叡智の三猿

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溢れる「ダークパターン」

スマホアプリや Webサイトを使うとき、利用規約やプライバシーポリシーをきっちり読む人はどのくらいいるのだろう?

契約に関わる文章は長いうえに、無味乾燥で、真剣に読もうとしても、言葉が頭に入ってこない感じがします。

そんな、無味乾燥な規約でも、アプリの運営側は、利用者に規約への同意を求める必要があります。

アプリの仕組みで利用者に対して、規約のページに強制的に飛ばし、利用者が長い文章をスクロールして、規約の最後にいくと ボタンを表示させたりします。

サイトによっては、 が並べられ、デフォルトでは、 が入っていることも多いと思います。運営者は利用者に意識して、 側に を入れさせることで、規約に同意したことを証明させたい意図があります。

利用規約には個人情報の取り扱いが明記されています。個人情報は、利用目的を明確にするという原則があります。個人情報の収集目的を利用者に明確にアナウンスして、データ利用は収集目的に合致するべきとする法の支配があります。

ですので、アプリやWebサイトの運営者は、利用者に規約への同意を促すため、画面上のUI(ユーザーインターフェイス)の工夫をしています。

ところで、アプリやWebサイトのUIで、好ましくない事例として「ダークパターン」というのがあります。

「ダークパターン」とは、アプリや Webサイト のUIによって、運営者は利益を得るものの、利用者にとっては望ましくない決定に誘導する手法の全般を指します。

たとえば、サブスクはパッと利用が出来て、辞めたいときはいつでも辞められるのが特徴ですが、解約ページがWebサイトの分かりにくい場所にあったりすると、解約したくてもなかなか出来ないことが考えられます。そうすると、大してサブスクを利用してないのに、無駄な月額料金を払い続けることになります。

下記は、Amazonのあるミネラルウォーターの販売ページです。定期便と通常の注文が並列で表記されています。ただ、このページでは、定期便がデフォルトで選択されています。一回だけの注文にする場合は、デフォルトでない方を意識して選択する必要があります。もちろん、意識して定期便を選ぶ利用者もいるとは思いますが、多くの利用者は一回だけの注文にしたいと考えるはずです。これだと、一回だけの注文にしているつもりが、気づかず定期便を選んでしまうかもしれません。

こうしたダークパターンの事例は、金銭的な損得に関わる アプリやWebサイトの UI で語られることが多いのですが、個人情報についても類似したパターンがあります。

お金と同様、個人情報も運営者にとっては、宝物です。

下記はSHEINという世界最大のアパレル通販のアプリです。アプリをダウンロードして新規で開くとはじめにこのような画面が出ました。

この画面では、利用者の個人情報を登録するよう、促しています。登録するためのエサは、クーポンです。

実際はこの段階で、利用者の個人情報を登録する必要はありません。

この画面では、普通に右上の を押せばいいのです。なぜなら、個人情報を登録するタイミングは、欲しい商品を購入する時点でいいからです。クーポンもそのタイミングで入手できます。わたし達が一般のお店で買い物するとき、入店したタイミングでポイントカードやアプリに登録する人は少ないでしょう。普通はレジで買い物をする段階で登録するハズです。

しかし、このアプリをはじめて利用する人にとっては、そもそもアプリの知識がありません。表示された画面から利用者の登録をしないと、お得なクーポンを入手できないと思うかもしれません。いわばアプリが、緊急性を伝えるようなメッセージを出すことによって、利用者が焦って、個人情報を登録するように促しているともいえます。

このやり方は、期限付きのマイナポイントの付与をエサとして、マイナンバーカード申請を早めさせる総務省の方法にそっくりです。

ダークパターン的なUIは、いまや多くのアプリやWebサイトで見られます。下記の記事を見ると、ダークパターンでないUIの方が珍しいかもしれません。

国内で配信されているショッピングやSNS、ゲームなどの主要アプリの9割に、消費者を不利益な選択に誘導する画面デザインが採用されていることが、東京工業大の調査で分かった。「ダークパターン」と呼ばれ、意図しない商品を購入させられるなどの被害が起きている。欧米で規制の動きが広がっているが、国内の対応は遅れている。
~読売新聞オンライン・2023/07/30

UIを包含する言葉にUX(ユーザーエクスペリエンス)があります。

UXは、利用者が商品やサービスを通じて得られる体験を指します。UXが高いということは、アプリやWebサイトを使ったことで、喜びや感動を得ることです。

ダークパターンのUIから、決して高いUXは得られないでしょう。

逆にいえば、世の中に溢れている アプリやWebサイト の多くがダークパターンであるなら、ダークパターンではない、UIとUXを 開発できれば、日の目を見るチャンスはまだまだあるのかもしれません。

はじめに書いたように個人情報を取り扱うアプリやWebサイトは、利用規約への同意が法による縛りで行われています。

企業が利益の最大化に走りすぎると、個人の選択する権利を狭めてしまいます。

それは回避するべきです。

ですので、世にはびこる「ダークパターン」もまた、法による規制の対象にするべきなんだろうと思います。