前回のブログ(「梨泰院クラス」にハマりました!)では「性善説」に基づく経営理論として、TOC(制約条件の理論)について書きました。
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制約条件と類似する言葉に前提条件があります。どちらもITの世界では馴染みのある言葉です。
制約条件と前提条件の違いについて書きます。
ある夫婦を例にします。
夫はサラリーマンです。会社から毎月、給与をもらっています。妻は専業主婦です。家計の管理は妻が行っています。妻は息子の教育費、食費、住宅ローン、通信費、光熱費、美容・服飾費・・・の管理を行い、夫には月3万円のおこずかいを与えています。
夫は月3万円のおこずかいで、会社でのランチ代、飲み会、散髪・・・をまかなっています。
このとき、夫が妻からもらう、月3万円のおこずかいを制約条件と捉えるか、前提条件と捉えるかで夫の頭のなかの思考が異なります。
制約条件の場合
夫が妻からもらう月3万円のおこずかいを制約条件とします。そのとき、夫の頭のなかは次のように考えています。
月3万円で1ヶ月を過ごすのは、しんどいな。本当はもっと美味しい昼メシを食べたいし、同僚との付き合いもよくしたいし、最近出てきたお腹を引っ込めるためにフィットネスもしたいな。
夫にとって月3万円のおこずかいは、自分が欲求していることを叶えるには、低い金額なのです。
そこで夫は月3万円の制約条件を解放するべく、自らブログを開設します。そしてアフィリエイトを稼ぐことを考えます。アフィリエイトであれば、本業の空いた時間、ちょっとお小遣いを稼ぎたいと思っている人には、手軽な副業です。月に数千円でも稼ぐことができれば、月3万の制約条件から解放されます。夫の消費欲求をより満たす活動が期待出来ます。
また、副業をすれば、家計の急な出費・・・たとえば知人の冠婚葬祭等が発生したとき、慌てることなく、家族に転用できるかもしれません。副業は夫にとっても妻にとってもウィンウィン(Win-Win)のビジネスです。
制約条件は解放することに価値があります。制約条件を解放すると、より高い次元の欲求を満たす可能性があります。それは利害関係者のウィンウィン(Win-Win)をもたらします。全ての利害関係者が最適と思える選択は、全体最適化の発想です。これを成し遂げるには、性善説(生まれつき人が持っている性質は善である)を信じることが必要です。
前提条件の場合
夫が妻からもらう月3万円のおこずかいを前提条件とします。そのとき、夫の頭のなかは次のように考えています。
最近、息子は塾に通いはじめ、学費もかかってるし、コロナ禍で賞与が期待出来ないし・・・妻はちゃんと月3万円のおこずかいをくれるかな・・・。月3万はもらわないと、最低限のサラリーマンとしての生活をやっていけないよ。
夫は月3万円のおこずかいがもらえなくなる可能性を脅威と捉えています。
そこで脅威が発生するリスクを減らすため、リスクコントロールを検討します。
リスクコントロールには以下の種類があります。
- リスク低減:発生頻度や影響度を下げるための対策を講じること。
- リスク回避:発生要因そのものを排除すること。
- リスク移転:リスクを他者(社)に転嫁すること。
- リスク保有:特段の対策を実施せず、現状のリスクを受け入れること。
夫は考え「リスク低減」を選択します。夫は月3万円のおこずかいを減らされる要因として、自らの給料が減ることを想定します。そのため、夫は日常生活を管理し、遅刻や欠勤を発生させないようにします。コロナ禍で目減りする可能性のある賞与を補填するため、仕事に率先して取り組み、残業申請・承認を得ることで給与を維持する方策に出ます。
また、妻の支出が気になります。妻がママ友のランチ会に頻繁に出かけると、夫へのおこずかいが減る可能性を考えます。「最近、ランチ会、多すぎじゃないか?」と、妻に牽制を働かせます。
もし、夫が「リスク低減」でなく「リスク回避」を選択したら、家計の管理を夫自身が行います。そうすれば、夫自身のおこずかいを最優先で捻出出来ます。
前提条件は遵守することに価値があります。前提条件が破壊するのは脅威です。保たれている秩序が崩壊します。前提条件を守るため、リスクコントロールを行います。前提条件は特定された範囲を守るためにあります。これは、個別最適化の発想です。利害関係者を信頼しきれていないことから生じる発想であり、性悪説(生まれつき人が持っている性質は悪である)に基づいていると考えられます。