叡智の三猿

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この指とまれ!

個人情報漏洩の社会問題化

JPCERT/CC は国内のセキュリティインシデントを受付するとともに、対応の支援、発生状況の把握、手口の分析、再発防止のための対策の検討や助言などを、技術的な立場から行なっています。

JPCERT/CC の「セキュリティインシデント年表」を見ると、1999年に「京都府宇治市で21万人の住民基本台帳データ漏洩、インターネット上で販売される」事案が掲載されています。これが「個人情報の漏洩」が社会問題化したはじめの出来事のようです。2000年になると、IT革命の幕開けとともに、会社のホームページから顧客情報の漏洩が相次ぎ、わたし達はネットの便利さを享受するとともに「個人情報」の取り扱いに対してセンシティブな反応を示すようになりました。
www.jpcert.or.jp
まえに、町内会活動をしていたとき、ひとり暮らしをしている老人の孤独死が話題となりました。であれば、町内会で「独居老人」の情報を集めて、周囲で気にかけようという提案がありました。しかし「個人情報」の観点から、それは問題だという意見が出て、結局ボツとなりました。

学校の卒業アルバムに当然のように掲載されていた「住所録」はいつの間にか掲載されなくなりました。

日本初のSNS

しかし、同級生が学校を卒業したあと、交流を持ちたいと考えるのは自然なことです。インターネットはそういうニーズをSNSで組みとりました。

「同窓会」のSNSは、Facebookでもmixiでもありません。

この指とまれ!」というサービスです。これこそ日本初のSNSかもしれません。「この指とまれ!」は、1997年に同窓会サイトとして立ち上がります。そして、IT革命と個人情報保護の時流にのり、急激に会員を増やしました。当初はプロジェクトとして発足した団体は、2000年に「株式会社ゆびとま」として法人化されました。

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現在は「ゆびとま」として運営してます
この指とまれ!」は同窓会のやり方を変えるきっかけを与えました。

それまでの同窓会は、卒業名簿を元に幹事が電話やハガキを使って、同窓生に出欠連絡を取りました。今でもこの形態の同窓会は行われていますが、同窓会に参加する人のなかには、義理で参加する人も多くいます。また、卒業してから引越等で住所が変わると、幹事から連絡がつかなくなり、そういう人は同窓会に参加したくても、きっかけを掴めない状況となります。

この指とまれ!」は、個人の意思で電子的媒体で名簿に登録します。そのため「電子名簿に登録している=同窓会への参加意思がある」とみなせます。メッセージ機能もあるので、住所が変わっても連絡を取ることが出来ます。

同窓会の幹事の労力は大きく減ります。

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ゆびとま」による同窓会の革命
この指とまれ!」は新しい同窓会のカタチとしてマスメディアでも取り上げられました。

相次ぐ不祥事

しかし、このサービスは2006年から経営統合の失敗、CEOの逮捕、事業売却、システム障害と不祥事が相次ぎます。利用者の信頼は地に落ちました。

いまでもサービスはありますが、2000年代初頭の勢いを取り戻すには至っていません。

2006年

  • 10月:インデックスHD、株式会社ゆびとまを子会社化しSNS事業を強化
  • 11月:インデックスHD、株式会社ゆびとま子会社化に関する基本合意を解消

2007年

2009年

ゆびとまのサービスは「目の付け所」は良かったと思います。しかし、サービスを提供する基盤となる情報セキュリティの水準コンプライアンス体制が追いついてませんでした。そういう混沌とした時代であったともいえます。


情報セキュリティとは

  • 情報セキュリティとは、情報の機密性(Confidentiality)、完全性(Integrity)、可用性(Availability)を維持することを指します。この3要素の頭文字をとって、情報セキュリティの「CIA」といいます。
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情報セキュリティのCIA(3要素)

また、わたしは「この指とまれ!」が廃れたのは、情報セキュリティの脆弱性に加え、同窓会のきっかけを作る以上の役割が存在しなかったことあると思います。卒業した学校の卒業年度と個人情報を登録することで、同じ学校の同窓生を発見したり、発見されたりしてお互いにメッセージを送受信することは出来ますが、それ以上の機能はありません。

不祥事に加え、サービスとしての機能要件も足りないことで、ゆびとまの後に登場するmixiに利用者を奪われたと思います。