叡智の三猿

〜森羅万象を「情報セキュリティ」で語る

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消えたサービス、残った縁 ―「ゆびとま」と還暦の再会

皆が還暦となった中学時代の同級生との会合のきっかけは、ずっと以前に遡ります。2000年代のはじめ「ゆびとま(この指とまれ!)」という同窓会支援サイトに、わたしが登録したことです。卒業名簿を頼りに、同級生同士がネット上で再会できる、当時としては画期的なサービスでした。

ただ、このサイトには苦い記憶もあります。2009年5月、運営会社の交代が繰り返される中、サイトは突然運営停止となりました。「甚大なトラブルが発生した」との告知が出されたのです。約350万人分の個人情報が、宙に浮いたまま残されました。運営の行方が分からなくなり、利用者の間に不安が広がりました。後継の運営組織は、情報流出を否定しています。それでも「情報はどう扱われているのか」という不信感は、登録していた世代の記憶に残っています。

ゆびとまの経験は、クラウド化が進んだ今だからこそより考えさせられます。クラウドサービスが突然停止した際、個人情報をどう守るか?ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の観点から、事業者に求められる対策があります。

観点 具体的な対策
技術的対策 データの暗号化
技術的対策 アクセス制限
技術的対策 バックアップの多重化
技術的対策 障害・停止時の自動データ保護機能
組織的対策 情報の廃棄・移管ルールの事前策定
組織的対策 運営会社変更時の引き継ぎ手順の明文化
人的対策 利用者への事前説明と同意取得
人的対策 従業員・委託先への情報管理教育
管理的対策 第三者機関による定期的な監査
管理的対策 インシデント発生時の報告・公表体制の整備

事業者だけでなく、利用者自身の心がけも大切です。「使わなくなったサービスの退会」を意識することも、今の時代には必要な自衛策です。ゆびとまの一件は、便利さの裏にあるリスクを、静かに教えてくれる出来事だったのかもしれません。

それでも、ゆびとまに登録しなければ、この夜の再会はありませんでした。立川ワシントンホテル併設のビアレストラン「Café de Paris」。この夜のために、コースメニューが用意されていました。フランス語の店名らしく、和と洋が心地よく交差する趣向でした。次々と料理が運ばれてきます。

最初の一皿は、鴨胸肉のコンフィ、サクサク醤油添えです。淡いピンク色の断面に、緑のソースが一筋流れています。隣には仔羊肩ロース肉のコンフィ、ジェノベーゼソース添えが並びます。香ばしいナッツとガーリックチップが食欲をそそります。

続いて、タコのセビーチェが登場しました。紫の大皿に、木の器がちょこんと乗っています。大根のせん切りと葉野菜が涼やかに盛られていました。オイルサーディンが皿の縁を飾っています。見た目にも涼しさを感じさせる一品でした。タコは価格が上昇しているので、これは結構嬉しかったです。

そして、ソーセージ盛り合わせとフライドポテトです。みんなでシェアする楽しさを体現した一皿でした。粒マスタードとケチャップが寄り添います。ギネスの黒々とした一杯が、乾杯に深みを添えていました。

コースの締めくくりは、サーロインステーキです。照り焼きソースがたっぷりとかけられていました。けれど、体はすでに十分満たされていました。「もう入らないかも」という声がちらほら聞こえ始めます。それでも、この肉を残すのはあまりにも忍びありません。「もったいないから」と誰かが声を上げました。結局、みんなで完食しました。

私たちはバブル世代といわれます。幼少期は、高度経済成長期の真っただ中でした。親世代は、戦後の食糧難を経験していました。「残さず食べる」という空気が、家庭に色濃く残っていました。

そこから時代は、バブルへと移り変わります。日本は空前の好景気に沸きました。「飽食の時代」という言葉も、この頃生まれています。豊かさを謳歌しながらも、幼少期の感覚は消えませんでした。倹約の教えと、飽食の実感。矛盾する二つの時代を、私たちは通り抜けてきました。

今の若い世代は、わたしの世代とは違う出発点を持っています。SDGsや食品ロス問題への関心から、最初から残さない工夫を、自然としています。私たちが「食べてから」感じる「もったいない」とは、少し違う感覚だと感じます。

この夜の完食は、お腹の限界へのチャレンジより、旧友と過ごす時間を味わいたい気持ちが勝ったと思います。ゆびとまという、揺らいだ繋がりから始まった縁です。卒業してから四十五年を経てもなお、こうして食卓を囲む力になっています。