今年から高校で本格的に「情報」の授業がはじまりました。そして、2年後に共通テスト「情報Ⅰ」が開始します。
大学入試センターのホームページには、試作となる試験問題が掲載されたので見てみました。
ざっと見たところ、直接「情報セキュリティ」に関わる設問は無かったようです。情報セキュリティの一丁目一番地は、機密性を維持するための「暗号技術」に関わる内容だと思いますが、そこに言及した問題は見当たりませんでした。
「情報セキュリティ」は「情報」におけるいち分野ですが、通信ネットワークやプログラミングに比べるとマイナーな立ち位置だと思います。
試作問題のなかで、いちばん「情報セキュリティ」に関係が深いと思うのは、下記の問題です。これは情報セキュリティと裏表の関係にある、情報倫理・情報リテラシーの分野です。
情報社会の中で日常的に利用される SNS やメール、Web サイトなどの利用時の注意点や情報の信ぴょう性の判断について理解しているかを問う内容となっています。
レベルとしては、常識力で解ける平易なものです。サービス問題といえるでしょう。
設問 a は、SNS やメール、Web サイトを利用する際の注意についてですが、正解は①と④です。
- 信頼関係のある相手と SNS やメールでやり取りする際も,悪意を持った者がなりすましている可能性を頭に入れておくべきである。
- 一般によく知られているアニメのキャラクターの画像を SNS のプロフィール画像に許可なく掲載することは,著作権の侵害にあたる。
著作権については、こちらも参照してみてください。
設問 b は、インターネット上の情報の信ぴょう性を確かめる方法についてですが、正解は③です。
- 特定の Web サイトだけでなく,書籍や複数の Web サイトなどを確認し,比較・検証してから判断する。
インターネットからは多くの情報を得ることが出来ます。しかし、多くの情報のなかから、信頼性のある情報を収集するのは容易ではありません。
- 意図的に誰かを陥れるための歪められた情報
- 発信源が特定されず信ぴょう性に乏しい情報
- 古くていまの時代とは合わない情報
信頼性のある情報を得るには、情報の発信源や発信された時期など、確認していくことも必要です。
ところで、試作問題に出てくる SNS という言葉は、すっかりわたしたちの生活で浸透しています。しかし、この言葉が使われてから実際には10年あまりしか経過していません。
SNSが浸透するきっかけになったのは、2010年に公開されたマーク・ザッカーバーグの伝記映画といえる「ソーシャル・ネットワーク」でしょう。
ですので、試作問題にあるような、SNSによる情報発信や獲得に於いて、注意するべき事柄も、ここ10年あまりで顕在化したことです。
そしてこの先10年、SNS が日常的に活用されているかと問われると、とは、断言できません。
SNSの運営企業を代表するメタ社(Facebook、Instagram)は、11月に会社全体の13%にあたる11,000人以上の社員を解雇すると発表しました。イーロン・マスクの強引な経営手法が話題のツイッター社は、社員7500人のうち半数を解雇する発表で、世界に強烈なインパクトを与えました。
メタもツイッターも、闇を抱えている会社です。
メタ社の設立は2004年、ツイッターは2006年です。設立したときは、夢と希望に満ち溢れたスタートアップだったと思います。
かって、会社の寿命は30年と言われてました。いまは20年と言われます。そう考えると、メタもツイッターもうまく新陳代謝ができず、終焉を迎えるかもしれません。それを契機として、SNSそのものが廃れる可能性も充分想像できます。
そう考えると、いまの流行を扱う「情報」という学問は、普遍的に知識が体系化された科目でなく、表層的な知識つみこみ型の科目かもしれません。英語や数学などの主要5教科は、10年前の試験問題も過去問として、その問題を解く価値がありますが、情報は問題が陳腐化してしまう可能性が高いと思います。
学習するための教科書や参考書には目次があります。目次こそ、知識を体系化した具体的なページなのですが、情報の目次は何なのかを考えたくなりました。