電子書籍は普及しているのか❓
AmazonがKindle Paperwhiteを日本で出荷したのは2012年です。昔から日本は電子書籍が普及しない国として知られますが、近年の出版市場における電子書籍の勢いはどうなんでしょうか?
出版業界の調査・研究機関である全国出版協会・出版科学研究所は、2020年1月に出版市場規模を発表しました。
(引用:公益社団法人 全国出版協会・出版科学研究所のNEWS RELEASE)
この棒グラフの推移を見ると、出版市場全体は緩やかな下落傾向にあります。一方「電子書籍」は緩やかな上昇傾向を示しています。ただ、電子書籍の市場は出版市場全体の5分の1程度ですので、大きな普及はしていないように思えます。
そして「電子書籍」のなかでも「電子コミック」の増加が大きく、電子書籍の市場のうち、なんと8割以上がコミックで占められているようです。
電子書籍で「電子コミック」が広がっている要因は、コミックを読む層と電子書籍との相性がいいというほか、製作側の事情もあるようです。
電子書籍リーダーが扱う本は、EPUBもしくはPDFです。EPUBは画面の大きさに合わせて文字表示を調整する「リフロー処理」が特徴です。
EPUB形式は製作に手間がかかります。文字が中心の本は、PDFよりEPUBが読みやすいのですが、製作が容易なのはPDFです。
コミックの場合、紙に印刷する情報のレイアウトを維持したPDFで、読むのに支障がありません。ですので「電子コミック」は文字が主体の書籍に比べて、コストメリットがあります。
そうすると「電子コミック」を除いて、出版市場規模を見ると、電子書籍はあまり浸透していないように思います。
わたしが電子書籍を購入する基準
わたしはそれなりに「電子書籍(kindle)」を愛用しています。おそらく5冊、本を購入したら1冊は電子書籍という感覚です。
わたしの場合、電子書籍を購入する基準は明確です。
- 直ぐに情報を獲得したい
- 価格が1000円未満
この2つが ”and条件” で重なった場合のみ、電子書籍を購入します。それ以外は紙の本を手にいれます。ちなみに紙の本は新刊書とは限りません。中古本や図書館の本を含みます。
Amazonで電子書籍を購入する際、すぐに購入はしません。まずはサンプルをKindleにダウンロードして、それを読んで気に入ったら購入手続きをします。サンプルをダウンロードしても5割以上の確率で購入には至りません。
電子書籍で読むのは実用書や論述書がほとんどです。
文学作品は時間のあるときにじっくり読みたい派です。電子書籍で急いで手に入れようとは思いません。それに文学作品は表紙のデザイン、タイトルの書体、カバーの手触り感に独特の風味があります。やっぱり、味気ない電子より紙に魅力を感じます。
電子書籍で購入した実用書や論述書を全部読み切る発想はありません。関心ある情報を獲得したら、それで読み捨てます。ですので「電子書籍」で、一冊の本に1000円以上かける気にはなれないのです。
自分の仕事に関わる本は、内容をじっくり見て購入を決めたいと思います。もし、本に書かれていることが知っている内容ばかりであれば、お金を出して本を買う必要はありません。ですので、電子書籍の無料サンプルでは情報が足りません。本屋さんに行って実物をパラパラと立ち読みします。そして、購入の意思決定をします。
幸いわたしの家から徒歩10分以内に、大型書店が3軒あります。古本屋(ブックオフ)も1軒あり、15分くらい歩けば市立図書館があります。立ち読みの苦労はありません。特にコロナで在宅勤務が続いているわが身にとっては、勤務終了後、書店にふらりと立ち読みしにいくのは癒しであり、エクササイズでもあります❗️
全般的に日本は本屋さんに恵まれています。それも、電子書籍が普及しない一因かもしれません。
著者という権威の価値
電子書籍は紙の本と競合しない気がします。わたしにとって、紙の本と電子書籍は棲み分けという表現が適切です。むしろ電子書籍と競合するのは、ネットに溢れた情報です。
ネットに溢れた情報はー
- 直ぐに情報を獲得できる
- 価格がゼロ円
です。
究極の電子書籍は「ネットで拾う情報」だと思います。
お金を出して買う電子書籍と、ゼロ円のネット情報の違いは著者の存在価値です。本の書き手を示す著者は、英語で Author(オーサー) と言います。この単語は権威を示す Authority(オーソリティー) と関連が深い言葉です。電子書籍は、紙の本と同様に著者という権威があります。それが匿名性の高い「ネットから拾う情報」との違いだと思います。
たとえば ”プロ野球 問題点” で、ネット検索すると多くの匿名な情報をタダで得られます。しかし「野村克也」という「権威」が書いた「プロ野球の問題を書いた本」ならば、お金を出して買う価値がある「電子書籍」ということです。