叡智の三猿

~情報セキュリティで森羅万象を捉える~

テンペスト

2012年、ボブ・ディランは「テンペスト」というアルバムを発表しました。

今までディランが発表したオリジナルの最新は2020年にリリースした「ラフ&ロウディ・ウェイズ」です。その前は「トリプリケート」という、古典的なアメリカの歌のカバーアルバムを出しています。「テンペスト」は「ラフ&ロウディ・ウェイズ」より8年前のオリジナル作品です。

このディランのアルバム名が「テンペスト」と知ったとき、わたしは「電磁波」をイメージしました。ディランは1974年に「プラネット・ウェイヴズ」というアルバムをリリースしているのですが、これを日本語に訳すと、惑星波・・・それと似た語感です。

情報セキュリティの世界で「テンペスト」は有名な言葉です。テンペスト」はディスプレイなどの電子機器から放射される電磁波を解析することで、何が表示されているかを遠隔から確認する技術を指します。これを用いて不正に情報を搾取することを「テンペスト攻撃」と呼びます。

テンペスト攻撃」の対策としては、電磁波を抑えた機器を使うことです。例えばディスプレイでもCRT(ブラウン管)より液晶を使用する方が有効な対策です。電磁波を遮断するシールドでパソコンを囲う対策も考えられます。

この前提で、ディランの「テンペスト」を聞きました。

テンペスト」はアルバムのタイトルですが、そのアルバムの一曲に「テンペスト」という歌が収められています。

この歌・・・なんと1曲が14分という超・大作なのです。

1912年に沈没した豪華客船、タイタニックの悲劇を描いた作品です。場面描写がリアルな叙事詩です。

この曲で面白いのは歌詞にレオという人物が登場することです。これは映画「タイタニック」の主人公を演じたレオナルド・デカプリオを指しているのでしょう。主人公ジャックを演じたディカプリオの名を有名にし、「レオ様ブーム」の社会現象を生みました。先週の金曜ロードショーでこの超・大作を観た人も多いと思います。いまのレオ様は、お腹もぽっこりしている写真がSNSに出回ったりし、この映画を観ると、年月の残酷さを感じたりもします。


シリアスな場面に、レオ様を登場させ、ちょっと笑えるようにするところが、ディランぽいと思いました。

Leo took his sketchbook
(レオは、スケッチ ブックを取った)
He was often so inclined
(彼は何度も描きたかった)
He closed his eyes and painted
(目を閉じ、描く)
The scenery in his mind
(彼の心に風景が浮かぶ)
~「テンペストボブ・ディラン)」より

さて、この「テンペスト」は電磁波とはあまり関係がなさそうです。

テンペスト(tempest)」意味は、電磁波ではなく、嵐なのです。一般的に嵐は、stormが使われます。tempestは、嵐を比喩的に使う場合に用いるようです。英和辞典には掲載されていますが、息子が大学受験用に持っている「鉄緑会東大英単語熟語鉄壁」を見ても、tempestという英単語は掲載されていません。ですので、受験英語に於いて、tempestはマイナーな英単語だと思います。


タイタニックが沈没した日の夜は嵐ではありません。嵐だったのは船が氷山に衝突してから、沈没する1時間30分余りの船内の状況です。タイタニックはSOSの遭難信号をはじめて発信させた遭難船といわれています。

このとき、無線士は周りの航海している船が、SOS信号を傍受して助けてくれることを電磁波に込めたことでしょう。