叡智の三猿

〜森羅万象を情報セキュリティで捉える

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クラウドサービスの競争から「ゲームの理論」

いまや、クラウドサービスは「百花繚乱」の様相を呈してます。ネットでCRM(顧客管理システム)のクラウドサービスを探そうとすると、40余りのサービスが比較検討可能な状態です。

同じ用途でこれだけサービスがあると、クラウドサービスの事業者は相当なしのぎを削って、自社のプロダクトを競争優位に導こうとしてることが想像つきます。

すこしまえに、CRMシステム を選択する際、何がキーポイントになるかのアンケートを複数の法人に行ったことがあります。

そこで得た回答は、第一に「情報セキュリティ」で、第二に「操作性」でした。情報セキュリティについては、6割を超える法人が「非常に重視している」と、みているようです。

ひとくちに「情報セキュリティ」や「操作性」といっても、多数の仕組みがありますが、CRMのクラウドサービスを利用する際に、あえて3つ重視することをあげるなら、以下がポイントになると考えます。

情報セキュリティ

  1. サービスへのログイン認証の際に本人の正当性が確認できるようにすること。多要素認証、SAML認証など。
  2. 顧客データがCRYPTREC暗号リストに基づく暗号化がされており、取り決めされた手段を介してのみデータ参照が可能なこと。
  3. データが冗長化された状態で管理され、データセンターレベルの災害が発生しても、サービスを継続できること。

操作性

  1. 顧客情報の登録にあたって、郵便番号から住所を提案するなどの登録サポート機能が用意されていること。
  2. 類似している顧客情報(たとえば、株式会社三猿と、(株)三猿は、同じ会社)は、名寄せする機能があること。
  3. 顧客の購買実績(購入金額や利用頻度など)や、商談履歴などから、顧客のカテゴリー分けを提案する機能があること。

今回の記事では「ゲームの理論」で使われる「利得表」を使って、クラウドサービスのお客様獲得競争を考えてみようと思います。

「ゲームの理論」は、応用数学の分野として捉えたり、経済学として捉えられてますが、そうした大学での学問の枠を超えてます。実際のビジネス現場でもロジカルシンキングとして転用が可能な理論です。

今回、CRMサービスを提供するライバル会社が2社(A社、B社)あったとします。

A社の立場にたつと、B社に勝つために、お客様(クラウドサービスの利用顧客)の獲得競争に勝つ必要があります。

クラウドサービスが競争に勝つための条件は、プロダクトであるサービスの機能を充実させることです。「セキュリティの強化」や「操作性の向上」が、顧客獲得の機能に有効であるなら、それを実施しない判断はありません。

ここでは、既存のサービスに「セキュリティの強化」を行うことで、「セキュリティの強化」を希望する60社の顧客を獲得するとします。また、「操作性の向上」を行うことで、「操作性の向上」を求める40社の顧客を獲得するとします。

このとき、A社とB社が同時(じゃんけんのように)に、機能強化版をリリースした際に、想定される「利得表」は下記です。

  B社
セキュリティ強化 操作性の向上
A社 セキュリティ強化 (30,30) (60,40)
操作性の向上 (40,60) (20,20)

「利得表」の読み方について書きます。

括弧内の数字は、A社とB社が新たに獲得するであろう、顧客数を書いてます。(A社の獲得顧客数,B社の顧客獲得数)と理解ください。

A社とB社がともに「セキュリティ強化」を行った場合、全体としては60社の顧客を獲得するものの、A社とB社で顧客を奪い合うので、折半して30社づつの痛み分けとなります。

A社が「セキュリティ強化」を行い、B社が「操作性の向上」を行うと、A社は「セキュリティ強化」を希望する顧客の60社を総取りし、B社は「操作性の向上」を求める顧客の40社を総取りします。

A社が「操作性の向上」を行い、B社が「セキュリティ強化」を行うと、A社は「操作性の向上」を希望する顧客の40社を総取りし、B社は「セキュリティ強化」を求める顧客の60社を総取りします。

最後にA社とB社がともに「操作性の向上」を行った場合、全体としては40社の顧客を獲得するものの、A社とB社で顧客を奪い合うので、折半して20社づつの痛み分けとなります。

A社の視点からみたとき「利得表」から分かることがあります。

ひとつは、A社が顧客を最大限獲得するためにいちばん効果があると思われた「セキュリティ強化」を行っても、結果的にそれが想定通りの顧客獲得に結び付くかはB社の動き次第ということです。

下記表の赤字のようにもし、B社がA社と同じく「セキュリティ強化」を行ったら、結果的にA社とB社は顧客の奪い合いになります。B社が「セキュリティ強化」をリリースすることが予知できているなら、A社は「セキュリティ強化」よりも「操作性の向上」を強化した方が、多くの顧客を獲得していたことが分かります。

  B社
セキュリティ強化 操作性の向上
A社 セキュリティ強化 30,30) (60,40)
操作性の向上 40,60) (20,20)

すなわち、顧客獲得競争に勝つためのクラウドサービスを提供するには、敵の動き(A社から見た場合はB社)をできるだけ正確に先読みすることが必要です。これは、じゃんけんと同じです。相手がグーを出すのであれば、パーを出すのが得策ということです。

(つづく)