中東の空に米軍の爆撃機が飛んでます。イランの都市が燃えてます。そんなニュースを眺めながら、「遠い国の話」と思う日本人は少なくないと思います。しかし、おそらくそうはいきません。アメリカによるイランへの軍事攻撃は、地球の裏側の出来事ではなく、私たち日本人の暮らしと安全に直結する大問題だと思います。
日本はエネルギー資源のほとんどを海外に依存しており、その中心が中東です。原油輸入の約90%、液化天然ガス(LNG)の相当量が中東地域から運ばれてきます。特にホルムズ海峡はイランと隣り合わせの航路であり、ここが封鎖・不安定化すれば、日本のガソリンスタンドや工場は打撃を受けます。物価高騰、電力不足、産業への打撃──その影響は家庭生活を壊します。「ガソリンの価格は原油輸送の支障が長期化した場合、1リットルあたり204円になり、さらに、ホルムズ海峡が完全封鎖されるという最悪のケースとなれば、328円にまではね上がることもあり得る」という専門家の見解もあります。リスクマネジメントの観点から言えば、発生確率と影響度がともに高いリスクは最優先で対処しなければなりません。エネルギー供給の途絶は、まさにその類です。

本来、戦争を回避するための抑止力として機能するはずの日米同盟は、中東においては逆にリスクです。日本が米軍の後方支援を行い、在日米軍基地が作戦拠点として使用されると、イランの目には日本はアメリカの「共犯者」として映ります。日本政府がどれほど「中立」を主張しても、通用しません。その結果、イランや周辺国に駐在・滞在するビジネスマン、外交官、研究者、NGO職員といった日本人が報復の標的になります。しかし、日本は独自の外交の声も上げられないまま同盟の論理に引きずられます。日本の安全を守るための同盟が、日本人の生活を苦しめる。アメリカの攻撃によって浮き彫りになりました。
この対立の根は、宗教・文明的な断層です。キリスト教&ユダヤ教とイスラム教の対立という図式が拭えません。たとえ軍事的にイランが制圧されても、信仰を核に持つ民衆の抵抗は消えません。アメリカ寄りの政権がイランに誕生したとしても、ムスリムである国民を統治できるかは別の問題です。だから、この戦いは長期化するはずです。中東が長期にわたって不安定であり続ける現実を、日本は受け止めなければならないでしょう。
今の戦争はAIと融合しています。AI産業は医療や物流など幅広い分野で社会に恩恵をもたらす一方、兵器への転用をめぐっては慎重論と容認論が激しくぶつかり合ってます。国際社会はいまだ合意に至っていません。法的拘束力を持つルールは空白のまま、技術だけが先走ってます。
AIがIoTと結びついた今、脅威はさらに深刻です。従来の情報セキュリティが守るべきとしてきた機密性・完全性・可用性に加え、電力網や医療機器といった物理的インフラがネットワークに接続された現代では、サイバー攻撃は人命に直結します。情報が漏れるだけではありません。そこにある生命の「安全性」そのものが脅かされる──この新たな次元のリスクに対し、日米同盟を結ぶ日本のインフラが標的になる可能性は、決して低いとはいえません。それでも日本は、この分野における政策的・技術的なイニシアチブを持ってません。そもそも日本のAI活用は世界的に見て遅れてます。職場での利用率は主要7カ国で最下位レベルの19〜32%に留まっています。日本企業では、AIを活用できる人材不足、SIer依存のIT体質、前例踏襲の企業文化、データ活用の遅れが重なり、AI導入・活用が進みにくい構造的な課題をもってます。
先日の衆議院選挙により、日本国内では保守勢力が強くなりました。相対的に保守層は難民受け入れに否定的な姿勢を強めていますが、中東の苦境に背を向けることは、イスラム圏における日本のイメージを長期的に傷つけます。外交にも、ビジネスにも、そして日本人の安全にも、その影響は及ぶかもしれません。
中東へのエネルギー依存、同盟がもたらす逆説的リスク、宗教対立の長期化、AIと結びついたIoT社会の脆弱性──日本が直面するこれらの課題は、いずれも簡単に解決できません。国として総力を挙げてリスクマネジメントに取り組むべき局面です。しかし現実の日本社会の感覚は、「戦争で人命が失われるのは問題だ」「アメリカのイラン攻撃には賛否がある」という「高みの見物」をする水準にとどまっています。自国のエネルギーが止まりかねない、在外邦人が危険にさらされかねない、社会インフラがサイバー攻撃に晒されかねない、安全のための同盟が新たな敵を生みかねない──そうした「私たちの生活の存亡に関わる問いかけ」として今回の事態を受け止めているようにはいまのところ見えてません。

それこそが、今、日本が抱えるいちばんの課題な気がします。
- イランがホルムズ海峡を封鎖し、原油・LNGの輸入が途絶します。ガソリン代と電気代が跳ね上がり、食料品を含むあらゆる物価が上昇します。日米同盟の論理に引きずられ後方支援を拡大し、日本は中東全域から敵視されます。サイバー攻撃が電力網や医療インフラを襲い、日常生活そのものが立ち行かなくなります。気づいたときには、普通に働き、普通に暮らすことが、当たり前ではなくなってます。