対して、日本では民間の調査会社に依頼しています。また、韓国では発信者の特定を当日中に行っているのに対して、日本では数日かかっています。

このあたりにお国柄の違いがあらわれて面白いと思いました。