叡智の三猿

〜森羅万象を「情報セキュリティ」で語る

当サイトは、アフィリエイト広告を使用しています。

真夜中のアップルチャンクケーキ

時計の針が日付をまたいだ頃、キッチンに立ちました。

息子は自室で勉強中、妻はリビングで韓国ドラマに夢中です。一人でりんごをザクザクと、角切りにする時間が、なんか好きです。

生地は薄力粉とサラダオイルでまとめます。シナモンをひとふり、バニラエッセンスを数滴。ベーキングパウダーで空気を含ませ、最後にミックスナッツをざっくりと混ぜ込みました。オーブンに入れると、しばらくして甘い香りが家じゅうに広がっていきます。シナモンとりんごとバニラが溶け合った、少し贅沢すぎるくらいの匂い。ネットフリックスの「マンスリー彼氏」で、イングクとジスとの会話が聞こえるリビングの向こうから、「いい匂い、するね~」と妻の声がしました。

よく朝、家族でパウンドケーキの箱から切り取ります。「これは当たりだよ~」と、妻と息子から高評価を頂きました。

その後、実家へ向かう手提げ袋に、しのばせました。

テーブルには、両親がかつてイギリスで買ってきたという花柄のティーカップ。旅の記憶を宿したそのカップに、母がコーヒーを注いでくれました。深い青の器にケーキをのせて、湯気の立つカップと並べると、それだけで絵になります。

父は健康上の理由から、ほんのひとくちだけ口に運びました。耳が遠く、言葉は殆どしゃべれないのですが、表情は雄弁でした。目が細くなって、口元がほころんでいる気がしました。

母は、高齢者には珍しくインターネットをさらりと使いこなします。先日も、ひとりでひたち海浜公園まで足を運び、LINEで一面のネモフィラの写真を送ってきました。澄んだ空と丘を覆う青い花々が画面いっぱいに広がって、思わず見とれてしまいました。離れて暮らしていても、母の「今日」が届きます。元気な様子が伝わってくるのが、嬉しいと思います。

ただ、世の中は高齢者を狙った詐欺が横行してるのも事実です。その被害にあうことなく、安全でいてくれることも願っています。いちばん気になるのが「フィッシング詐欺」です。フィッシング詐欺は、銀行や宅配業者、公的機関などを装った偽のメールやメッセージを送りつけ、本物そっくりの偽サイトに誘導して、IDやパスワード、クレジットカード番号といった個人情報を盗み取る手口の総称です。

IPAが毎年発表する「情報セキュリティ10大脅威」では、個人向けの脅威としてフィッシング詐欺が継続して選出され続けています。かつての手口は、日本語の不自然さや怪しいURLなど、少し注意すれば見破れるものも多くありました。ところが今は様相が違います。生成AIの技術が悪用され、メール文面の不自然な表現が自動修正できるようになり、フィッシングサイトのデザインも正規サイトと見分けがつかないほど精巧になっています。

フィッシング詐欺は、使う手段によっていくつかの種類に分けられます。

種類 手段 概要
フィッシングメール メール 偽メールで偽サイトに誘導
スミッシング SMS 偽SMSで偽サイトに誘導
ビッシング 電話・音声 電話で口頭から情報を聞き出す
ソーシャルメディアフィッシング SNS SNSのDMや投稿で誘導

なかでも近年急増しているのが、SMSを入口にするスミッシングです。たとえば、こんなシナリオが実際に起きています。

📱「お荷物を再配達します。こちらからご確認ください」

スマートフォンに届いたSMS。宅配業者のロゴまで入った本物そっくりのページに飛ばされ、住所とクレジットカード番号を入力してしまう。さらにその後、「カード会社」を名乗る電話がかかってきて、「先ほどの入力情報に誤りがあります」と音声で誘導し、暗証番号まで聞き出そうとする——。

これはスミッシングとビッシングを組み合わせた複合攻撃の典型例です。税務署や市役所を装い、還付金の受け取りを理由に不正なリンクをクリックさせる手口も多く、特に高齢者が狙われやすいとされています。

では、どうすれば被害を防げるのでしょうか。まず心がけたいのは、SMSやメールに記載されたURLは安易にタップしないことです。宅配業者や銀行からの連絡に見えても、公式アプリや公式サイトを自分で検索して確認する習慣が身を守ります。次に、個人情報や暗証番号は絶対に入力しないことです。正規の企業がSMSや電話でパスワードや暗証番号を求めることはまずありません。

「急いで」「今すぐ」という言葉には立ち止まることが大切です。焦らせるのが詐欺の常套手段であり、一度深呼吸して家族に相談するだけで防げるケースは少なくありません。万が一、怪しいサイトに情報を入力してしまった場合は、すぐにカード会社や銀行に連絡して利用停止の手続きをとることが重要です。