傘がない
井上陽水の古典的名曲「傘がない」を聴きました。
テレビでは我が国の将来の問題を
誰かが深刻な顔をしてしゃべってる
だけども問題は今日の雨 傘がない
(「傘がない(井上陽水)」より)
暗さの極北のような歌ですが、いまの時代にあってそうな気もします。
この曲が出されたのは1972年。井上陽水のデビューアルバム「断絶」からのシングルカットです。この年、連合赤軍による「浅間山荘事件」が世間を騒がせました。また、田中角栄の成果により「日中国交回復」が実現し、パンダが来日しました。わたしは小学校2年生でしたが、こども心にこの年以降、日本は大きく変わったと感じました。それは「浅間山荘事件」に象徴される悩み深き時代から、パンダコパンダのカラフルな時代への変化です。
わたしがこの変化を感じることが出来たのは、家のテレビが白黒からカラーに変わったことが影響していると思います。
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そして2020年。この世界的な感染症の流行は歴史的に日本そして世界の大きな節目になるかもしれません。しかし、感染の脅威を間近にしながらも、わたしが気にするのは、どのドラッグストアにもマスクがないことや、Zoom会議の効率性の限界といった身近な問題です。これが「傘がない」の世界観とリンクしているように思います。
沈没する船で時刻合わせ
そういえば、むかし観た映画「タイタニック」でも「傘がない」の歌詞と似た連想をする場面があったのを思い出しました。タイタニック号を設計したアンドリューズ氏が、沈没する船の中で最期を見届けているとき、自分の時計を見て食堂の時計を正確な時間に合わせるのです。沈没する船の中、もう役割を終えるであろう時刻を合わせる身近で小さな行為は「深刻な国の将来を前にして、傘がないことを問題にする個人」に重なりました。
一方でこの場面、船を設計したプライドと船への愛情が満ち溢れています。映画の中でもっとも美しく印象的なシーンだと思います。そして、時刻合わせの行為は、船に海水が流入し止まるであろう時刻(タイタニックの最後)を後世に伝える重要な役目も果たしているのです。
ちなみに会社の「情報システム」の安全を確保する為には、ログの取得が欠かせません。会社内には多数のIT機器が設置されています。機器ごとに時刻がずれていると、ログの正確性を担保出来ません。それを正しく補正するのが、NTP(時刻同期サーバ)です。
「情報システム」も船の設計・製造と同じだと思います。多数のエンジニアが関わり、設計・構築され、運用されます。そして「情報システム」に関わったエンジニアは関与の程度に差こそありますが、そのシステムにわが子のような愛情を持っています。
大海原を長年に渡って航海する「情報システム」もあれば、タイタニック号のような悲運をたどる「情報システム」もあります。しかし、エンジニアはプライドを持って、自分の「情報システム」をより良いものに、そしてより安全なものにすべく改善をしています。
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