SESの事業運営
いまから2年くらい前、わたしはある会社で、小さなSES(システムエンジニアリングサービス)の事業を運営していました。事業規模は社員が15名、パートナーが15名程度。年間売上高は3億くらいでした。
事業の生産性を示す指標のひとつに「1人当たりの売上高」があります。
それで計算すると、(売上3億円)÷(社員15名)ですので、社員1人あたりの年間売上高は2,000万円です。
エンジニアは営業担当の2名を除くと全部で28名いました。そうすると(売上3億円)÷(年間12ヶ月)÷(エンジニア28名)ですので、エンジニアの人月単価は89万円でした。
SESの営業を経験した方から見れば、89万という単価は高額と感じるかもしれません。それは主要なお客様がエンドユーザ企業だったからです。SESビジネスは予算を持っているエンドユーザの配下で、プライム→2次受け→3次受けと、階層が下にいくにつれ、人月単価が下がる宿命です。そのため、同じ能力のエンジニアでも上位の階層と下位の階層にいるのでは、人月単価が大きく変わります。エンドユーザ企業をお客様として抱えていたことから、小さい事業ながらも利益が出ていたのだと思います。
明るいミライから新3Kへ
SESの事業運営にあたっての障害は利益より、エンジニアの採用が出来ないことでした。
わたしが社会人になったのは1990年。当時、3Kという言葉が話題になっていました。
- きついのK
- きたないのK
- 危険のK
これらは建設現場等での肉体労働を意識して言われていました。当時、情報処理のエンジニアは、コンピュータを扱うクリーンで明るいミライを感じる職業でした。あれから20年、IT業界のイメージはどんどんどんどん悪くなりました。そして、新 3Kという言葉が生まれました。
- 暗いのK
- 帰れないのK
- 心を病むのK
新3Kは3Kほど定義ははっきりしていないのですが、IT業界は新3Kの象徴になってしまいました。
中高生が思い描く将来
わたしはエンジニアを確保すべく、リクナビNEXTやエンジニアtype等に広告を掲載し、求職者ひとりひとりのWeb経歴書を見て、ダイレクトメールを打ち、応募を待ちました。しかし、人は思うように集まりませんでした。「キャリア採用が難しいのであれば、新卒をとろう!」と、ITの専門学校にも行きましたが、担当者の反応はイマイチでした。事業が小さく特異な技術がある訳でもないので、あまり相手にしてくれないんだと拗ねました。ただ、専門学校の担当者の言葉はいまも印象にあります。
(担当者)「今の若い人は就職に対する意識が低いんですよ」
(わたし)「そうなんですか?」
「無理に正社員にならなくともカラオケボックスとかでアルバイトしたら、初任給くらいは貰えますからね」
「それだと親も不安じゃないですか?」
「それが無理に働いて精神を病んだりするよりは、いつでも辞められるアルバイトの方がいいと考える親御さんも多いんですよ」
バブル時代の感覚を持っているわたしには、衝撃的な話でした。
ソニー生命保険株式会社による「中高生が思い描く将来についての意識調査2019」で、将来なりたい職業ベスト3(男子)はこうです。
ITエンジニアは4位に甘んじています。専門学校の担当者の話を裏付けるような結果だと思います。AIが注目されている昨今ですが、バブルの頃のような明るいミライをITエンジニアには感じないのでしょうか。